コラム
2013年01月23日

マンション vs. 一戸建て - 競争が生む新世代の住宅

  松村 徹

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たまに一戸建ての実家に行くと、普段のマンション生活がいかに便利で快適かを実感できる。17年前に建てたプレハブ住宅は、窓が多い上にサッシの断熱性能が低いため、冬は寒く夏は暑く、室温ムラも大きい。24時間換気システムはなく、窓の結露もあって室内には湿気がたまりやすいが、無用心なので留守中や夜間に窓を開けて風を通すことができない。ディスポーザーがないので生ゴミの処理ができないうえ、ごみは収集日の朝にしか外に出せない。宅配ボックスがないため、留守の時にはいちいち再配送を依頼しなければならず、インターネット通販利用にはすこぶる不便だ。庭があっても手入れが大変で、毎日の水遣りが必要な夏場は長期間留守にできない。築5年のマンションと比較するのはフェアではないが、それだけに、マンションが一戸建ての利点を巧みに取り入れつつ、マンションでしか実現できない利便性や魅力を高めてきたことがよくわかる。

しかし、進化を続けるマンションに押され気味だった一戸建てにおいても、最近は意欲的な取組みが増えてきたように思う。たとえば、分譲地で自治会組織を設立してコミュニティの結束力を高め、災害時対応を強化しようという住宅地開発や、分譲地全体の防犯を考えた住宅地開発の計画がある。また、センサーや電子制御システムなどハイテク機器を駆使したスマートハウスではなく、自然の風と光を活用するパッシブデザインは、設計自由度の高い一戸建ての方がより適しているだろう。自宅の一部を賃貸用とし有効利用したり、カフェやギャラリーなど趣味のスペースとして開放したりする場合も、一戸建ての方が有利だ。マンションの利点を一戸建てに取り入れようと、高層階のように安心して通風できる格子付きサッシが商品化され、マンションで培った制震・免震技術を一戸建てに応用する不動産会社も出てきた。マンション用に開発された収納や洗濯作業などの家事を便利にするさまざまなアイテムや工夫は、小規模な一戸建て住宅でも十分にニーズがあるだろう。

これに対して、マンションも負けてはいない。専有部へのサービスメニューは多数開発されているが、一戸建てに比べて収納スペースが限られるマンション入居者に、衣類を預かってクリーニングした上で最大10ヶ月間保管するサービスも登場した。また、小窓やガラスを設けることで、窓の少ないマンションの採光や通風を改善できる玄関も商品化されている。建物完成後でも好みの間取りやインテリアカラーが選択できるマンションも増えそうだ。大口需要者向けの割安な電力を購入できるマンションが増えているが、電気自動車(EV)利用設備の設置も、共用施設として管理できるマンションの方が容易だろう。何よりも、敷地内・室内ともに平面移動で用が足りること、電子錠を使った二重三重のセキュリティシステムや24時間有人管理、災害など緊急時のコミュニティ単位での対応などは一戸建てでは実現が難しく、シニア層の住み替え先にはマンションの方が適している。

マンション、一戸建てを問わず、いまや省エネと環境配慮、防災、防犯は当たり前で、高齢者対応、子育て支援、家族やコミュニティの交流や共助が住宅企画の重要なキーワードになっている。たとえば、二世帯住宅や三世代同居は一戸建ての専売特許といえるが、マンションの商品企画や販売手法を工夫すれば「近居」という形で同様の効果を上げることもできるだろう。また、介護・医療施設に頼らず人生の終末期までなるべく自立しながら安心して過ごせる住宅を開発するとすれば、管理会社など外部専門家の協力を得て住宅を共同管理する仕組みがあり、コミュニティとしての危機管理機能も備えているマンションが先行するだろう。いずれにしても、少子高齢化で住宅需要が頭打ちとなる中、新築マンションと一戸建ての熾烈な販売競争が、それぞれの商品企画を磨き上げているのは確かだ。また、このような動きは、中古住宅のリノベーションや賃貸住宅の品質向上にも寄与すると思われる。新築大量供給の時代が終わりを迎えた今、環境にやさしく快適で安全な生活を支える新世代の住まいの形が見えてきつつある。


 
  住宅の高気密・高断熱化が進み、新建材と呼ばれる化学物質を含有した建材を多く用いたことにより、室内空気が化学物質などに汚染され健康障害を引き起こすことをシックハウス症候群という。この対策を目的に、建築基準法で2003年7月に機械換気設備の設置などが義務化された。

  たとえば、布団を収納できるクローゼット、分別ゴミの収納など多様な用途に活用できるキッチンの収納棚、バルコニーの小物用フックなど、顧客の声を生かしたアイデアがいくつも商品化されている。

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(2013年01月23日「研究員の眼」)

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