2012年11月30日

団塊退職者・居場所なう - 公立図書館人気の理由

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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最近、高齢者の居場所として図書館が注目されている。平日、街の図書館を訪れると、多くの高齢者で賑わっているのだ。その背景には、これまで多くの時間を職業生活に費やしてきた団塊世代が本格的に退職し始め、地域で過ごす時間が大幅に増えていることがある。団塊退職者は元気で知的好奇心もあり、自由に使えるようになった時間を図書館で過ごしているのかもしれない。

総務省「平成24年版地方財政白書」によると、平成22年度末現在の公立図書館は3,190館と10年前に比べて570館(21.8%)増加した。また、2003年の地方自治法の改正により指定管理者制度*が導入され、日本図書館協会の2012年調査では、2005年度から2011年度までに同制度を導入した市区町村立図書館は296館あり、2012年度に導入予定は36館となっている。同制度を導入した公立図書館の運営主体の約7割は民間企業で、民間の視点からサービス向上と運営コスト削減を図り、利用者ニーズにきめ細かく対応している。私が訪ねた東京・多摩地域の市立図書館では、情報通信企業を中心とするコンソーシアムが運営を受託しており、貸出し業務の迅速化、図書検索等の支援、話題新刊書のタイムリーな購入などにより、地域住民の利用満足度も高いようだ。

このような指定管理者制度が導入された公立図書館に団塊退職者が多く集まる理由はなんだろう。第一は、心地よい椅子やソファ、小さなカフェやレストランがあったり、夏や冬も空調が効いて快適に過ごせる施設環境だろう。第二は、高齢者は退職して経済的に負担の少ない余暇の過ごし方を求めているからだ。現役時代に必要とした新聞やビジネス誌、週刊誌などを交通費もかからない地元の図書館で読んでいる人も多いのではないか。第三は、図書館の開館時間も長くなり、都合の良い時間帯に好きなだけ滞在でき、他者から干渉されたり逆に孤独を感じたりすることもなく、そこには安心感と居心地の良さがあるからだろう。また、単に時間をつぶすのではなく、自らの好奇心や探究心を満たしてくれる知的刺激が得られ、それが生きがいにも繋がっているのではないだろうか。

少子高齢社会では地域の公園は子どもの遊び場から高齢者の集う場になり、そこに置かれる遊具はブランコや滑り台から高齢者向け健康遊具へと変わっている。公立図書館も指定管理者制度の導入等により時代状況の変化に対応し、今、大きくそのあり方を変えようとしている。図書の電子化が進みバーチャル図書館が構想される一方、地域にある身近な市区町村立の公立図書館は、これから実在する場所(空間)として『団塊退職者の居場所』という新たな市民権を獲得していくのかもしれない。


 
* 自治体が市民サービスの向上と施設運営の効率化を目的に「公の施設」を民間事業者・団体等を指定して管理・運営させる制度

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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