コラム
2012年09月03日

親子の世代交代-子どもにツケを残さない!

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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8月の快晴の日曜日、久しぶりに山登りをした。日本百名山のひとつ、奥日光の標高2,486メートルの男体山だ。噴火で堰止められてできた中禅寺湖から頂上まで急峻な斜面が続く。普段、マラソンで足を鍛えている私は、体力的には自信があったものの、6合目あたりから続く岩場に思った以上に苦戦した。登頂・下山の合わせて7時間の行程を終えた後、太ももにかなりの筋肉痛を感じた。

最近は山ガールブームで、山でも多くの女性を見かける。また中高年をはじめ、様々な年代の人が夫々のペースで登っていく。登山道ですれ違う人たちと交わす『こんにちは』という短い挨拶は、何よりも心を和ませてくれる。それにしても、山は気持ちいい。頂上から見る抜けるような青空、吹き渡るさわやかな風、途中の林間にこだまする鳥の声、そして山頂で食べるカップ麺の旨いこと・・・。

振り返ってみると、本格的な山登りは十数年ぶりである。前回は当時中学生だった息子を連れて富士山に登った。その時は、子どもの体力や体調に気を配りながら、休憩や水分補給、足場の取り方など注意しながら登ったものだ。しかし、今回は社会人になった息子から『休憩とろうか』、『滑るから気をつけて』などと声を掛けられ、まるで以前の富士登山の時とは立場が逆転しているではないか。

確かに初期の親子関係は、親が子どもを養護し、生活全般にわたり世話をするものだ。しかし、子どもの成長とともにいつしかその関係が逆転する。この親子の関係性の変化は日常的には微々たるものだが、子どもが独り立ちし、やがてそれが大きく変わっていることに驚かされる。

前回の富士登山では食糧などをたくさん背負っていたのは親である私だが、今回は息子が私の分まで食糧を背負ってくれた。自分が働き盛りで、子どもを養護しているとばかり思っていたが、気が付いてみると自分が養護される立場になっているのだ。それは社会的位置づけも同様だ。自分の世代が社会を支えていると思っていたところ、実は徐々に支えられる側に近づいているのである。

このように社会的に扶養していた世代がやがて扶養される世代となり、相互扶助の世代交代が持続可能な社会を創っていく。われわれ親世代はそろそろ扶養される側に近づいたとはいえ、手分けして自ら背負える荷物は自ら背負い、子ども世代の負担を少しでも軽くしなければならない。なぜなら、一人で背負える荷物には限りがあるにもかかわらず、今後、人口減少時代を迎える日本では背負い手は減る一方だからだ。われわれ親世代は社会の持続可能性を損なわないためにも、後に続く子ども世代に背負いきれないほどの荷物をツケとして残すようなことを、ゆめゆめ、してはならないのである。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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