コラム
2012年07月09日

若者の未来について、覚悟と努力を持って思いを馳せよう!

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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消費税増税法案を主軸とした、税と社会保障の一体改革に伴う諸法案も衆議院で可決され、このところ世の中の関心時は、またぞろ高齢者をめぐる課題へと大きくシフトしています。
   私も、先日のコラムでは、冷遇されている若い世代への対応が急務かつ重大事であると述べさせて頂いたのですが、同じように最近は関心が若い世代から離れがちです。

何故、私たちは若者のことよりも高齢者の課題に思いを馳せてしまうのでしょうか。それは、人間は誰でも年をとり高齢者となるが、逆に若者に戻る人は誰もいないという現実に起因するものと思います。
   社会保障の充実を人々が望むのは、困っている人々や弱者を救済しようという気高い動機に基づくものですが、「将来は何があるかわからない。明日は我が身だ。」という意識による面もあると思います。まさに、『情けは人の為ならず』です。
   相手の立場に立って考えることは難しいことですが、自分も相手の立場に立つ可能性が想定できるケースでは、まだ比較的容易に考えうるでしょう。しかし、自分が絶対にその立場にならない人々に対して思いを馳せることは、現実にはかなり困難なことだと思います。これが、若者をめぐる課題に対して、周囲の年長者の関心が深まらない第一の要因だと思います。

さらに、若者の受難を大きくしているのは、社会の高齢化の進行とともに、実生活で若者と触れ合うことのない人々が、どんどん増加しているという状況です。内閣府の「高齢者の地域社会への参画に関する意識調査(平成20年度実施、5年毎調査、第5回目)」によれば、「ふだんの生活で家族以外に若い世代との交流がある」と回答した高齢者(この調査では、60歳以上の人)は54.9%でした。そして、交流があると回答した高齢者に対して、「どのような世代と交流を行っているか」について尋ねたところ、青年の世代と交流があると答えた人は52.7%でした(図表1)。ですから、青年の世代と交流がある高齢者は、高齢者全体の約3割に過ぎない(54.9%×52.7%=28.9%)という実態です。

家族以外に若い世代と交流がある高齢者の交流相手

次に、図表1の内容について、高齢者を年齢階層別に区分して調べますと、加齢とともに青年の世代と交流がある人の割合は減少していて、60~64歳では3分の2の人々が青年の世代と交流を実践していましたが、80歳以上では、3分の1の人々しか交流がありません(図表2)。今後の日本では、より高齢な人々が増加していくので、高齢者全体の青年の世代との交流については、現在でも少ない割合がさらに減少していくものと予測されます。
   この、若者の立場に立てないどころか、若者との交流すらない人々が増えて行くことが、若者への関心の深まりを阻害する第二の要因だと思います。

高齢者の年齢階層別にみた、家族以外の青年・壮年世代との交流の割合

(ただ、不思議なことに、壮年の世代との交流については、逆に高齢になるほど増加していき、最高齢の80歳以上で交流する人の割合が最も多くなっています。つまり、高齢になるほど、気力や体力の衰えにより、交流自体が減少するのではなく、高齢になっても、自分が交流したいと思う世代とは、交流が行われているとも捉えられます。80歳以上層と壮年の世代との年齢差はおよそ30歳位、60~64歳層と青年の世代との年齢差もおよそ30歳位。まったくの仮説ですが、人間は自分の子どもと同じくらいの年代の人間との交流を好むのでしょうか?)

自分がその立場に立つことがない人々について理解することが困難だとしても、その相手と交流があれば、日々の接触を通じて相手を知ることにより、相手の立場への理解も深まるでしょう。おそらく、若者と交流のある3割の高齢者の人々は、彼らの良き理解者なのだと思います。
   しかし、だからといって、誰もが無理やり交流に励むことも非現実的でしょう。実際、年長者が若者に無理にすりよってみても、それはお互いに気詰まりなだけであり、長続きはしないでしょうから。
   我々年長者がなすべきことは、同世代のことや、自分たちの将来のことへの関心と同じ重さで、この、ともすれば忘れ去られてしまう若者たちへ、思いを馳せて行くことであると思います。それは、覚悟も努力も要する困難な作業ではありますが、決して避けてはいけない責務ではないでしょうか。

 
 

 
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保険研究部   常務取締役 部長

中村 昭 (なかむら あきら)

研究・専門分野

(2012年07月09日「研究員の眼」)

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