コラム
2012年06月04日

大学の秋入学導入について~人材のグローバル化に向けて

  押久保 直也

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今春、東京大学が今後5年をめどに大学の秋入学を導入することを本格的に検討し始めた。

さらに、東大が協議を呼びかけていた旧帝大中心の9国立大と早稲田、慶応の2私大との計12大学間で、秋入学に向けた学長レベルの「教育改革推進懇話会」を設置することも決定し、1、2年をめどに議論することとなった。

近年、世界大学ランキングで順位を落とし、国際競争力に危機感を募らせている日本の大学が、国際標準である秋入学を導入し、大学の教育システムのグローバル化を推し進めて世界各国から優秀な人材を確保していこうとする姿勢を鮮明に示したことは、日本の大学教育にとって大きな変革となりうるであろう。

では、日本の大学に秋入学を本格的に導入することで、主にどのようなメリット・デメリットが想定されうるであろうか。

メリットとしてはまず、世界各国から優秀な人材を勧誘することが以前より容易になる点が挙げられる。国際標準である秋入学への全面移行を契機に、英語で行われる魅力的なプログラムを増やしたり、海外の大学や教育機関との交換留学制度を充実させるなどパートナーシップを深めることで、世界各国から優秀な人材を勧誘する道は広がるであろう。世界はグローバル化が進展し、欧米もアジア新興国も優秀な人材を集めることに必死になっており、今後さらに優秀な学生の獲得競争が世界の大学間で繰り広げられるであろうことを踏まえると、国際標準である秋入学を導入することは世界から置き去りにされないための必要条件ともいえる。

次に、日本人学生にとって海外留学や海外で就業する際に、秋入学制だと手続きが容易になり、海外でより活躍しやすくなる点が挙げられる。日本にとっては、「人材のグローバル化」を推し進める大きな契機になりうるであろう。

逆にデメリットとして、日本の高等学校を卒業してから大学に入学するまでの期間および大学を卒業してから就職するまでの期間として、半年間のブランクが生じてしまう点が挙げられる。この点については、この半年間のブランク期間を企業でのインターンシップにあてたり、ボランティアを行ったりするなど有効に使う方法が模索されているが、根本的な解決策とはならず、そもそも半年のブランクが生じないよう高等学校や企業側が大学の秋入学へ全面的に合わせるなど多面的に検討する必要性がある。

このように大学の秋入学導入にはメリット・デメリットがあり、また賛否両論もある。現在、日本はデフレの長期化、円高による製造業の競争力低下、少子高齢化等厳しい状況に直面しており、今後持続的な経済成長の実現を考えると、人材面でより一層グローバル化を推し進めていかねばならない局面に立たされていると思う。近年、日本人の米国への留学生数が大きく減少しており、内向きの志向を持つ若者が増加している。一方、輸出の競合相手である韓国は、米国への留学生数が大きく増加しており、米国社会において着実にプレゼンスを高めている。その結果、人材面における韓国のグローバル化が進み、昨今の韓国メーカーの世界的な躍進へとつながっている。日本も大学教育において、秋入学を契機に海外の大学や教育機関とのパートナーシップを強化し、積極的に人材交流を進めていくなど人材面でのグローバル化をより推し進めていくことが、世界と日本をつなぐ多くの人材を輩出し、将来的に「日本再生」へとつながるのではなかろうか。

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日本経済、財政

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