コラム
2012年05月07日

金環日食は吉兆か?-日本で皆既日食が観察できた年の社会・経済はどうだった?

  新美 隆宏

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5月21日に関東から九州にかけての太平洋側の広い地域で金環日食が観察できる。東京で皆既日食が観察できるのは1839年(天保10年)以来の173年振りとのこと。天保10年は江戸時代後期で、将軍は第12代徳川家慶、天保の大飢饉をきっかけとする大塩平八郎の乱の2年後である。私が住む神奈川県では、子ども達が安全に観察できるように登校時間をずらしたり、観察会を企画している学校があるようだ。いくら天文に疎い私でも、これが非常に貴重な機会であることは分かる。何とか観察できないものかとワクワクしている。

天文学が確立して日食の原理が解明されるまでは、世界各地で日食に関する様々な神話が語り継がれてきた。幾つか代表的なものを紹介したい。
   わが国の天照大御神の天の岩戸にまつわる神話は、日食を表していると考えられているそうだ。諸外国について調べると、中国では日食は天からの警告とみなしており、天狗(天にいる狗(いぬ))が、これの番人が居眠りをしている間に、太陽を食べてしまうためと考えられていたそうだ。東南アジアでは、龍が太陽を飲み込むことで日食が起きると考え、爆竹で龍を驚かせて、太陽を吐き出させようとしたようだ。他にも、蛙が太陽を飲み込むと考えていたり、闇の世界の神であるジャガーが太陽を飲んでしまうなど、世界各地で様々な神話が語られていた。
   いずれにしても、日食は吉兆とは考えられていなかったようである。

金融の分野でも、太陽と景気の関係を唱えた説がある。これは、穀物相場と太陽の黒点に関係があるというもので、太陽の黒点の面積の増減が地球の気温に影響して、ひいては穀物の生育にまで影響するという説である。太陽の黒点の面積の変化と違って日食は短時間で終わるため、気象への影響は恐らくは曇りと同程度であり何らかの説を唱える余地は無いものの、日食は古代人が吉兆とは考えていなかった稀な自然現象である。今回の金環日食を機会に、日本国内で皆既日食が観察された年度に、経済・金融、社会でどのような動きがあったかを調べてみた。

日本で観察ができた皆既日食は、終戦後では5回観測されている。

○ 1948年5月9日(金環日食、北海道礼文島で観測)
   前年(1947年)5月に日本国憲法が施行、翌年(1949年)4月に東京証券取引所、名古屋証券取引所、大阪証券取引所が設立(5月より取引開始)、1ドル=360円の単一為替相場が実施されるなど、終戦からの社会インフラ、経済インフラなどの本格復興が始まった時期にあたる。

○ 1963年7月21日(皆既日食、北海道北東部から知床半島で観測)
   国内はオリンピック景気に沸いており、当年(1963年)7月に名神高速道路が開通、翌年(1964年)10月に東海道新幹線が開通し、また東京オリンピックが開催された。海外では前年(1962年)10月にキューバ危機が勃発し米ソの冷戦が続いていた。
   1963年度の日経平均株価は▲24%下落(1963/3末:1,614円→1964/3末:1,222円)し、為替は1ドル=360円の固定相場制が続いていた。

○ 1987年9月23日(金環日食、沖縄本島で観測)
○ 1988年3月18日(皆既日食、硫黄島東方沖海上で観測)
   国内はバブル景気の真只中で、1987年2月に公定歩合が2.5%(当時の戦後最低)に下がり、地価が高騰して銀座等で1坪1億円を突破、4月には国鉄が分割・民営化されJR各社が発足した。海外では1987年10月のニューヨーク株式市場の大暴落(ブラックマンデー)が起きた。 1987年度の日経平均株価は+22%上昇(1987/3末:21,566円→1988/3末:26,260円)し、1973年に変動相場制に移行した為替相場(対米ドル)は21円の円高(1987/3末:145円/ドル→1988/3末:124円/ドル)となった。

○ 2009年7月22日(皆既日食、奄美列島で観測)
   国内では、前年(2008年)9月にリーマン・ブラザースが破綻して日本を含めて世界的に株価が大幅下落(リーマン・ショック)し、当年(2009年)8月の衆院選挙で民主党が圧勝して政権交代した。海外では当年(2009年)1月に米大統領にオバマ氏が就任、6月にGMが経営破綻した。 2009年度の日経平均株価は+37%上昇(2009/3末:8,109円→2010/3末:11,089円)し、為替相場(対米ドル)は5円の円高(2009/3末:98円/ドル→2010/3末:93円/ドル)となった。

占星術のように太陽や月、星の動きから経済や金融の将来を予想する気は無いが、過去の皆既日食の年は景気拡大期や戦争・金融危機からの回復期に当たっており、皆既日食はむしろ吉兆ではないだろうか。昨年度を振り返ると、国内では東日本大震災が発生し、海外では欧州経済危機が深刻化したが、今年度はこのような逆境から転じて、大いに好転する年になることを願う。

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