コラム
2012年03月12日

若者に一人5票の選挙権を与えよう!

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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おかげさまで、我が家は三世代ともに、それぞれ元気で暮らしています。しかし、現行社会保障制度の厳しい将来見通しと若年世代を待ち受ける苛酷な未来を論じて、このままでは世代間闘争が勃発しかねないと危惧する意見もあります。私は、90歳を超える高齢者世代の親と、若年世代である20歳代の子どもに挟まれて、両世代の言い分や状況を実感できる立場にあるのですが、この闘争は、条件が不均衡であり、どうみても若者たちの分が悪い状況にあると思います。

我が親を含めて、高齢者世代は、『年金が少ない。社会保障も不十分だ。我々は冷遇されている。』と主張されます。果たして、その主張は正しいのでしょうか。
   ここに、興味深いデータがあります。社会保障の絶対水準については、負担とリターンの関係があるので、一概に高低は論じられませんが、社会保障費を誰に分配しているのかについては比較可能です。OECD基準による社会支出の国際比較統計により、2005年時点における先進6ヶ国(日・米・英・独・仏・スウェーデン)の政策分野別支出割合を見ることができます。高齢・遺族分野への支出割合は、日本の53.6%に対して、他の5ヶ国平均は37.7%であり、日本の高齢者は他の国々の4割増の配分を享受しているのです。逆に、家族分野への支出割合は、日本の4.2%に対して、他の5ヶ国平均は9.5%であり、日本の子育て世帯は他の国々の半分以下の配分しか受け取っていないのです。本当は、日本で冷遇されているのは若者で、高齢者は逆に優遇されていると捉えるべきではないでしょうか。

この日本の社会支出バランスの特異性は、若者の声が政策決定に反映されなかったことの証左といえるでしょう。そして、反映されなかった大きな原因として、若者の発言力=選挙権の重みが、一貫して減少し続けてきた歴史状況が挙げられると思います。

20歳以上の成人が選挙権を有するという、現行の選挙制度がスタートした頃である1950年時点では、有権者の年齢別構成状況を見ると、20歳代は30.8%であり、30歳代22.7%を加えれば、若年世代で過半数を占めており、民意を大きく若者が左右したのであろうと推察されます。一方、当時の65歳以上の高齢者のウエイトは9.1%に過ぎませんでした。
   しかし、著しい少子高齢化の進展により、2010年現在では、20歳代13.0%、30歳代17.2%と若年世代のウエイトは大きく減少し、逆に65歳以上の高齢者は27.8%と、制度スタート時点に比して3倍以上のウエイト増加を示しています。
   さらに、今の子ども達が成人を迎える2030年には、20歳代11.1%、30歳代12.3%、65歳以上37.0%という構成状況となり、若年世代の発言力は高齢者の半分程度まで減少してしまいます。(社人研:中位推計)

少数勢力となった若者の発言力を強めるために、1票の価値を2倍程度に引き上げる思い切った手段が考えられます。また、政治は今後の日本のありかたを決めていくのですから、今後の日本に長く住む若者(平均余命が高齢者に比して3~4倍長い)は、政治の影響を高齢者よりずっと長い間受け続けるわけですから、政治に対する発言力を、さらに大きくしても良いと考えられます。
   総論では、誰でも『日本の将来は若者の双肩にかかっている』と一致しているのですから、思い切って、若者に一人5票の選挙権を与えてはどうでしょうか。この世代間発言力の不均衡是正措置により、若者の政治離れも一気に解消して、老いも若きも日本の将来を真剣に論じ合える風土が実現するのではないでしょうか。

役割を認められ、権限を付与された若者の活躍は、歴史が実証しています。24歳、24歳、29歳、26歳、28歳、29歳という若い顔ぶれは、誰だと思われますか。
   大阪夏の陣以来、250年ぶりの内戦となった蛤御門の変。その中心人物であった、久坂玄瑞、高杉晋作、有栖川宮熾仁親王、一橋慶喜、松平容保、近藤勇その人達の当時の年齢です。

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保険研究部   常務取締役 部長

中村 昭 (なかむら あきら)

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