コラム
2012年02月27日

AIJ投資顧問 脅威の運用成績と成功報酬

金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   井出 真吾

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AIJ投資顧問が企業年金から運用を委託されていた約2,000億円の大部分が消失していた。同社が運用するエイム・ミレニアム・ファンドの投資戦略は、「日経225オプションの売り戦略を中心に毎月収益を確保します」と説明されている。オプションの詳しい説明はここでは控えるが、売り戦略による損益を簡単に図示すると以下のようになる。

日経225オプションには、プット(図表A)とコール(図表B)の2種類があり、いずれも日経平均の変動が小さい場合は、オプションの売り手はプレミアムと呼ばれる利益を得ることができる。ところが、プット売りの場合は日経平均株価が大きく下落した場合に、コール売りの場合は日経平均株価が大きく上昇した場合に損失を被る。


プット・オプションの売り/コール・オプションの売り


同ファンドの説明資料に記載されている“運用実績”と日経平均株価の推移を図示したものが図表Cである。真っ先に目に止まるのは、ファンドが極めて安定的に収益を稼ぎ出した様子だ。しかし、よく見ると2005年や2007年、2008年には日経平均株価が大きく変動した時期があったにもかかわらず、同じ時期にファンドは損失を殆ど出すことなく、驚異的とも言えるパフォーマンスを継続している。なお、ファンドの運用実績は「諸経費控除後の純手取り利回り」とされているので、控除前の運用成績は更に高かったことを意味する。


ファンドと日経平均株価の推移


一方、同ファンドの手数料は、(1)購入手数料=3.15%(購入時/消費税込み)、(2)管理手数料=純資産価格の1.5%(年率)、(3)投資一任契約に係る顧問料=21,000円(年額/消費税込み)、(4)成功報酬=超過額の20%相当額とある。ここで注目したいのが(4)の成功報酬だ。ヘッジファンドではよく利用される方法で、「運用に成功したら、その一部分を報酬として頂きます」という主旨である。これ自体は顧客と運用会社の利害が一致する(顧客が儲かれば運用会社も儲かる)ので問題はないであろう。

しかし、この仕組みを悪用すれば、運用に失敗しても運用会社は成功報酬という名目で手数料を得ることができてしまう。邪推かもしれないが、同ファンドの成功報酬は「四半期末の基準価格が過去最高値を上回った場合のみ発生」という取り決めのため、運用会社には運用が成功し続けているように見せかけるインセンティブが働いた可能性も考えられる。いずれ同社が顧客に虚偽の報告をした動機についても当局の調査で明らかになるだろう。

ところで、今回の件を受けて金融庁は他の投資顧問会社を緊急調査すると発表した。緊急調査は業界全体の信頼を確保するために必要な措置だが、被害を受けた企業年金やその関係者はもちろん、痛くもない腹を探られる羽目になる真面目な投資顧問会社もある意味でAIJ投資顧問の被害者だと言えよう。

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金融研究部   チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資

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