2010年06月03日

法人企業統計10年1-3月期~企業収益急増も設備投資の回復遅れる

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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■見出し

・11四半期ぶりの増収増益
・設備投資の回復遅れる
・1-3月期・GDP2次速報は下方修正を予測

■introduction

財務省が6月3日に公表した法人企業統計によると、10年 1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比163.8%(09年10-12月期:同102.2%)と2四半期連続の増加となった。
原油価格の上昇に伴い変動費(10-12月期:前年比▲5.3%→1-3月期:同10.2%)は6四半期ぶりに増加に転じ、人件費などの固定費(10-12月期:前年比▲1.9%→1-3月期:同▲0.1%)も減少幅が大きく縮小したが、輸出の回復を主因として売上高(10-12月期:前年比▲3.1%→1-3月期:同10.6%)が急回復したため、経常利益は前期に続き非常に高い伸びとなった。売上高が前年比で増加したのは07年10-12月期以来9四半期ぶり、増収増益は07年4-6月期以来11四半期ぶりとなる。製造業が黒字転化(10-12月期:同864.7%)、非製造業が前年比5.2%(10-12月期:同38.1%)であった。
経常利益が前年比で非常に高い伸びとなったのは、リーマン・ショック後の急速な落ち込みから前年の水準が極めて低かったこともあるが、季節調整済値で見ても09年4-6月期から4四半期続けて前期比二桁の高い伸びとなっている(10年1-3月期は前期比10.9%)。経常利益(季節調整値)の水準は09年1-3月期には直近のピーク時(07年1-3月期の16.0兆円)の3割弱(28.6%)まで落ち込んだが、10年1-3月期(11.8兆円)には7割強(73.8%)まで回復した。ただし、製造業が順調な回復を続ける(10年1-3月期:前期比56.3%)一方、非製造業は原材料価格上昇に伴うコスト増の影響などから、前期比▲11.8%と5四半期ぶりに減少した。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.3%となり、前年に比べ1.9ポイント改善した(10-12月期は1.6ポイントの改善)。製造業は前年差7.1ポイント(10-12月期は同3.4ポイント)と改善幅が大きく拡大したのに対し、非製造業は前年差▲0.1ポイント(10-12月期は同0.8ポイント)と3四半期ぶりに悪化した。
製造業は売上高(前年比19.1%)の伸びが非常に高かったため、変動費増加(前年比13.6%)の影響を吸収することができたが、非製造業は売上高(前年比7.5%)の伸びが変動費(前年比9.0%)の伸びを下回ったため、売上高変動比率が大きく悪化した。
これまでは、売上面、コスト面ともに企業収益の押し上げ要因となってきたが、コスト削減効果はすでに一巡しており、今後は売上の増加がなければ増益を確保できない状況が続くことになる。
輸出は海外経済の回復を背景に高い伸びが続くことが見込まれるが、個人消費を中心とした国内需要の回復ペースは緩やかとなっているため、売上の伸びは当面限定的にとどまるだろう。このため、企業収益の回復基調は10年度入り後も持続することが見込まれるものの、そのペースはこれまでに比べれば鈍化する可能性が高い。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は18業種の全てが黒字となった(黒字業種数は1-3月期が4業種、4-6月期が10業種、7-9月期が12業種、10-12月期が16業種。ただし、4-6月期から一部で業種分類の改定が行われたため、単純な比較はできない)。輸送用機械は08年10-12月期から09年4-6月期まで3四半期続けて赤字となっていたが、国内外の自動車購入促進策の効果で国内販売、輸出ともに好調が続いたため、09年7-9月期に黒字に転じた後、10年1-3月期の黒字額は1兆389億円となり、2年前の水準(08年1-3月期:1兆576億円)にほぼ並んだ。
非製造業では、卸・小売業(前年比24.3%)、情報通信業(前年比11.9%)は2四半期連続の増加となったが、建設業(前年比▲14.0%)、サービス業(前年比▲15.2%)が減少に転じたほか、原油価格下落の効果から09年1-3月期以降黒字が続いていた電気業が再び赤字(▲448億円)に転落した。
労働分配率(当研究所による季節調整値)は4四半期連続で低下し64.4%となった。製造業は4四半期連続で低下したが、非製造業は5四半期ぶりに上昇した。
労働分配率は09年1-3月期には過去最高水準の71.8%となったが、この1年間で7.4ポイントの急低下となった。ただし、人件費が増加に転じたことに加え、企業収益の回復ペースが10-12月期までに比べれば鈍化したため、1-3月期の低下幅は前期差▲1.1%とこれまでに比べれば緩やかとなった。
大幅な減少が続いていた人件費は前年比0.7%と8四半期ぶりに増加したが、企業の人件費抑制姿勢は依然根強く、人件費がこのまま増加を続けると考えるのは早計だろう。労働分配率は先行きも低下傾向が続く可能性が高い。

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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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