コラム
2010年03月24日

米国医療保障制度改革に思う

  丸尾 美奈子

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米国で長年の懸案であった「国民皆医療保障制度の実現」がいよいよ現実のものとなるようだ。自己責任を重んじる米国では、これまで、中所得以上の米国人の大半は、民間の医療保険に加入し、高齢者や障害者及び低所得者等に限って公的医療保険を提供してきた。連邦政府が運営する高齢者向けメディケア(Medicare)並びに州政府が運営する低所得者向けメディケイド(Medicaid)という制度である。

現役世代の医療保障は、雇用主提供医療保険(民間)に企業が加入し、雇用者の福利厚生の一環として提供している場合が多い。こうした中、低所得者層を中心に約46百 万人(同比15.3%)の無保険者が存在しており、今回の動きはここにメスを入れるものである。

詳細な制度内容はこれから詰められるようだが、政府運営の保険会社は作らずに、民間保険会社に委託するというのは、米国らしい選択と言える。既述のメディケアの中に、パートCと呼ばれるメディケア・アドバンテージという仕組みがある。これは、一定の給付水準を保証しつつ、政府に代わって民間保険がプランを提供する制度であり、おそらく、メディケアパートCの現役バージョンを作り上げるものと思われる。

但し、今回の新たな医療保障制度の恩恵をフルに受けることができる層は、65歳前の低所得層であり、自助努力が当たり前という意識が強い一般の米国人に、政府の新たな支出を納得させることはまだまだ紆余曲折が予想されるところである。

むしろ、わが国のような公的介護保険制度が無い中で、多くの米国人の関心は老後の介護保障にあることに留意する必要がある。

介護状態になった場合、一般の米国人は、自己負担で在宅ケアを受け、介護状態が重度化すると、ナーシングホームと呼ばれる、わが国の特養に該当する施設に入居する。但し、この施設の自己負担は年間700万円以上(※1)に及び、入所者の半数近くは、既述の低所得者向けのメディケイドに頼らざるを得ない状況に追い込まれ、わが国の生活保護受給者状態にある。

米国では、今後、数年のうちに、大量のベビーブーマー世代が老後を迎える。米国政府は、こうした迫りくる高齢化対策と、待ったなしの医療保険ニーズのある低所得者層向けの対策と、両立が求められている。

(※1)MetLife Market Institute Survey on Home Care and Nursing Homes, 2006による

 
            
 

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