コラム
2009年04月06日

景気底入れはいつか?

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.先行き改善を示す指標も

4月1日に発表された日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIが前期に比べ34ポイント低下してマイナス58となり、悪化幅も水準も過去最悪となった。しかし、先行きはマイナス51となっており、悪いながらも改善が予想されている。3月30日に発表された2月の鉱工業指数でも、鉱工業生産指数は前月比9.4%の大幅低下となった。10-12月期に前期比12.0%と四半期ベースで過去最大の減産幅となったのに引き続き、1-3月期も前期比で20%を超える減産幅となりそうだ。しかし先行きについては、3月の製造工業生産予測指数が2.9%の上昇となっているのに続いて4月も3.1%上昇と、生産の持ち直しが見込まれている。
   2月の統計では、失業率は4.4%に上昇し、家計調査では消費支出が前年比実質で3.5%減少するなど、実績を表す経済指標は景気の悪化を示すものばかりだ。しかし、先行きについては、これまでの悪化一方という状況から改善の動きを示すものも出てきた。

2.下り階段にも踊り場がある

2002年初にはじまった景気拡大局面は、それまで戦後最長と言われてきた「いざなぎ景気」を超える長期間にわたるものとなった。しかし、この間一本調子で拡大してきたわけではなく、途中2度拡大速度の鈍化局面を経ている。
   景気拡大の勢いが鈍ると、「すわ景気後退局面入りか」という話も出るが、長い上りの途中では一休みが必要となるため階段に踊り場があるように、拡大速度の鈍化は景気の下降局面への転換とイコールではない。内閣府の景気動向指数研究会の暫定的な結論は、2007年10月をピークに景気の後退が起こっていたというものだが、2008年はじめころの論調は踊り場説も有力だった。
   不思議なことに、景気の悪化局面では「踊り場」という表現はあまり使われず、景気がすぐには反転回復しないことは、L字型とかU字型、W字型とかいう表現で表されることが多い。子供のなぞなぞに、「東京の上り坂と下り坂のどっちが多いか」というのがあるが、上りと下りの数は同じである。上り階段の踊り場は、下り階段としてみてもやはり踊り場だ。景気の悪化局面でも、一時的に悪化速度が緩やかになったり、景気が持ち直しそうな動きを示したりすることもある。

3.他の条件は一定でない

景気が反転するという説の有力な根拠は、在庫が減少しはじめたことだ。2月の在庫指数は103.7となり、1月よりも低下している。これまで出荷の減少に追いついていなかった生産の縮小が、ようやく追いついて在庫は減少をし始めた。これ以上の生産の縮小は必要ではなく、反転して増産に転じそうに見える。小幅な景気の悪化や単なる増産のし過ぎによる生産調整で外部条件が変わらない場合であれば、貯まった在庫が減り始めれば生産は元の水準に戻る。
   しかし、企業をとりまく環境は以前とは大きく変わっている。2月の出荷指数は70.9とピークから4割程度も減少していて、在庫と出荷の比率を表す在庫率指数は、2007年末頃の100程度の水準から150を上回る水準に上昇しており、現在の出荷水準に合わせるためには在庫水準をかなり低下させなくてはならないことを意味している。今後出荷がどの程度の水準で安定するかにもよるが、それ合った在庫水準に調整することを考えると、在庫は現在の水準からさらに減少する必要があるだろう。
   景気がそろそろ底に達したのか、下り階段の踊り場のような状況なのか、海外経済の様子や国内消費の状況をもう少しみないと判断はできない。これまでのような勢いで生産が減少することはなくなるものの、一時的な持ち直しはあってもしばらく低迷したままだろう。今後さらに失業率が上昇し消費の落ち込みが続くという縮小均衡の力が働くことを考えると、景気の底打ちは2010年になってからという可能性が高いと考えられる。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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