2008年03月26日

公共経営改革で岐路に立つ公の施設運営 -公立文化施設における指定管理者制度の影響を中心に-

  柄田 明美

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1.
公の施設の管理を民間事業者にも開放した指定管理者制度は、平成18年9月2日(経過措置期間終了時点)現在で、約6万2千施設で導入されている。
2.
指定管理者制度は、管理委託制度と比べ、地方公共団体が運用指針を定めること、委託ではなく委任であることから、本来は、経営主体の権限や独立性が高い制度である。
3.
指定管理者制度の導入にあたっては、個別法で規定されている場合は、個別法が優先されるものの、いずれの分野でも、指定管理者制度による施設管理が推奨されている。
4.
指定管理者制度導入の背景には、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)による行政サービスの民間開放があり、公の施設に関わる制度としては、PFI、地方独立行政法人がある。これらが事業を含めた運営全体を対象としているのに対し、指定管理者制度は、政策的な位置付けを担う運営主体というよりは、施設の管理とサービスを担う主体を対象としていることが、事業の継続性や人材育成といった課題を生む要因となっている。
5.
公立文化施設の場合、34%(4,265施設)で指定管理者制度が導入されており、都道府県、政令市で導入率は高い。管理委託制度からの移行が大部分である。
6.
現在直営の施設の場合は、次期に指定管理者制度を導入するかどうか、暫定的に非公募で制度を導入した施設の場合は、公募とするかどうかが検討課題である。
7.
文化施設と同様、文教施設として分類される図書館、博物館では、指定管理者制度の導入により、長期的視点に立った運営や人材育成が難しくなると懸念する声が高く、特に図書館では導入に慎重な姿勢がうかがえる。
8.
公立文化施設は、施設規模や立地条件等により施設の役割や位置付けが多様であり、指定管理者制度を導入するかどうか、選定手法を公募とするかどうかは、規模・事業範囲が多様な施設を明確な理論で分類し、説明することが不可欠である。
9.
利用料金制度や債務負担行為など、指定管理者の自立性を高めるためのしくみはすべての施設に適用されているわけではなく、制度のメリットを活かした積極的な制度活用が望まれる。
10.
公立文化施設は、従来から民間からの人材を登用してきた経緯から、指定管理者制度の導入を契機とし、専門人材の登用や処遇についても、行政の枠組みを離れたしくみづくりが必要であるとともに、文化事業に長年取り組んでいる企業との事業連携を促進できるしくみづくりが望まれる。
11.
公共経営改革を施設運営の見直しの契機とし、文化施設としての独立性、専門性を高める運営を行うためには、指定管理者制度のしくみを十分に活用するとともに、地方独立行政法人制度、構造改革特区制度など、複数の選択肢も視野に入れた工夫が必要である。

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