2007年09月26日

首都圏における人口・世帯構造の変化と持家・民間賃貸住宅需要

金融研究部 不動産市場調査室長   竹内 一雅

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1.
首都圏では、人口増加が続き、活発な住宅開発がなされている。不動産投資信託(J-REIT)などによる住宅投資も、人口増加が期待できる首都圏を中心に行なわれている。本稿では、昨年末から公表されはじめた2005 年の国勢調査の結果などをもとに、首都圏における人口・世帯構造の特徴の分析を行い、その上で今後の住宅需要を試算する。
2.
首都圏の人口増加は、全国の中で突出している。しかし、国立社会保障・人口問題研究所によると、首都圏でも、2015~2020 年には人口減少に転じると予測されている。首都圏の人口増加のうち、約7割が社会増加(他地域からの人口流入)で占められているが、首都圏以外で人口が増加している自治体はわずか6府県である。
3.
首都圏における世帯構造変化の特徴として、第一に、急速な高齢化があげられる。2000 年から2005 年の人口増加はすべて65 歳以上の高齢者の寄与によるものとなっている。他方、65 歳未満の人口は減少しており、賃貸住宅の主要居住者層であり持家の一次取得層でもある40 歳未満の減少が目立っている。第二の特徴として、持家世帯数の拡大があげられる。特に40 歳未満の世帯で、持家比率の上昇と民営借家比率の低下がみられた。家族類型では、「単独世帯」や「夫婦のみの世帯」「片親と子供世帯」が増加する一方、「夫婦と子供世帯」などが減少している。また、30 歳代の団塊ジュニア世代と、60 歳以上の世帯数が大幅に増加している。
4.
国立社会保障・人口問題研究所によると、首都圏の世帯数は、2015~20 年まで増加し、その後、減少局面に入ると予測されている。ただし、減少に転じるまでの間も、世帯数の伸びの多くは高齢者世帯の寄与によるものであり、20~30 歳代の世帯は、2005~2010 年には減少をはじめると予測されている。そこで、将来の持家世帯数を、過去の持家比率の推移を基に試算すると、高齢者世帯の著しい増加により、今後、持家世帯数は大きく増加するという結果となった。
5.
住宅の新規需要は、世帯のストック数の変化ではなく、新しい住宅への転居などの形で顕在化する。新規住宅需要の代理変数として転居世帯数を採用し、将来の新規住宅需要の予測を行うと、持家でも、民間賃貸住宅でも、世帯数の拡大ほどの住宅需要の増加は期待できないという結果になった。持家住宅の新規需要(転居世帯数)は、高齢者世帯と、団塊ジュニア世代の貢献により、2006~2010 年に増加するが、それ以降は、減少すると予測される。一方、民営借家住宅への新規需要は、転居世帯数の多くを占めている若年世帯数の減少が影響し、2006~2010 年から減少がはじまる可能性がある。
6.
人口が減少しても、世帯数が増加する限り、住宅需要も拡大するという見方が少なくない。しかし、試算結果は、世帯数が減少するより前に持家や民間賃貸住宅の需要は減少が始まるというものであった。これは、高齢化の進展で、転居比率の低い高齢者世帯数が増加することが大きな理由と考えられる。特に若年層が多く居住する民間賃貸住宅は、現在の需要構造が変らないのであれば、需要は大きく減少すると予測された。世帯数の伸びが頭打ちになる中、住宅需要を増大させるためには、各年齢層の転居率の引き上げが必要と考えられる。特に、世帯数が急増する高齢者世帯の転居率を引き上げることで、住宅需要が大きく拡大する可能性がある。
7.
これまで、国勢調査や住宅統計調査では、住宅需要の分析で必要となるクロス集計表が必ずしも十分には提供されてこなかったが、今年の統計法の改正により、オーダーメイド集計が可能となった。これにより、詳細かつ実用的な住宅需要の分析がようやく可能になると期待される。

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金融研究部   不動産市場調査室長

竹内 一雅 (たけうち かずまさ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

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