2002年06月25日

合併によって企業業績は改善したか? -財務データによるアプローチ-

  小本 恵照

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1.
近年、企業の合併が増加しているが、合併は企業業績の向上に寄与しているのだろうか。本稿では、1981年から1995年までの上場企業間の合併を対象に、企業の財務データを用いて合併前後の利益率を算出し、合併による業績改善効果が存在するか計測を行った。
2.
まず、ライバル企業のROA(総資本事業利益率)を用いて、経済産業の変動を除去した「相対的ROA」を算出し、合併によって相対的ROAに変化がみられるか分析を加えた。それによると、合併直前に相対的ROAの低下がみられ、合併後には若干の改善がみられた。しかし、統計的な検定を加えると、有意な改善と結論づけるまでには至らなかった。その原因を調べるために、相対的ROAを売上高事業利益率と総資本回転率に分解してみたが、そのいずれについても特段の変化は観測されなかった。合併による市場支配力の強化や、設備廃棄などによる生産効率の向上は、明確な形では生じなかったとみられる。
3.
次に、相対的ROAに影響を与える要因を検出するために、相対的ROAを被説明変数とし、合併の形態、合併に伴う総資産の変化率、総資産、合併当事会社の資本関係、消滅会社の業績、存続企業の所属業界を説明変数とするクロスセクションの回帰分析を行った。それによると、合併の形態のうち、水平合併の場合に有意なプラスが観測された。事業の関連性が高い合併ほど、規模の経済性、範囲の経済性、経営資源の補完性などが働く結果ではないかと考えられる。合併当事会社の資本関係では、関係会社のケースで有意なマイナスが観測された。業績が悪化している消滅会社との合併については、合併1年前と合併5年後の相対的ROAを比較したモデルと、合併1年前と2年前の相対的ROAの平均を合併5年後の相対的ROAと比較したモデルに有意なプラス値が観測された。これは、合併直前の業績悪化が合併によって改善されたことを示しており、合併が合併直前の業績不振からの脱出に関して無視できない役割を果たしていることが明らかとなった。

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