コラム
2001年12月17日

開業率の低下に歯止めはかかるのか?

  小本 恵照

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1.低下が続く開業率

新たなビジネスモデルを持った起業家が、活発に市場に新規参入することは経済活性化の源である。長期的な経済低迷が続く中で、最近の状況はどうであろうか。過去35年間の開業率の推移をみると、1970年頃には7%程度あったが、最近では4%程度にまで低下しており、その低下が顕著となっている(図表-1)。米国の開業率は14%程度で安定した推移を示しており、わが国の開業率の落ち込みが目立っている(図表-2)。

2.創業希望者は堅調に増加

では、開業を希望する人は減っているのだろうか。創業希望者の推移をみたものが図表-3である。創業希望者は、1977年の107万5千人から1997年には124万4千人にむしろ増加しており、創業を準備している者についても47万5千人から57万3千人に増加している。先にみたように開業率は低下しているのであるが、創業を希望する人は減っていないのである。
   創業支援はどうか。創業支援も1980年代末頃から充実が図られてきているのである。法律の制定をみると、1989年に「新規事業法」、1995年には「中小企業創造活動促進法」が制定されている。また、1997年にはエンジェル税制が導入されたし、1998年には「新事業創出促進法」の制定、1999年には「中小企業基本法」の抜本的改正と矢継ぎ早な創業支援関連の法律・税制改正が実施されている。また、経営家支援面では、日本商工会議所等による研修やセミナーの実施やベンチャープラザが開催されているし、融資面では、国民生活金融公庫の新規開業特別融資、信用保証協会の創業支援債務保証など各種の制度が設けられている。この他にも税制面での優遇措置、助成金、中小企業技術革新制度による技術面での支援なども豊富なメニューが揃っている。

3.景気対策、創業支援の整理・PR、起業家教育が課題

創業を希望する人が多く、創業支援も充実されてきているのに開業率が一向に向上しないのは、マクロおよびミクロの両面に解決すべき課題があるためと考えられる。
   まず、マクロ面では、景気の低迷が挙げられる。開業率と実質GDPの関係をみると、景気と開業率には明らかに正の相関が観察される(図表-4)。景気が悪い時には創業しても成功の見込みが小さいため、創業は先延ばしされるのである。先週発表された日銀短観をみてもわかるように、日本経済の業況の悪化は続いている。起業家が将来に明るい展望を描けるように、構造改革を進めると同時に効果的な景気対策が講じられることが期待される。また、開業率と産業の成長には、成長率の高い産業ほど開業率が高まるという正の関係がみられる(図表-5)。規制緩和を一段と進めることによって民間企業が参入可能な事業領域を拡大させ、ニュービジネスの成長を推進することが期待される。
   次にミクロ面であるが、まず、創業支援策の整理とPR の強化が求められる。先述のように創業支援のメニューの充実は進んでいるが、所管省庁や部署ごとに支援策が講じられているため、部外者には大変わかりにくいものとなっている。利用者からみてより利用しやすい制度となるように支援策の整理を進めるとともに、既存の制度のPRを強化することによる創業希望者への情報提供の充実や、中小企業支援センターといった支援に関する総合窓口の設置の増強も期待される。次に、創業意欲があっても現実の創業に結びつかないのは、起業家に起業に関する基本的な知識・ノウハウが欠如し、ビジネスプランを作成できない面も大きい。そこでは起業家教育が重要な役割を果たす。例えば、国民生活金融公庫の「新規開業実態調査」によると、起業家セミナーへの参加率は10%台と低いが、参加した人の約8割がセミナーは役に立ったと回答しており、起業家に対する教育活動の必要性が窺われる。今後は、初等中等教育レベルから起業家教育の充実を進め、より実践的な起業家の育成に努めるべきであると思われる。

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