1994年10月01日

日本企業の収益構造調整 -現状と展望

  小野 正人

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<要旨>

  1. リストラクチャリングに代表される企業における収益改善行動の成否とスピードは、今後の日本経済を占ううえで重要なポイントである。本稿では、現在の低収益性に代表される企業問題について収益・財務構造の観点から考察している。
  2. 長期的な視点からみれば、オイルショック以降に企業の財務体質は強化されている。借入金依存度や手元流動性に代表されるように財務の安定性は格段に向上しており、また含み資産のようなバランスシー卜に現れない財務体力も増大している。しかし一方で、総資本回転率、株主資本利益率、固定費比率が傾向的に悪化しているように、企業収益構造は収益性、効率性からみると長期低落傾向にある。
  3. 戦後の日本経済においては、高度成長下のストック調整(昭和40年前後)、石油ショック後の長期不況(昭和49年以降)、プラザ合意後の円高不況(昭和60年以降)、および今回の平成不況と4度の企業の調整局面が生じたが、前者2回は輸出中心の売上拡大で、プラザ合意後の円高不況は内需急伸による売上拡大によってコスト問題が解消していった。
  4. 今回の企業収益問題は、(1)利益水準の低下、(2)ROE(株主資本利益率)の低下に代表されるが、これは、国内向け売上の数量・単価双方が低下するというデフレ現象に「その他固定費」を中心とした間接コストの増大が重なったものである。その上、1980年代後半の多角化・海外投資ブームにより増大した投融資資産の収益性低下が資産効率をさらに悪化させている。個別企業を見ても、不況期に拡大する傾向のある収益の跛行性が今回は現れず、むしろ高収益企業の利益率低下が顕著である。
  5. 足元ではようやく収益改善行動が決算に現れてきた。上場企業の93年度決算からみると、全廃業ベースで総資産が前年度比1.4%の減少となり、回定費も同2.4%減となるなど、リストラは徐々に進んでいる。しかし、人件費の削減は未だ効果が現われていない。企業の人件費の半分を占める中高年層の雇用調整コストが高いだけに、企業は他の収益改善手段を選択しているものと思われる。
  6. 現在、企業が求められる利益水準と現実の間には大きなギャップがあり、しかも今後中期的に成長経済が期待できない以上、収益改善にはかつてなく長い期間を要する可能性が高い。企業には、(1)軽視されがちな利潤追求という経営の根幹を真正箇に見据え、(2)外部の経営関与者の重視する企業評価尺度を尊重し(市場の重視)、(3)望ましい収益率の得られない事業から成長性の高い分野に迅速にシフトできる(本来のリストラを進められる)調整力、が求められている。

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