1993年12月01日

日米の次世代通信網への対応

  坂本 眞一

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<要旨>

  1. 任意の発信者と受信者が情報を双方向で送受信する「通信」と、放送局から受信者への一方向ながら映像という大量の情報を送信する「放送」が、次世代通信網で統合されようとしている。このネットワークによりマルチメディア通信が実現され、双方向通信機能を持った新しい映像サービスや、自宅での講義受講や診察受診も可能になるといわれている。
  2. 郵政省の研究会では次世代通信網を敷設するにあたって、67兆円に達する経済波及効果があるものの、総計33兆円もの設備投資が必要であるため、構築事業は21世紀初頭まで単年でも黒字化しないと試算されている。一般に、次世代通信網の採算性のカギは、いかに人気のあるアプリケーションを開発し、どこまで適用業務を拡大するかにかかっているといわれている。事実、この通信網が多くのメディアを統合し適用業務を拡大するとの前提で試算すると、事業の収益性は改善し、2015年の次世代通信網の適用業務の総売上は年間35兆円、この通信網に接続される情報機器市場は年間20兆円となった。
  3. 米国では、90年代に入って次世代通信網実現にむけた動きが急速に高まっている。それは、(1)全米に光ファイバーの情報ハイウェーを拡張しようという動き、(2)CATVにより次世代の新しい映像サービスを始めようとする動き、(3)電話会社が電話と放送の統合サービスを試験的に商用化するとともに大手CATV会社を買収しようとする動きである。一方、わが国では郵政省やNTTが主体になって通信網を高度化する動きが中心であり、新しい映像サーどスや通信と放送の統合サービスを商用化する動きは米国ほど活発ではない。これはわが国のCATV業務や放送と通信の業際業務の規制が、米国に比べてきびしいためと考えられる。
  4. このような日米の動向をみると、米国で現在進められている試みがすべて成功するわけではないにしても、そこから有効な利用形態が発見されるものと期待できる。一方、日本では着実な技術研究や事業計画がなされるものの、米国での成功例を追随する従来のパターンが踏襲されることになろう。しかし情報関連産業ではいわゆる開発者利益が独占的な性格をもつ場合が多く、過去のIBM社の大型コンピュータOS、マイクロソフト社のパソコンOSのように知的所有権や既得権益を米国に独占される可能性がある。この開発競争にわが国も参入するには、放送と通信に関する規制緩和を現在の政府案以上に前進させることが必要であろう。

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