1992年01月01日

国会で討論を

  細見 卓

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多くの国民が期待していた政治改革も、当初の鳴り物入りの大改革から一票の重さが三倍を超える地域での必要最低限の定数是正という大山鳴動鼠一匹とも言うべき結果に終わりそうである。

国民にとっては政策優先の選挙、情実や金銭の絡まないクリーンな選挙に向けて少なくともその緒につくものと思われていた政治改革が、ついに関係者達の既得権にしがみつく横車の為に画餅に帰した。そのことの国民に与えた政治への失望の大きさは計り知れないものがあり、その悪影響は今後顕在化していくことが危倶される。

比例代表制と小選挙区制とを盛り込んだ改革は、一般有権者の前に政党の持つ政策の優劣を判断する機会を与えるものである。そのことによって国民は小さな自己中心の利益を離れて、政治とか、国の利益とか、公共の目的といった公のものに目を開かれる機会を提供される。そのことが日本の国民の政治的成熟を促進するうえで非常に大きな効果をもたらすものと思われていただけに今回の顛末は大変残念なことである。

政治の抜本的な改革が暫くは期待できないとすれば、せめて我々として国会や国会議員に要望したいのは、国会内での議論の根本的な改革であり、政党と政党との本格的な討論を中心とする国会運営を是非実現してもらいたいものである。この為には、特別な法令の改廃は必要とせず、国会討論に参画する一人一人の議員の意識を改めることによって実現できるものである。

最近の国会討論を見ていると、国会が国権の最高の機関として国の根本方針を討論しているというよりも政府与党対野党の党利党略的な揚げ足取りや大局を忘れた議論が余りにも多いようにみえる。こういう国会であれば、国民の方も国会の論議に真剣な関心を寄せることにならず、どちらが勝ったかとか、恰好が良かったとかといった政治の在り方としては本来重要でない本末転倒的な闘争の場に化しているようである。

現在論議されている国連協力法案についても、湾岸戦争前後の世界情勢を踏まえて国連の役割をどのように展望するか、あるいは戦敗国であるが故に制約のある我が国の国連活動の活発化の為には国連に対し、いかなる改革を求めるべきか、既成の大組織の常として避けがたい国連組織の官僚化・無力化にいかに対処すべきか等についてそれぞれの政党、政治家の見識や抱負を国民の前に開陳し、今後の国連活動の中でのこの法案の果たす役割を国民に説明し、理解を得るような論議が十分に行われているとはいえない。今後の世界政治の在り方を大きく決定する国連協力の在り方について国民はどう考え、どう備えるべきかという展望が未だ十分に明らかにされていないようにみえる。

日本の法的制度は、実定法の解釈を中心にして法秩序を維持しようとする考えが強いけれども、そうである為には実定法の解釈は確立されており、妄りに変わらないということが不可欠の要件である。今までとかく安全保障に係わる活動に関しては、この実定法の解釈が徐々に変更されており、かえってそれが諸外国からの不信を招くところとなっている。実定法の解釈によって実態を変えようとするのではなく、必要な改正を避けることなく日本が法治国家として守っていくことを明文で規定していくことが、アジア諸国からの不信感を除く上での根本問題である。この点を踏まえて国会で十分に議論すべきであり、国民の理解を深める国会討論が切に望まれる。

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