1991年06月01日

日米構造協議と対外不均衡

  稲田 義久

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■見出し

1.はじめに
2.日米構造協議
3.シミュレーションの方法と基準解
4.シミュレーション―日米構造協議1
5.シミュレーション―日米構造協議2
6.要約

■はじめに

レーガン政権の政策が本格的に実施された'82年から'85年にかけて、米国の経常収支亦字は58.7億ドルから1,223.3億ドルへと急速に悪化した。対外純資産も1,062.6億ドルから-1,172.1億ドルとなり純債務国になった。1980年=100とするドルの実効レート(MERM)は、'85年には150.2となり50%も増価した。このような諸指標からみて、'80年以降のドル高や巨額の経常収支赤字の持続可能性について疑問が提出されてきた。P.Krugman、S.MarrisやF.Bergsten達は、大幅な経常収支赤字が累積すれば、海外投資家の不安を高めスムーズな資本流入を阻害し、ドルが暴落する(ハード・ランデイング)可能性のあることを指摘した。一方、米国の政策当局も、市場優先・自由放任主義のリーガン財務長官とスプリンケル財務次官のコンビからベーカー財務長官とダーマン財務副長官に交代することにより、経常収支赤字とドル高に何らかの処置を講じるべしとの判断に至った。

1985年9月22日、G5諸国の大蔵大臣および中央銀行総裁が、ニューヨークのプラザホテルに集まりいわゆるプラザ合意に至ったのも、ドル暴落が世界不況につながるかもしれないという共通した危機意識からであった。プラザ合意における共通認識として、(1)主要先進国間の対外ポジションには大きな不均衡があり、(2)特に米国の大幅な経常収支赤を放置しておけば、保護主義的な圧力が高まり世界経済にとって好ましくない。(3)このような対外不均衡を是正するためにも各国は政策協調をとるべきである。特に、米国は、財政赤字の削減政策、日本および西ドイツは、内需拡大政策を協調して実施すべきである。(4)対外不均衡を是正するためにも、各国の通貨がドルに対して秩序だって上昇することが望ましいし、それが有用であるときには各国は協調介入を行うことがあるとした。

プラザ合意からわずか1年も経たないうちに、ドルは大幅に下落した。しかしながら、結果として、プラザ合意以降のドル安が米国の対外不均衡是正に及ぼした効果は期待されたよりはるかに少なかった。大幅なドル安にもかかわらず、対外不均衡がわずかしか縮小されず、従来のマク口経済政策協調は対外不均衡是正の点からは大きな限界があるこが認識されてきた。その原因として指摘されてきたのは、各国の経済構造に根ざした「構造問題」であり、それ以降議論は、従米のマク口経済政策協調から構造調整へと展開していくのである。

本論の目的は、新たな政策協調の場である日米構造協議において確認された諸政策が、日米の対外不均衡の縮小にどの程度効果があるかを、日米リンク・モデル(KMW Ver.4)を用いて数量的に検討することにある。

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