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2025年08月13日

インド消費者物価(25年8月)~7月のCPI上昇率は+1.6%、食品価格の下落が続き8年ぶりの低水準に低下

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が8月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年7月のCPI上昇率は前年同月比1.6%と、前月の同2.1%から低下したものの(図表1)、事前の市場予想(同1.4%)1を上回った。
 
地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比2.0%(前月:同2.6%)、農村部が同1.2%(前月:同1.7%)と、それぞれ低下した。
品目別にみると、主に食品価格の下落がCPIを押し下げた。

まず食品は前年同月比▲1.8%となり、前月(同▲1.0%)に続いて減少した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲20.7%(前月:同▲18.9%)となり大幅な価格下落が続いた。もっとも、野菜価格は昨年の価格高騰の反動により前年同月比では減少しているが、前月比では11.6%の二桁増となっている。また豆類(前年同月比▲13.8%)と香辛料(同▲3.1%)、肉・魚(同▲0.6%)の減少が続いたほか、国際価格の緩和により穀物製品(同3.0%)や牛乳・乳製品(同2.7%)が鈍化した。他方、油脂(同19.2%)や果物(同14.4%)は大幅な増加が続き、また加工食品(同4.4%)は小幅に上昇した。なお油脂価格の高騰は昨年9月の食用油の関税引き上げや国際的な価格上昇による影響が大きい。

燃料・電力は前年同月比2.7%(前月:同2.6%)と、緩やかな伸びが続いた。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.1%(前月:同4.4%)と低下した。カテゴリー別にみると、金価格の高騰によりパーソナルケア(同15.1%)が二桁増を続けた一方、教育(同4.0%)や衣服・靴(同2.5%)、輸送・通信(同2.1%)、娯楽(同2.4%)は前月から低下、住宅(同3.2%)は横ばいの伸びだった。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
7月のインフレ率(CPI上昇率)は前年同月比1.6%と、主に野菜や豆類を中心とした食品価格の下落により2017年6月以来の低水準に低下し、インド準備銀行(RBI)の目標レンジである2~6%を下回った。インフレ圧力が後退すると国内需要の減退が懸念されるが、足元のインフレ鈍化は昨年の野菜価格高騰に伴うベース効果の影響が大きい。年内はベース効果が続くなか、国際商品市況の緩和を受けて落ち着いた推移が続きそうだ。

インド気象局(IMD)の予測では、今年の南西モンスーンの降雨量は長期平均(LPA)の106%となっており、2年連続で平年を上回る可能性が高い。政府によると、10月以降に収穫時期を迎えるカリフ(雨期)作物の作付面積は前年比+4.0%と増加している。農業生産が高まると、農家の収入が向上すると共に、食品インフレの抑制に繋がることが期待される。
(図表3)インフレ率と政策金利 RBIは8月の金融政策委員会(MPC)では4会合ぶりに政策金利の据え置きを決定した(図表3)。6月の会合では0.5%ポイントの大幅利下げを実施していたため、予想通りの結果である。今月、トランプ米大統領はロシア産原油の購入を理由としてインドからの輸入品に対して25%の追加関税を課す大統領令を発令した。外需の見通しが不透明な状況が続くなか、今回7月のCPIが低下したことにより、10月の会合での追加利下げへの期待が高まる。しかしながら、RBIは来年1-3月期には+4.4%までインフレが加速すると予測しており、追加利下げのハードルは高そうだ。これまでの利下げサイクルは終盤に差し掛かっている可能性が高い。
 
1 Bloomberg集計の中央値。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月13日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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