- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- 欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-
NEW
2025年09月02日
欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
6|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、2019年末までは、ソルベンシーIIと同等と考えられているSSTによる数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMA(スイス金融市場監督機構)と合意した内部モデルで算出されている。
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、2019年末までは、ソルベンシーIIと同等と考えられているSSTによる数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表してきた。ところが、2020年からはSST比率での開示を中心に据えることに変更している。Zurichによれば、SSTはZ-ECMよりも安定性をもたらし、資本は基本的には同じ方法で管理される。
ZurichのSST比率は、監督当局であるFINMA(スイス金融市場監督機構)と合意した内部モデルで算出されている。
(3) トピック
Zurichの2025年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2025年5月16日に、期限付き劣後債7.5億ドルの調達に成功したと発表した。
2025年7月3日に、トロントに拠点を置く世界的なサイバー保険及びリスク管理インシュアテック企業である BOXX Insurance Inc.(BOXX)の買収に成功し、リテール・中小企業向けサイバー保険とサービスをグローバルに提供することになると発表した。
Zurichの2025年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2025年5月16日に、期限付き劣後債7.5億ドルの調達に成功したと発表した。
2025年7月3日に、トロントに拠点を置く世界的なサイバー保険及びリスク管理インシュアテック企業である BOXX Insurance Inc.(BOXX)の買収に成功し、リテール・中小企業向けサイバー保険とサービスをグローバルに提供することになると発表した。
4―ソルベンシー比率の算出等に関係するその他の事項
この章では、ソルベンシー比率の算出等に関係するその他の事項について報告する。
これらの項目については、既に2024年末数値に関するレポートとして、基礎研レポート「欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-」(2025.4.1)の中でも一部報告している。
さらには、2024年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-長期保証措置と移行措置の適用状況-」(2025.6.6)や「欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-内部モデルの適用状況と分散効果の状況等-」(2025.6.13)等のレポートにおいて報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
なお、以下の「2」~「4」については、Zurichを除くソルベンシーII制度等の対象の5社について述べている。
これらの項目については、既に2024年末数値に関するレポートとして、基礎研レポート「欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-」(2025.4.1)の中でも一部報告している。
さらには、2024年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-長期保証措置と移行措置の適用状況-」(2025.6.6)や「欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-内部モデルの適用状況と分散効果の状況等-」(2025.6.13)等のレポートにおいて報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
なお、以下の「2」~「4」については、Zurichを除くソルベンシーII制度等の対象の5社について述べている。
AXAは140%をリスクアペタイト限度水準に設定して、これを上回る水準を維持する方針を有しているが、2020年12月1日に行われた2023年に向けての戦略に関する投資家向けプレゼンテーションの中で、約190%(140%のリスクアペタイト限度に50%ポイントのバッファー)を目標にする、と公表している。
Allianzは、150%を「sustainable SolvencyⅡcapitalization ratio」とし、2022年のAnnual Reportにおいては、180%を「minimum ambition」と称していた。
Generaliは、会社が取るリスク水準を定めているRAF(Risk Appetite Framework)において、過剰なリスクテイクを制限し、ソルベンシーポジションを望ましい水準に維持するために、「hard and soft limits」を設定している。2024年は、130%を「hard limit level」、150%を「soft limit level」に設定して、株式報酬制度の株数付与の決定にも関連付けている。
AvivaはWorking Rangeという名称で水準設定しており、下限の160%を下回る場合には、資本力を回復する行動を起こし、上限の180%を超える場合には、事業に投資したり、株主に還元したり、M&Aを行うとしている。
Aegonは地域別に目標を設定しており、以下の図表の通りとなっている。
Allianzは、150%を「sustainable SolvencyⅡcapitalization ratio」とし、2022年のAnnual Reportにおいては、180%を「minimum ambition」と称していた。
Generaliは、会社が取るリスク水準を定めているRAF(Risk Appetite Framework)において、過剰なリスクテイクを制限し、ソルベンシーポジションを望ましい水準に維持するために、「hard and soft limits」を設定している。2024年は、130%を「hard limit level」、150%を「soft limit level」に設定して、株式報酬制度の株数付与の決定にも関連付けている。
AvivaはWorking Rangeという名称で水準設定しており、下限の160%を下回る場合には、資本力を回復する行動を起こし、上限の180%を超える場合には、事業に投資したり、株主に還元したり、M&Aを行うとしている。
Aegonは地域別に目標を設定しており、以下の図表の通りとなっている。
Zurichは、2020年からSSTベースの下限を160%と設定している。この際に、SSTの160%は、AA格付けの資本水準に相当しており、SSTで180%から200%の範囲で事業を運営することを目指していると述べていた。
なお、ソルベンシー比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
2|SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
各社とも内部モデルを適用しているが、その適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については、同等性評価に基づき、米国RBCによって算出したものをグループベースでは一定の換算を行うことで、全体の計算に反映している。
2024年のSFCRに基づくと、Zurichを除く5社のソルベンシーII等に基づく分散効果控除前のSCR算出における内部モデルの適用比率(=内部モデルによるSCR/(内部モデル適用後の)全体のSCR))は、以下の通りとなっている。

2023年以降の数値は、2022年までの数値とはベースが異なっている会社もあるが、2022年までの数値も参考として掲載している。なお、各社の内部モデル適用比率の状況は、子会社の買収・売却等の事業戦略の影響を受けている要素も大きい。
内部モデルの適用によって最も影響が大きいのが、子会社間や地域間の分散効果であると考えられているが、(標準式による分も含めた)分散効果による控除率は、以下の通りとなっている。
分散効果による控除率の水準については、2023年までとは異なり、2024年は各社によって算出ベースが異なっているので、単純な比較はできない。具体的には、以下の図表はQRTのS.25.02.22等からの数値に基づいて、筆者が算出した数値を掲載しているが、例えば同じソルベンシーIIに基づいているAXAとAllianzとGeneraliにおいて、記載数値の算出ベースが異なっている(税引き前か後か、連結法のみか控除合算法含みか、項目の記載順序等)ものと想定され、AXAとAllianzの2024年の(これまでと同じ方式で筆者が算出したベースの)数値は2023年までの数値とは大きく水準が異なるものとなっている。ただし、この点に関して、各社のSFCRには必ずしも説明が行われていないので、ここでは2023年までと同様な方式で筆者が算出したベースの数値に加えて、AXAとAllianzについては、2023年とほぼ同様なベースと筆者が想定する方式による数値を括弧書きで掲載している。

これまで、SFCRにおいても、標準式によるSCRの数値は開示されてきていないが、過去の影響度調査によれば、内部モデル適用によるSCRの引き下げ効果は2割程度と想定されている。
なお、ソルベンシー比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
2|SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
各社とも内部モデルを適用しているが、その適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については、同等性評価に基づき、米国RBCによって算出したものをグループベースでは一定の換算を行うことで、全体の計算に反映している。
2024年のSFCRに基づくと、Zurichを除く5社のソルベンシーII等に基づく分散効果控除前のSCR算出における内部モデルの適用比率(=内部モデルによるSCR/(内部モデル適用後の)全体のSCR))は、以下の通りとなっている。

2023年以降の数値は、2022年までの数値とはベースが異なっている会社もあるが、2022年までの数値も参考として掲載している。なお、各社の内部モデル適用比率の状況は、子会社の買収・売却等の事業戦略の影響を受けている要素も大きい。
内部モデルの適用によって最も影響が大きいのが、子会社間や地域間の分散効果であると考えられているが、(標準式による分も含めた)分散効果による控除率は、以下の通りとなっている。
分散効果による控除率の水準については、2023年までとは異なり、2024年は各社によって算出ベースが異なっているので、単純な比較はできない。具体的には、以下の図表はQRTのS.25.02.22等からの数値に基づいて、筆者が算出した数値を掲載しているが、例えば同じソルベンシーIIに基づいているAXAとAllianzとGeneraliにおいて、記載数値の算出ベースが異なっている(税引き前か後か、連結法のみか控除合算法含みか、項目の記載順序等)ものと想定され、AXAとAllianzの2024年の(これまでと同じ方式で筆者が算出したベースの)数値は2023年までの数値とは大きく水準が異なるものとなっている。ただし、この点に関して、各社のSFCRには必ずしも説明が行われていないので、ここでは2023年までと同様な方式で筆者が算出したベースの数値に加えて、AXAとAllianzについては、2023年とほぼ同様なベースと筆者が想定する方式による数値を括弧書きで掲載している。

これまで、SFCRにおいても、標準式によるSCRの数値は開示されてきていないが、過去の影響度調査によれば、内部モデル適用によるSCRの引き下げ効果は2割程度と想定されている。
(2025年09月02日「基礎研レポート」)
関連レポート
- 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-
- 欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-長期保証措置と移行措置の適用状況-
- 欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SCRの算出(内部モデルの使用状況と分散効果の状況等)-
- EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2024-ソルベンシーIIの改正指令が最終化-
- 英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その8)-2024年における動き(Brexit後の4年間の取組みが最終化)-
- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(3)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(4)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/09/02 | 欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/08/20 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その12)-螺旋と渦巻の応用- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2025/08/07 | 複素数について(その3)-複素数の工学・物理学への応用- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2025/08/04 | EIOPAがソルベンシーIIのレビューに関する最初のRTS(案)等のセットを欧州委員会に提出等 | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
新着記事
-
2025年09月02日
ユーロ圏失業率(2025年7月)-若年失業率は過去最低水準を更新 -
2025年09月02日
欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- -
2025年09月02日
増産計画でも続く令和の米騒動~新米価格はいくらになる?~ -
2025年09月02日
ポピュリズムではないトランプ政権の医療保険政策-トランプ岩盤支持層はどう受け止めていくか- -
2025年09月02日
中国、社会保険料の納付強化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-のレポート Topへ