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2025年09月02日
欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-
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5|Aegon
Aegonは、2023年9月30日に法定本籍地のバミューダへの移転が完了したと発表し、10月1日より、グループ監督者はDNB(オランダ中央銀行)から、BMA(バミューダ金融庁)に変更された。ただし、本社はオランダのままでオランダの税務居住者であり、Euronext Amsterdamとニューヨーク証券取引所(NYSE)での上場は継続されている。このグループ監督者の変更は、Aegonの資本管理アプローチに重大な影響を与えることはないと述べている。
2023年7月4日に、ASRへのオランダの年金、生命保険、損害保険等の業務の移管と統合が完了したとの発表により、Aegonはオランダで規制対象の保険事業を行わなくなったため、ソルベンシーII制度の下で、DNBがAegonのグループ監督者であり続けることができなくなった。一方で、バミューダにはAegonの子会社4社がある。バミューダの規制制度は、EUのソルベンシーII制度及び英国のソルベンシーII制度との同等性が認められており、さらには米国のNAIC(全米保険監督官協会)によって、適格管轄区域及び相互管轄区域としても指定されている。
なお、2027年の移行期間終了まで、Aegonのバミューダにおけるソルベンシー比率と剰余金は、ソルベンシーII制度の下でのものとほぼ一致したものとなるが、移行期間終了後にはバミューダのソルベンシー制度が完全に採用されていくことになる。ただし、バミューダのソルベンシー制度の下でも、グループのソルベンシー比率は概ね同様な水準となり、資本管理の枠組みに大きな影響はないと想定されている。
Aegonは、2023年9月30日に法定本籍地のバミューダへの移転が完了したと発表し、10月1日より、グループ監督者はDNB(オランダ中央銀行)から、BMA(バミューダ金融庁)に変更された。ただし、本社はオランダのままでオランダの税務居住者であり、Euronext Amsterdamとニューヨーク証券取引所(NYSE)での上場は継続されている。このグループ監督者の変更は、Aegonの資本管理アプローチに重大な影響を与えることはないと述べている。
2023年7月4日に、ASRへのオランダの年金、生命保険、損害保険等の業務の移管と統合が完了したとの発表により、Aegonはオランダで規制対象の保険事業を行わなくなったため、ソルベンシーII制度の下で、DNBがAegonのグループ監督者であり続けることができなくなった。一方で、バミューダにはAegonの子会社4社がある。バミューダの規制制度は、EUのソルベンシーII制度及び英国のソルベンシーII制度との同等性が認められており、さらには米国のNAIC(全米保険監督官協会)によって、適格管轄区域及び相互管轄区域としても指定されている。
なお、2027年の移行期間終了まで、Aegonのバミューダにおけるソルベンシー比率と剰余金は、ソルベンシーII制度の下でのものとほぼ一致したものとなるが、移行期間終了後にはバミューダのソルベンシー制度が完全に採用されていくことになる。ただし、バミューダのソルベンシー制度の下でも、グループのソルベンシー比率は概ね同様な水準となり、資本管理の枠組みに大きな影響はないと想定されている。
(1) SCR比率の推移
Aegonは、グループ全体のSCR比率の変動要因等について、2022年第3四半期までは四半期毎に分析結果を開示していたが、2022年第4四半期以降は、四半期及び半期毎に、地域別の分析結果を中心に公表してきている。
グループ全体のSCR比率、自己資本及びSCRの推移については、次ページの図表の通りとなっている。
2025年上期末におけるSCR比率は、2024年末の188%から5%ポイント低下して、183%となった。
これは主として、新たな4億ユーロの株式買い戻しプログラムと2025年中間配当による。資金調達費及び営業費用を差し引いた後の資本形成額は2.24億ユーロとなったが、これには、主に米国による影響で2.71億ユーロのマイナスの影響を伴う市場動向が含まれている。さらに、一時的項目は0.73億ユーロのプラスの影響となったが、米国における一時的項目のマイナスの影響は、ASR株式の保有による利益で相殺された。
Aegonは、グループ全体のSCR比率の変動要因等について、2022年第3四半期までは四半期毎に分析結果を開示していたが、2022年第4四半期以降は、四半期及び半期毎に、地域別の分析結果を中心に公表してきている。
グループ全体のSCR比率、自己資本及びSCRの推移については、次ページの図表の通りとなっている。
2025年上期末におけるSCR比率は、2024年末の188%から5%ポイント低下して、183%となった。
これは主として、新たな4億ユーロの株式買い戻しプログラムと2025年中間配当による。資金調達費及び営業費用を差し引いた後の資本形成額は2.24億ユーロとなったが、これには、主に米国による影響で2.71億ユーロのマイナスの影響を伴う市場動向が含まれている。さらに、一時的項目は0.73億ユーロのプラスの影響となったが、米国における一時的項目のマイナスの影響は、ASR株式の保有による利益で相殺された。
なお、米国のRBCをソルベンシーIIに転換する手法については、移管契約の一部として、BMAと合意してきた、としている。これによれば、移行可能性の制限を反映して、自己資本はRBC CAL(会社行動段階)の100%(毎年再評価)、必要資本はEIOPAのガイダンスに従って、RBC CALの150%に増加させられる。また、米国の持分項目についての調整には、主としてバミューダのキャプティブや規制対象外会社が含まれている。
1) 英国(Scottish Equitable plc)のソルベンシーII比率
2024年末の186%から2025年上期末の185%に1%ポイント低下した。持株会社への送金及び事業改善のための投資によるマイナスの影響が、営業利益による資本形成の影響により概ね相殺された。
2) 米国のRBC比率
2024年末の443%から2025年上期末の420%に23%ポイント低下した。2025年上期の市場動向はRBC比率に15%ポイントのマイナスの影響を与えたが、これには4月の市場変動の高まりを背景に行われたヘッジの再調整とクロス効果による5%ポイントのマイナスの影響が含まれている。残りの不利な影響は、主として、法定会計枠組みに基づくエネルギー関連資産の非経済的損失と金利の低下に起因している。さらに、再編費用、RBC計算におけるアクチュアリー前提の年次更新及び複数の小規模な項目が9%ポイントのマイナスの影響となっている。
2024年末の186%から2025年上期末の185%に1%ポイント低下した。持株会社への送金及び事業改善のための投資によるマイナスの影響が、営業利益による資本形成の影響により概ね相殺された。
2) 米国のRBC比率
2024年末の443%から2025年上期末の420%に23%ポイント低下した。2025年上期の市場動向はRBC比率に15%ポイントのマイナスの影響を与えたが、これには4月の市場変動の高まりを背景に行われたヘッジの再調整とクロス効果による5%ポイントのマイナスの影響が含まれている。残りの不利な影響は、主として、法定会計枠組みに基づくエネルギー関連資産の非経済的損失と金利の低下に起因している。さらに、再編費用、RBC計算におけるアクチュアリー前提の年次更新及び複数の小規模な項目が9%ポイントのマイナスの影響となっている。
(2) 感応度の推移
Aegonの感応度については、2023年からはグループ全体ではなく、英国のソルベンシーIIと米国のRBC及びソルベンシーII相当に対するもののみが公表されている。そこで、以下の図表では、グループ全体ではなく、英国と米国のソルベンシーII相当の数値に対する感応度を示している。
これによると、金利や信用スプレッドに対する感応度は、2022年末以降、基本的には大きくは変動していない。ただし、米国においては、変額年金の準備金の下限設定とDTAs(繰延税金資産)の不認容によって、市場動向に対する感応度が高まっており、2024年末以降の株式市場の上昇と下落に対する感応度がともにマイナスで大きな感応度となり、米国の信用リスクに対する感応度も大きなものとなっている。
なお、2023年末以降については、2022年末までとは異なるシナリオで、信用デフォルトと信用格付けに区分して、影響を開示しているので、2022年末までの数値との単純比較はできないことに注意が必要となる。
Aegonの感応度については、2023年からはグループ全体ではなく、英国のソルベンシーIIと米国のRBC及びソルベンシーII相当に対するもののみが公表されている。そこで、以下の図表では、グループ全体ではなく、英国と米国のソルベンシーII相当の数値に対する感応度を示している。
これによると、金利や信用スプレッドに対する感応度は、2022年末以降、基本的には大きくは変動していない。ただし、米国においては、変額年金の準備金の下限設定とDTAs(繰延税金資産)の不認容によって、市場動向に対する感応度が高まっており、2024年末以降の株式市場の上昇と下落に対する感応度がともにマイナスで大きな感応度となり、米国の信用リスクに対する感応度も大きなものとなっている。
なお、2023年末以降については、2022年末までとは異なるシナリオで、信用デフォルトと信用格付けに区分して、影響を開示しているので、2022年末までの数値との単純比較はできないことに注意が必要となる。
また、Aegonは、感応度の算出に関して、「現実の市場への影響(例えば、金利の低下や株式市場の下落)が同時に発生する可能性があり、それはより深刻な複合的な影響につながる可能性があり、表に示されている個々の感応度の合計と等しくない場合がある。」と説明している。
また、米国の感応度においては、DTAsについて、特定の不利なシナリオの下で、該当する場合、DTAsの一部が認められなくなる可能性があり、これを反映している。これにより、DTAsが全て認められる場合に比べて、感応度が高くなっている。なお、DTAsは時間の経過とともに回復可能である。実際に米国のRBC比率においては、DTAsの一部が認められなかった。
また、米国の感応度においては、DTAsについて、特定の不利なシナリオの下で、該当する場合、DTAsの一部が認められなくなる可能性があり、これを反映している。これにより、DTAsが全て認められる場合に比べて、感応度が高くなっている。なお、DTAsは時間の経過とともに回復可能である。実際に米国のRBC比率においては、DTAsの一部が認められなかった。
(3) トピック
Aegonの2025年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2025年6月4日に、1995年に発行された2.5億オランダ・レアルの永久累積劣後債の年利を6月8日から、1.506%から3.568%に引き上げる、と発表した。
2025年7月1日に、2025年1月13日に開始した1.5億ユーロの自社株買いプログラムが完了したことを発表した。これらは、一部は上級管理職向けの株式報酬制度に伴う債務の履行に充当し、残りは2025年後半に消却する予定であるとした。
2025年7月1日に、2億ユーロの自社株買いを発表した。これは2025年12月15日までに完了する予定である。なお、2025年8月25日には、これを4億ユーロに増額すると発表した。
Aegonの2025年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。
2025年6月4日に、1995年に発行された2.5億オランダ・レアルの永久累積劣後債の年利を6月8日から、1.506%から3.568%に引き上げる、と発表した。
2025年7月1日に、2025年1月13日に開始した1.5億ユーロの自社株買いプログラムが完了したことを発表した。これらは、一部は上級管理職向けの株式報酬制度に伴う債務の履行に充当し、残りは2025年後半に消却する予定であるとした。
2025年7月1日に、2億ユーロの自社株買いを発表した。これは2025年12月15日までに完了する予定である。なお、2025年8月25日には、これを4億ユーロに増額すると発表した。
(2025年09月02日「基礎研レポート」)
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中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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【欧州大手保険グループの2025年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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