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2025年09月01日

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2両親のような夫婦関係が羨ましい若者は1/2にとどまる
では、若者の理想のライフコースはさておき、自分たち親世代のような結婚をしてもいいと思うのではないか、という期待についてはどうだろうか。

先述の「出生動向基本調査」では、「両親のような夫婦関係を羨ましいと思うか」という興味深い質問がなされている。国の出生統計を見ると、第1子から第3子までの平均授かり父母年齢が30代前半に集中しているため、30歳から35歳あたりの両親から生まれた子どもと仮定して子の年齢に加算して考えるならば、18歳から34歳の未婚者(回答者)の親の年齢は、およそ48歳から69歳といったところである。48歳から69歳の人口は、団塊ジュニアを含む日本においてマジョリティとなる人口年齢層であり、企業の管理職層や政治家に多い年齢でもある。

日本の政治・経済界のコアをなす人口層を両親としている、その子世代が、親の夫婦関係を羨ましいと思っているか、という質問とも読み替えられる。
【図7: 18歳から34歳の未婚男女「両親のような夫婦関係を羨ましいと思うか」】
残念ながら、親世代のような夫婦関係を羨ましいと思うかについて「あてはまる」もしくは「どちらかといえばあてはまる」と回答した若い未婚男女は男女ともに50%とちょうど2人に1人にとどまった。しかも「どちらかといえば」ではなく、はっきりと「あてはまる」と回答したのは男性17%、女性15%となっており、いわゆる両親が自らのパートナー選びの完全なロールモデルであるとみている若い男女は、約6人に1人にとどまっている。

見方を変えると、自分の両親のような夫婦になりたくない(羨ましくない)と考えている若者が半数にものぼっているということである。

理想の結婚のロールモデルが両親ではないと考える子どもたちが、なんと半数もいるのである。日本の婚姻減が母子1世代の約30年間で45%減となっている1のも、納得のデータともいえるだろう。

実はこの「理想の夫婦モデルは親にあらずの子どもたちが1/2」状態は、今に始まったことではない。今から約20年前に実施された第12回出生動向基本調査(2002年)の結果を見ると、35歳未満の未婚者の男女のうち、両親の関係を羨ましく思うかについての回答結果は「あてはまる+どちらかというとあてはまる」男性51%・女性52%、「あてはまらない+どちらかというとあてはまらない」男性38%・女性39%、「該当しない」男性11%・女性9%と、やはり約20年前の若者たちも、その半数が両親を夫婦のロールモデルと考えられなかったことが示されている。

ロールモデルとなる両親なき若者たちが1/2という状態に気がつかないまま、両親世代の従来型の価値観で日本という国を作りあげてきたことが、現在の未婚化の一因となっているのではないだろうか。
 
1 2023年初婚同士婚姻数356,124件/1995年初婚同士婚姻数646,536件=55%(45%減)

3――おわりに・人口の未来のためには昭和型雇用・家族価値観の打破が必須

3――おわりに・人口の未来のためには昭和型雇用・家族価値観の打破が必須

未婚化による少子化が止まらぬ日本において、20年以上、両親の夫婦関係を羨ましく思わない若者たちが1/2という状態が継続している。であればなおさら、若者の理想とする家族価値観に寄り添い、それを可能とする雇用改革を推進していく必要がある。一方で、高齢化が急速に進む日本では、今後両親の介護問題が増加していくのは確実であり、筆者もそうだったが、介護をしながらの仕事と家庭の両立は非常に困難で、やむを得ず離職といったケースも男女問わずに出てくるだろう。だからこそ、このことも視野に入れた、家族の男女どちらかに強く経済的に依存することのない雇用体制づくりの改革が待ったなしなのである。

自分が若かったころの常識、普通であったライフコースを前提に、良かれと思って主張されている、変えずに続けられている、そんな昭和から続く伝統的な雇用や政治が、令和の若者の家族形成を阻んでいることをデータは明確に示している。

繰り返しになるが、我々中高年の夫婦像を羨ましく思っている若者は50%に過ぎない。

日本の人口の未来を願うならば、若者の理想とする家族価値観に寄り添うエビデンスを正しく踏まえた「若者の代弁者」が、1人でも多く現れることを願ってやまない。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月01日「基礎研レター」)

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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向


    【委員歴/ご依頼順(現職優先)】

    1.政府
    ・【総務省統計局】
    「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】
    「若い世代視点からのライフデザインに関する検討会」構成員(2025年度)
    「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
    「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
    「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【内閣府男女共同参画局】
    「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府】
    「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
    「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)

    2.自治体
    ・【富山県】
    「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
    ・【高知県】
    「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
    「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
    ・【三重県】
    「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
    ・【愛知県豊田市】
    「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
    ・【石川県】
    「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【長野県伊那市】
    「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
    「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
    ・【愛媛県松山市】
    「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)

    3.民間団体
    ・【東京商工会議所】
    東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【愛媛県法人会連合会】
    えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】
    「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
    ・【中外製薬株式会社】
    「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
    ・【主宰研究会】
    地方女性活性化研究会(2020年~)


    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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