2025年02月05日

【地方創生・人口動態データ速報】2024年 社会減(国内移動純減)都道府県ワーストランキング-日本人と外国人の合計で移動純減は40エリア-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

文字サイズ

1――社会減は40エリア、1位の広島県が2位の愛知県を大きく引き離す

1月31日に公表された総務省「住民基本台帳人口移動報告」2024年の年報によって、2024年の都道府県における転入超過数(転入数―転出数)が判明した。月報で11か月分を筆者は計算していたため、予想通りの結果となったが、国内移動合計(日本人+外国人)で最も人口を移動純減させたのは2位の愛知県を大きく引き離して広島県(▲1万711人)となり、4年連続の1位となった(図表1)。
図表1:2024年年間・都道府県転入超過数 社会減エリアランキング1-10位(人)
図表2:2024年年間・都道府県転入超過数 社会減エリアランキング11-40位(人)
47都道府県で社会減となったのは40エリア、社会増となったのは7エリアで、2023年とエリア数配分は変わらないものの、滋賀県が社会増から社会減エリアへと移動し、山梨県が社会減エリアから社会増エリアにかろうじて移動した(82人増)。
 
結果的に15万6933人の人口が社会減40エリアから社会増7エリアへと移動した1。前年2023年は14万1706人であったので、111%の社会減増となっている。つまり、社会減エリアから社会増エリアへより多くの人口が移動する結果となった。
 
1 あくまでも転入数と転出数の差(筆者は人口綱引きと呼んできた)としての16万人であることに注意。

2――社会減エリアは女性に選ばれにくい

2――社会減エリアは女性に選ばれにくいが、社会減のジェンダーレス化も

筆者が2018年から研究所レポートや講演会で主張してきたように、あいかわらず社会減エリアは男性よりも女性の方が多く減っているという状況に変わりはない。2024年も40社会減エリア中32エリア(80%)が男性よりも女性を多く減らす結果となっている。社会減40エリア平均(女性/男性が1.17倍)より大きな倍率となったのは17エリアである。

ここで注意しておきたいのは、片道の転入数、転出数で見れば男性の方が多いことである。一見、クラスの同級生単位で見ると、男性の方が多く地元から出ているために、男性の方が減っているという勘違いを体感しやすい。しかし、男性に関しては他のエリアからIターン移動してきたり、結局地元にUターンしてきたりする数が多い。女性は男性より出ていかないが、IターンUターンしてくる数が少ないために、結果として女性を多く地元から失うのである。簡単な式で示すと、
 
男性:200人出ていって、160人入ってくる   40人減
女性:140人出ていって、 80人入ってくる   60人減 
 
といったイメージである。
 
社会減の男女アンバランス度合いでみると、栃木県が女性だけを1000人以上も減らすという女性に選ばれない県として際立っている。また、群馬県も男性の32倍という驚愕の男女アンバランスな女性減である。女性減が男性減の3倍を超えているのは熊本県、宮崎県で、2倍を超えているのは北海道、大分県となっている。このことから、北関東>九州>北海道の順で、女性減に強い危機意識を持つべきである。

一方、社会減数で男女数がほぼ同じとなるエリアも増加傾向となっている。別のレポートで解説するが、大学新卒を中心とした就職減が社会減の主たる要因であるため、令和時代のジェンダーレス価値観(多様性)教育を受けた若者が、男女関係なく地元を就職で選ばなくなってくる傾向も、今後拡大していくのではないかと考えている。

(2025年02月05日「基礎研レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】内閣府特命担当大臣主宰「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は年度最新順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【高知県】高知県「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【愛媛県法人会連合会】えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【【地方創生・人口動態データ速報】2024年 社会減(国内移動純減)都道府県ワーストランキング-日本人と外国人の合計で移動純減は40エリア-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【地方創生・人口動態データ速報】2024年 社会減(国内移動純減)都道府県ワーストランキング-日本人と外国人の合計で移動純減は40エリア-のレポート Topへ