2025年02月04日

マネジドケアの本分-ユナイテッドヘルスケアCEO射殺事件から-

保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴

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■要旨

昨年12月4日、米国の医療保険最大手ユナイテッドヘルスケアのCEOがニューヨーク市内で射殺された。数日後に逮捕された容疑者は残したメモの中で医療保険会社を批判しており、ソーシャルメディア上では憎き医療保険会社に鉄槌を下した英雄として容疑者を礼賛するものも出ている。
 
今回の事件で特に脚光を浴びているのは医療保険会社による給付金請求の拒否である。医療保険会社としては医療上の必要性があるかの判断は揺るがせにできないところながら、個々の事案においては給付金を得られなかった保険加入者側に大きな不満が残ることがある。
 
このように医療保険会社が嫌われるのは、米国では医療保険会社がマネジドケアを担ってきたためである。需要と供給が合致する限り医療費は自由であり公定価格などは存在しないところ、保険の対象が無制限あるいは予測不能のままで保険を組むことはできない。医療保険会社が医療機関をネットワーク化し保険の対象となる医療費を定めてきた。
 
たとえ憎まれ役になろうとも、その機能こそがマネジドケアの本分である。今後も医療保険会社がマネジドケアを担って保険を成立させていく構図に変化はないだろう。行政機関であれ民間企業であれ、これから他の存在がマネジドケアのインフラとノウハウを構築することは想像し難いためだ。

■目次

1――ユナイテッドヘルスケアCEO射殺事件
2――医療保険会社が嫌われる理由
3――マネジドケアとは何か
4――おわりに

(2025年02月04日「保険・年金フォーカス」)

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保険研究部   主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任

磯部 広貴 (いそべ ひろたか)

研究・専門分野
内外生命保険会社経営・制度(販売チャネルなど)

経歴
  • 【職歴】
    1990年 日本生命保険相互会社に入社。
    通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
    日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
    2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
    資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。

    【加入団体等】
    日本FP協会(CFP)
    生命保険経営学会
    一般社団法人 アフリカ協会
    一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
    2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版

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