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ノンメディカルな卵子凍結-東京都では計4千5百人が卵子凍結を実施済、現在パートナーがいない健康な30歳~40歳代が将来に備える傾向-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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本稿では東京都が取りまとめた貴重な卵子凍結の実態調査結果について概説した。
2023年5月末時点における東京都内の生殖補助医療機関104か所を対象に、生殖補助医療に係る状況を取りまとめた結果、医学的卵子凍結を行う医療機関は16か所(18.4%)、社会的卵子凍結を行う医療機関は36か所(41.4%)であり、回答の得られた87か所のうち、医学的・社会的いずれかの卵子凍結を実施している52か所では、これまでに医学的卵子凍結は計183人、社会的卵子凍結は計4,567人実施されていた。
採卵時の年齢について、医学的適用では、10歳代~20歳代の占める割合が28.4%と比較的若い年齢での採卵が目立った。一方で、社会的適用では、30歳~40歳代が全体の81.7%を占めており、社会的卵子凍結では不妊治療はしていないが妊孕性の低下を考慮して30歳代40歳代が実施している傾向が明らかとなった。初めて卵子凍結を使用した年齢について、医学的適用は35歳から39歳において約5割を超えているのに対し、社会的適用では40歳から49歳までにおいて12.5%が実施している上に、20歳代の実施も4.9%認められることから、幅広い年齢層で活用されていた。卵子凍結を使用するまでの期間については、社会的卵子凍結では1年未満と比較的早い期間に使用を決断している実態が浮き彫りとなった。凍結卵子を使用して妊娠に至った人数(妊娠率)は、医学的卵子凍結では3人(33.3%)、社会的卵子凍結では114人(29.7%)と大差は認められなかった。
卵子凍結の目的については、医学的卵子凍結では、「今すぐ妊娠することが現実的ではないこと」、社会的卵子凍結では、「2人の間に子どもが欲しいと思える相手(パートナー)がいない」が最も選択されていた。
卵子凍結には、一番若い状態の卵子を保存できることや不慮の出来事に対する保険的な側面、キャリア形成を考慮した積極的な人生設計ができるなどのメリットに対し、保険診療外で費用負担が生じることや使用薬剤の副作用リスク、妊娠率が必ずしも高くないことなどデメリットも存在し課題は山積しているが、今後、女性のキャリア支援や積極的に家族計画をコントロールするためのひとつの手段として社会的卵子凍結に対する支援の拡充が期待される。
■目次
1――はじめに
2――卵子凍結の実態
1|卵子凍結を取り扱う医療機関数と人数
2|卵子凍結に関する年齢や期間と妊娠率
3|卵子凍結の理由
3――卵子凍結のメリット・デメリット
(2024年12月11日「基礎研レター」)

03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
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