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2024年12月10日
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<注目材料(3):国内景気と日銀利上げの行方>
次に国内に目を転じた場合に注目されるのは、「国内景気と日銀利上げの行方」だ。
日本の2024年7-9月期実質GDP成長率は2期連続の前期比プラスとなったが、景気回復の足取りは鈍い。とりわけ、長引く物価上昇による実質賃金の低迷が最大の需要項目である個人消費の重石となっている。
従って、来年2月に本格化する来春闘でも高い賃上げが実現し、実質賃金が持続的に上昇に向かうかが注目される。
この点は日銀の金融政策の行方も左右する。日銀は現在の実質金利が極めて低い水準にあるとの認識のもと、「(日銀が示している)経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げる」方針を維持している。従って、高い賃金上昇率が持続し、賃金コストの価格転嫁が進むことで「賃金と物価の好循環」が進めば、「経済・物価が日銀の見通し通りに動いており、物価目標達成の確度が高まっている」として段階的に利上げを実施するだろう。
次に国内に目を転じた場合に注目されるのは、「国内景気と日銀利上げの行方」だ。
日本の2024年7-9月期実質GDP成長率は2期連続の前期比プラスとなったが、景気回復の足取りは鈍い。とりわけ、長引く物価上昇による実質賃金の低迷が最大の需要項目である個人消費の重石となっている。
従って、来年2月に本格化する来春闘でも高い賃上げが実現し、実質賃金が持続的に上昇に向かうかが注目される。
この点は日銀の金融政策の行方も左右する。日銀は現在の実質金利が極めて低い水準にあるとの認識のもと、「(日銀が示している)経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げる」方針を維持している。従って、高い賃金上昇率が持続し、賃金コストの価格転嫁が進むことで「賃金と物価の好循環」が進めば、「経済・物価が日銀の見通し通りに動いており、物価目標達成の確度が高まっている」として段階的に利上げを実施するだろう。
来年、高い賃上げを受けて日本の景気が堅調に推移するもとで、日銀が段階的に利上げを実施すれば、日本の長期金利には上昇圧力になり、ドル円にとっては日本の金利上昇等を通じて円高ドル安要因になるだろう。日本株に対しては、利上げが重荷になるものの、その背景にある日本経済の回復は追い風になる。

さらに、国内では「参院選と政局の行方」が注目される。参院選は7月頃に実施され、議席の半数が改選対象になる。
現在は与党である自民・公明党の議席数が140と総議席数248の過半数を占めているが、仮に、与党の議席数が16以上減って過半数を割り込むことになれば、衆参ともに「過半数割れ」となり、政権運営にさらなる支障が出ることになる。
石破政権が参院選時点まで続いているかは定かではないが、続いていたとしても参院選でも敗北することになれば、退陣に追い込まれる可能性が高いだろう。
その後は、「次期首相(野党が結集しなければ次期自民党総裁)が誰になるか」、「政権の枠組みがどのような形になるか」によって、市場への影響が変わってくる。
次期首相ないし政権の枠組みが財政拡張的であれば、日本株にとっては景気回復期待によって追い風に、長期金利にとっては国債増発観測によって上昇圧力になる一方、ドル円への影響は限られそうだ。また、次期首相ないし政権の枠組みが日銀の利上げに批判的であれば、長期金利にとって低下圧力に、ドル円にとって円安圧力に、日本株にとって(円安効果で)株高要因になると考えられる。
ただし、参院選の結果とその後の展開は様々な可能性が考えられるだけに、現状で予測するのは困難だ。

以上、来年の主な注目材料を取り上げてきたが、最後に主な材料と市場の行方について、中心的なシナリオを考える。その際、最も重要な材料は世界経済の行方を大きく左右するトランプ政権による政策発動とその経済への影響となる。
トランプ政権による政策の発動については不透明感が強いものの、弊社では、2025年年初から、中国からの輸入品に対する追加関税30%が開始されるとともに(別途、2026年には全輸入品に対する5%の関税賦課が開始)、不法移民65万人の強制送還も開始されると想定している2。
これに伴って、2025年後半から米国の物価上昇率が押し上げられるため、FRBは年前半に2回の利下げを実施した後、年後半は利下げを見送る(停止する)と予想している。

日銀は、(今年12月の利上げを見送った後)来春闘での高い賃上げ実現が具体的に見通せるようになる2025年1月に0.50%程度への追加利上げを実施(詳細は8~9頁に記載)した後、賃上げがデータで確認できるようになり、参院選を通過した2025年7月に0.75%程度へ利上げすると見込んでいる(その後は2026年1月に1.0%程度へ利上げ)。米国のインフレ再燃と利下げ停止によるドル高圧力が、過度の円安進行への警戒を通じて日銀に着実な利上げを促す面もある。
以上の想定を基に来年の相場展開を考えると、まず、日本の長期金利は日銀による段階的な利上げ継続と公表済みの計画に沿った国債買入れ減額によって緩やかな上昇トレンドを辿ると見ている。来年年末にかけて1%台前半を中心に推移し、来年末の水準は1.3%台と予想している(具体的な予測値は11頁の表に記載)。
ドル円については、来年の前半はFRBの利下げが継続される一方、日銀が利上げを実施することが円高ドル安圧力となるものの、トランプ政権による一部関税引き上げ、強制送還の開始を受けてインフレ再燃・FRB利下げの停止観測が台頭し、ドルの下値を支える形となり、1ドル150円前後での推移となる。年後半には、実際に米国で物価上昇率が上振れ、利下げも見送られることがドルを支えるが、関税引き上げ等の影響が現れることで米国・世界経済の減速懸念が高まるほか、貿易摩擦激化への警戒やトランプ減税延長による米財政悪化懸念も燻ることで、やや円高に振れると見ている。来年末の水準として1ドル146円を予想している(具体的な予測値は11頁の表に記載)。
最後に、日本株については、来年前半はFRBの利下げ継続に伴う米経済の下支え期待や来春闘での高い賃上げ実現による国内景気の回復期待によって上昇に向かう可能性が高いと見ている。一方、年の後半には米国で関税引き上げ等の影響が現れ、FRBの利下げも見送られることで米国・世界経済の減速懸念が高まるほか、貿易摩擦激化への警戒も燻り、やや下落すると見ている。現時点では、来年末の日経平均株価として40000円前後を予想している。
以上が中心的なシナリオとなるが、それぞれ、トランプ政権の出方次第の面が強い。日本の政局も流動的で見通しに反映させづらい。例年以上に不確実性の高さが否めないため、情勢の変化を読み取り、見通しを機動的に再検討する姿勢が求められる。
2 窪谷浩(2024)「米国経済の見通し-25年以降の経済見通しはトランプ次期政権の政策が左右」『Weekly エコノミスト・レター』2024-12-09
(2024年12月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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