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- TemuのEU消費者保護法制違反被疑事案-CPCネットワークの指示・調査
コラム
2024年11月22日
2024年11月8日、欧州委員会と、Consumer Protection Cooperation(CPC、EU加盟各国における消費者保護のための行政当局)ネットワークは、オンラインプラットフォームであるTemuに対して、EUの各種の消費者保護法制(the Unfair Commercial Practices Directive(不公正商慣行指令)、the Consumer Rights Directive(消費者権利保護指令)、the Price Indication Directive(価格表示指令)、 the e-Commerce Directive(電子商取引指令)、the Unfair Contract Terms Directive(不公正契約条件指令)を含む)を侵害したと通知し、侵害行為を消費者保護法制に適合させるよう指示するとともに、さらに調査を進めることを公表した1。CPCネットワークはドイツ、ベルギー、アイルランドの当局が主導権をとって調査を進めてきた。
欧州委員会とCPCネットワーク(以下、あわせてCPCネットワークという)の調査は、消費者を誤解させたり、購入決定に過度に影響を与えたりする可能性のあるものなど、消費者がTemuで買い物をする際に直面する広範な商慣行を対象としている。また、CPCネットワークは、Temuが消費者保護法に基づくオンラインマーケットプレイスの特定の情報義務を遵守しているかどうかも調査している。
CPCネットワークの公表文では、以下の行為が違法であると考えているとしている。
(1) 偽の割引:製品が割引されていないにもかかわらず、割引価格で提供されているという誤った印象を与えること。
(2) 圧力販売:供給量が限定されているという偽の表示、あるいは偽の購入期限などの戦術を使用して、消費者に購入を完了するよう圧力をかけること。
(3) 強制ゲーミフィケーション(forced gamification): ゲームの報酬に関する使用条件についての重要な情報を隠しながら、消費者に「フォーチュンホイール (いわゆるルーレット)」を回すゲームをプレイしてオンラインマーケットプレイスにアクセスするように強制すること。
(4) 欠落している、または誤解を招く情報: 消費者が商品を返品し、払い戻しを受ける法的権利について、不完全で不正確な情報を表示すること。また、Temuは、消費者が購入を完了する前に、注文数が一定の最小値に達する必要があることを事前に通知しないこと。
(5) 偽のレビュー:Temuがウェブサイトに掲載された顧客の商品レビューの信頼性をどのように保証しているかについて、不十分な情報しか提供していないこと。この点に関し、各国の当局は、本物ではないと疑われるレビューを発見した。
(6) 隠された連絡先: 消費者は、質問や苦情についてTemuに簡単に連絡することはできないこと。
さらに、CPCネットワークは、EU消費者保護法に基づくさらなる義務に対する同社のコンプライアンスを評価するために、Temuにさらなる情報を要求している。
Temuは、CPCネットワークの調査結果に回答し、特定された消費者法の問題にどのように対処するかについての約束(commitment)を提案するために、公表日から1か月の猶予が与えられる。Temuの回答によっては、CPCネットワークが同社との対話に入る可能性がある。
他方、TemuがCPCネットワークによって提起された懸念に対処しない場合、各国当局はコンプライアンスを確保するための執行措置を講じることができ、これには、関係する加盟国におけるTemuの年間売上高に基づいて罰金を科す可能性が含まれる。
本公表を見て感じたのは、対処のための約束を提案するまでに1か月の余裕しかないことだ。これは(法律上の要請か、CPCネットワークの裁量かはともかく)消費者保護の観点から、一刻も早く改善を求めることを重要視していることを意味する。CPCネットワークの問題意識が高いということなのだろう。
欧州委員会とCPCネットワーク(以下、あわせてCPCネットワークという)の調査は、消費者を誤解させたり、購入決定に過度に影響を与えたりする可能性のあるものなど、消費者がTemuで買い物をする際に直面する広範な商慣行を対象としている。また、CPCネットワークは、Temuが消費者保護法に基づくオンラインマーケットプレイスの特定の情報義務を遵守しているかどうかも調査している。
CPCネットワークの公表文では、以下の行為が違法であると考えているとしている。
(1) 偽の割引:製品が割引されていないにもかかわらず、割引価格で提供されているという誤った印象を与えること。
(2) 圧力販売:供給量が限定されているという偽の表示、あるいは偽の購入期限などの戦術を使用して、消費者に購入を完了するよう圧力をかけること。
(3) 強制ゲーミフィケーション(forced gamification): ゲームの報酬に関する使用条件についての重要な情報を隠しながら、消費者に「フォーチュンホイール (いわゆるルーレット)」を回すゲームをプレイしてオンラインマーケットプレイスにアクセスするように強制すること。
(4) 欠落している、または誤解を招く情報: 消費者が商品を返品し、払い戻しを受ける法的権利について、不完全で不正確な情報を表示すること。また、Temuは、消費者が購入を完了する前に、注文数が一定の最小値に達する必要があることを事前に通知しないこと。
(5) 偽のレビュー:Temuがウェブサイトに掲載された顧客の商品レビューの信頼性をどのように保証しているかについて、不十分な情報しか提供していないこと。この点に関し、各国の当局は、本物ではないと疑われるレビューを発見した。
(6) 隠された連絡先: 消費者は、質問や苦情についてTemuに簡単に連絡することはできないこと。
さらに、CPCネットワークは、EU消費者保護法に基づくさらなる義務に対する同社のコンプライアンスを評価するために、Temuにさらなる情報を要求している。
Temuは、CPCネットワークの調査結果に回答し、特定された消費者法の問題にどのように対処するかについての約束(commitment)を提案するために、公表日から1か月の猶予が与えられる。Temuの回答によっては、CPCネットワークが同社との対話に入る可能性がある。
他方、TemuがCPCネットワークによって提起された懸念に対処しない場合、各国当局はコンプライアンスを確保するための執行措置を講じることができ、これには、関係する加盟国におけるTemuの年間売上高に基づいて罰金を科す可能性が含まれる。
本公表を見て感じたのは、対処のための約束を提案するまでに1か月の余裕しかないことだ。これは(法律上の要請か、CPCネットワークの裁量かはともかく)消費者保護の観点から、一刻も早く改善を求めることを重要視していることを意味する。CPCネットワークの問題意識が高いということなのだろう。
(2024年11月22日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2024/12/03 | AI事業者ガイドライン-総務省・経済産業省のガイドライン | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2024/11/22 | TemuのEU消費者保護法制違反被疑事案-CPCネットワークの指示・調査 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2024/11/19 | 欧州委員会によるTemuの調査-デジタルサービス法違反被疑事案 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2024/11/06 | 情報伝達・取引推奨による内部者取引-東証職員によるインサイダー取引疑惑 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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【TemuのEU消費者保護法制違反被疑事案-CPCネットワークの指示・調査】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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