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2024年10月11日
米国における法定責任準備金評価利率を巡る動向-金利の上昇を受けて、10年ぶりに2025年から0.5%引き上げられる-
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2|ジャンボ契約と非ジャンボ契約
契約当初の年金保険料の規模に基づいて、「ジャンボ契約(2億5,000万ドル以上)」と「非ジャンボ契約(2億5,000万ドル未満)」に区分される。
ジャンボ契約の評価利率は毎日決定され、非ジャンボ契約の評価利率は四半期ごとに決定される9。
9 ジャンボ契約は、殆ど年金リスク移転(pension risk transfer)で構成され、日次で利率が更新されるものの、これらの利率の算出や適用は、各評価時においてのみ行われるため、多くの会社にとっての影響は大きくないと考えられている。
契約当初の年金保険料の規模に基づいて、「ジャンボ契約(2億5,000万ドル以上)」と「非ジャンボ契約(2億5,000万ドル未満)」に区分される。
ジャンボ契約の評価利率は毎日決定され、非ジャンボ契約の評価利率は四半期ごとに決定される9。
9 ジャンボ契約は、殆ど年金リスク移転(pension risk transfer)で構成され、日次で利率が更新されるものの、これらの利率の算出や適用は、各評価時においてのみ行われるため、多くの会社にとっての影響は大きくないと考えられている。
3|評価利率の決定
評価利率は、米国債と様々な信用度の債券を組み合わせた所定のポートフォリオの簿価利回りに基づいて決定される。また、各評価利率バケットは異なる満期の資産で構成されている。
所定のポートフォリオの信用力分布は、米国債 5%、AA債 15%、A債 40%、BBB債 40%による。
(1) 非ジャンボ契約の四半期の評価利率
Iq=R+S+D-E
ここで、
R:評価利率バケットの参照利率
S:スプレッド
D:デフォールトコスト
E:スプレッド控除(0.25%と定義される)
この評価利率は、最も近い0.25%単位の数字に丸められる。
(2) ジャンボ契約の日々の評価利率
Id=Iq+Cd-1―Cq
ここで、
Iq:上記(1)で算出される四半期の評価利率
Cd-1:保険料決定日の直前営業日の日次コーポレートレート10
Cq:上記(1)の作成に使用された同じ期間に対応する平均日次均コーポレートレート
この評価利率は、0.01%単位の数字に四捨五入される。
10 セントルイス連邦銀行のWebサイトからダウンロードできる年限ごとのBank of America Merrill Lynchの米国コーポレート実効利回りをVM-22 に定められた表にしたがって加重平均することで算出される。
評価利率は、米国債と様々な信用度の債券を組み合わせた所定のポートフォリオの簿価利回りに基づいて決定される。また、各評価利率バケットは異なる満期の資産で構成されている。
所定のポートフォリオの信用力分布は、米国債 5%、AA債 15%、A債 40%、BBB債 40%による。
(1) 非ジャンボ契約の四半期の評価利率
Iq=R+S+D-E
ここで、
R:評価利率バケットの参照利率
S:スプレッド
D:デフォールトコスト
E:スプレッド控除(0.25%と定義される)
この評価利率は、最も近い0.25%単位の数字に丸められる。
(2) ジャンボ契約の日々の評価利率
Id=Iq+Cd-1―Cq
ここで、
Iq:上記(1)で算出される四半期の評価利率
Cd-1:保険料決定日の直前営業日の日次コーポレートレート10
Cq:上記(1)の作成に使用された同じ期間に対応する平均日次均コーポレートレート
この評価利率は、0.01%単位の数字に四捨五入される。
10 セントルイス連邦銀行のWebサイトからダウンロードできる年限ごとのBank of America Merrill Lynchの米国コーポレート実効利回りをVM-22 に定められた表にしたがって加重平均することで算出される。
4|評価利率の開示
評価利率については、以下のNAICのHPで公表されている。
pbr-2024-vm22-nonjumbo-jumbo-valuation-rates.xlsx (live.com)
ジャンボ契約の評価利率は毎営業日に、非ジャンボ契約の四半期ごとの評価利率は四半期の第3営業日までに公表される。
評価利率については、以下のNAICのHPで公表されている。
pbr-2024-vm22-nonjumbo-jumbo-valuation-rates.xlsx (live.com)
ジャンボ契約の評価利率は毎営業日に、非ジャンボ契約の四半期ごとの評価利率は四半期の第3営業日までに公表される。
5―まとめ
以上、今回のレポートでは、米国における「法定責任準備金評価利率」を巡る動向について、報告してきた。米国の標準責任準備金制度は、日本の標準責任準備金制度導入時に参考としたものであり、具体的な制度内容は必ずしも同じものではないが、その基本的な考え方等は同様なものとなっている。
日本においては、2025年度から新たな経済価値ベースのソルベンシー規制が導入され、さらには財務会計においては新たな保険会計の基準であるIFRS第17号(保険会計)を適用する会社も何社か出てきている。これらの資本規制や財務会計上の責任準備金評価(保険負債評価)においては、評価時の市場価格と整合的な経済価値ベースの評価が行われていくことになる。一方で、監督会計上の責任準備金評価については、これまでの標準責任準備金制度が引き続き維持されていくことが想定されている。その意味では、標準利率の設定の在り方やその水準の動向等については、今後も必要に応じて見直し等(の検討)が行われていくことも想定されていくことになる。
日本と米国では、金利を巡る市場環境等も異なっているものの、低金利環境下からの金利の上昇に伴う「法定責任準備金評価利率」を巡る動向及びそれを受けての保険会社等の対応等については、日本の保険会社等にとっても参考になるものが多く、関係者の関心も高いものと思われる。
今後も、これらの動向については引き続き注視していくこととしたい。
日本においては、2025年度から新たな経済価値ベースのソルベンシー規制が導入され、さらには財務会計においては新たな保険会計の基準であるIFRS第17号(保険会計)を適用する会社も何社か出てきている。これらの資本規制や財務会計上の責任準備金評価(保険負債評価)においては、評価時の市場価格と整合的な経済価値ベースの評価が行われていくことになる。一方で、監督会計上の責任準備金評価については、これまでの標準責任準備金制度が引き続き維持されていくことが想定されている。その意味では、標準利率の設定の在り方やその水準の動向等については、今後も必要に応じて見直し等(の検討)が行われていくことも想定されていくことになる。
日本と米国では、金利を巡る市場環境等も異なっているものの、低金利環境下からの金利の上昇に伴う「法定責任準備金評価利率」を巡る動向及びそれを受けての保険会社等の対応等については、日本の保険会社等にとっても参考になるものが多く、関係者の関心も高いものと思われる。
今後も、これらの動向については引き続き注視していくこととしたい。
(2024年10月11日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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