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中期経済見通し(2024~2034年度)

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楽観シナリオでは、米国が景気減速に向かわない「ノーランディング」シナリオを想定している。米国経済が高成長を維持し、物価上昇率の鈍化も遅れるため、FRBの利下げペースはメインシナリオよりも緩やかとなり、政策金利の着地点もメインシナリオよりやや高い水準となる。
日本では、2%を超える物価上昇率が継続するうちに、物価上昇の内容が日銀の目指している賃金と物価の好循環を伴う形へと明確に移行することで、利上げペースが加速する。利上げが停止されるのは、物価上昇率が2%程度に低下、かつ定着が確認できる2028年度となり、その際の政策金利は2%台半ばになると想定している。
日本の長期金利は、日銀による速いペースでの段階的な利上げ実施を受けて、メインシナリオよりも早期かつ大幅に上昇していくことになり、日銀が利上げを停止する2028年度には2%台後半に達すると想定。その後も日銀による長期国債保有高の圧縮が継続されることで長期金利は緩やかに上昇し、予測期間末(2034年度)には3%に到達すると見込んでいる。
ドル円レートについては、日銀が速いペースで利上げを進めることになるため、予測期間中盤にかけて日米金利差が大幅に縮小し、メインシナリオよりも円高ドル安ペースが速まる。ただし、円売りの発生しやすいリスク選好地合いが続くため、その差は限定的に留まるだろう。その後、予測期間後半には、日銀の利上げは実施されないものの、メインシナリオ同様、日本の長期金利が緩やかに上昇することや購買力平価の観点からの円高圧力が続く。ただし、日本の経常黒字縮小による円安圧力がやや上回り、トータルでは、メインシナリオ同様、緩やかな円安基調になると想定している。予測期間末の水準は1ドル125円と想定している。
悲観シナリオでは、既往の累積的な利上げ効果が急激に顕在化し、金融収縮も発生することで、米国の景気が予測期間序盤に失速、景気後退に陥ると想定。2025年にかけてFRBによる急速な利下げが実施され、同年には再び実質ゼロ金利政策が採られることになる。日本も景気悪化を受けて物価上昇率が大きく低下するため、追加利上げは行われず、むしろ2025年度には政策金利を現行の0.25%程度から0~0.10%程度へと引き下げる利下げが実施されるだろう。非伝統的金融政策では、副作用が大きいと見做されるマイナス金利政策は復活しないものの、現在進めている長期国債の買入れ減額は早期に停止され、再び増額に転じると想定している。その後についても、予測期間を通じて金融緩和が継続し、正常化の動きは生じない。
日本の長期金利は、海外金利の低下に加え、日銀が予想物価上昇率の低下に伴う実質金利上昇への対応として、2025年度に金融緩和に踏み切ることを受けて、2026年度にかけて0.2%まで低下し、予測期間末まで同水準での低迷が継続することになる。
ドル円レートについては、予測期間の序盤に米景気の急激な悪化に伴う米金利の大幅な低下を受けて、日米金利差の急速な縮小を通じてドル安圧力が大きく高まる。日銀も利上げ路線を撤回して金融緩和に踏み切るものの、緩和余地が乏しいため、円高抑制効果は殆ど期待できない。さらに、リスク回避的な円買い圧力も加わる形となり、予測期間半ばにかけて1ドル110円を割り込む水準まで大幅な円高ドル安が進むと想定している。その後も米国の実質ゼロ金利政策が長期化するため、予測期間末にかけてドル円は110円割れでの低迷が続くことになる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年10月11日「Weekly エコノミスト・レター」)
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