2024年06月10日

米国経済の見通し-景気は緩やかに減速、12月利下げ開始を予想

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 米国の24年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+1.3%(前期:+3.4%)と前期から大幅に低下。もっとも、外需の成長率寄与度が▲0.9%ポイントとなった影響が大きく国内最終需要(前期比年率)は+2.5%(前期:+3.5%)と内需は堅調を維持。
     
  2. 4月以降も雇用増加ペースは概ね堅調を維持しているものの、実質可処分所得が伸び悩む中、個人消費は24年以降に減速傾向が持続。
     
  3. 一方、インフレは前年同月比での低下基調が持続しているものの、物価の基調を示すコア指数は前月比や3ヵ月前比は高止まっており、物価上昇圧力は燻っている。このような状況を受けて金融市場が織り込む利下げ開始時期は後ズレ。
     
  4. 米国経済はこれまでの累積的な金融引締めの影響から今後も労働市場や個人消費の減速継続を背景に24年後半にかけて景気の減速を予想。その後はFRBが金融緩和に転じることもあって、25年以降は緩やかな景気回復を見込む。成長率(前年比)は24年が+2.3%、25年が+1.6%成長を予想。なお、経済予測に際しては11月に予定されている大統領や議会選挙の結果を受けた25年以降の大幅な経済政策変更はないことなどを前提とした。
     
  5. 金融政策は、インフレ率の低下が緩やかに留まる中、FRBがインフレ率の動向を慎重に見極めた後、24年12月に利下げを開始し、24年は1回、25年は3回の利下げを予想。
     
  6. 上記見通しのリスクは、インフレ高止まりによる利下げ時期の先送りに加え、24年の大統領・議会選挙を受けた米国内政治の機能不全やトランプ氏再選に伴う政策の予見可能性の低下が挙げられる。

 
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  (経済概況)1-3月期の成長率は大幅低下も内需は堅調を維持
  (経済見通し)成長率は24年が+2.3%、25年が+1.6%を予想。
2.実体経済の動向
  (労働市場、個人消費)労働市場、個人消費は緩やかに減速
  (設備投資)緩やかな回復基調が持続
  (住宅投資)住宅ローン金利の高止まりが重石も金融緩和政策への転換に伴い回復へ
  (政府支出、債務残高)25年度以降の財政運営は流動的
  (貿易)堅調な国内経済を背景に外需の成長率寄与度はマイナス傾向が続く
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  (物価)コア、総合指数ともに緩やかに低下
  (金融政策)24年12月利下げ開始を予想
  (長期金利)24年10-12月期平均が4.2%、25年10-12月期がド3.6%への低下を予想

(2024年06月10日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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