2024年09月04日

欧州大手保険グループの2024年上期末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック-

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4|Aviva
Avivaは会社ベースと(英国のソルベンシーII制度に基づく)監督・規制ベースの2つのソルベンシー比率を開示してきている。

Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、規制上のソルベンシーIIポジションに対して、以下の2点の調整が行われている。

・完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2024年上期末で14.30億ポンド、2023年末で14.08億ポンド、2022年末で13.69億ポンド)、職員年金制度(2024年上期末で3.31億ポンド、2023年末で3.97億ポンド、2022年末で3.94億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。

・TMTP(技術的準備金の移行措置)の名目上のリセットは、正式なTMTPのリセットと同じ方法で計算されるが、正式なTMTPのリセットポイントがトリガーされた場合にのみ発生するソルベンシーIIポジションの段階的な変更を回避している。2024年6月30日のソルベンシーIIポジションは、少なくとも2年毎にTMTPをリセットするという要件に沿って、TMTPの正式なリセットに基づいており、調整は必要ない。
(1) SCR比率の推移
2024年上期末のSCR比率は、2023年末の207%から2%ポイント低下して、205%となった。

この要因については、以下の通りとなっている。

・資本形成(営業)により+8%ポイント、資本形成(非営業)により+8%ポイント

・配当により▲7%ポイント

・債務発行/返済により▲7%ポイント

・自社株買いにより▲4%ポイント

なお、AIGの英国の保険事業及びカナダのOptiomの買収による影響は、Singlifeの売却による影響で相殺されて、買収や売却による影響はほぼ中立になっている、と述べている。

また、英国では、ソルベンシーII改革の一環として、ソルベンシーIIのリスクマージンの計算を修正するための法的文書が2023年12月に議会に提出され、6%の資本コスト率を4%に置き換え、生命保険契約にテーパリング要素を導入する規制が2023年12月31日から発効している。これによるリスクマージンの低下の影響は、対応するTMTPの低下によって一部相殺されているが、この改革により、例えば2023年末のグループのソルベンシーIIの株主カバー率が6%ポイント上昇していた。さらに、2024年6月30日から、マッチング調整要件の変更が発効して、サブ投資適格資産のマッチング調整上限が撤廃等されており、これによりカバー率がさらに約4%ポイント上昇した、と述べている。
AvivaのSCR比率推移の要因(会社ベース)
ソルベンシーII資本剰余及びその構成要素としての自己資本とSCRの変動要因は以下の図表の通りとなっている。2024年上期末のソルベンシー資本剰余は、2023年末から6億ポンド減少した。資本形成等により 9億ポンド増加したが、2023年の最終配当の支払い 6億ポンド、債務返済 6億ポンド、自社株買い 3億ポンド、等の影響が大きかった。
Avivaの自己資本とSCR等の推移の要因
(2) 感応度の推移
Avivaは、以下の図表で示しているケース以外の感応度についても、幅広い情報を開示している、なお、以下の図表において、2023年末以降の数値は、図表の脚注に記載されているように、金利、死亡率/罹患率、年金死亡率の変化幅が2022年末までとは異なっているので、注意が必要になる。

2021年末から2022年末にかけての感応度の変化については、事業の売却等によるポートフォリオの変更が落ち着いたこともあり、過去の年末間の変化に比べて、比較的安定したものだったが、例えば金利に対する感応度が低下していた。これに対して、2022年末以降の感応度は(図表における前提の差異を考慮すれば)大きな変化は見られない。
vivaの感応度の推移
(参考)感応度分析の限界
上記の表は、主要な仮定を瞬時に変更した場合の影響を示しており、他の仮定は変更されていない。実際には、仮定と他の要因の間には相関関係がある。これらの感応度は非線形であり、これらの結果からより大きな又はより小さな影響を内挿又は外挿することはできない。

感応度分析では、グループの資産と負債が積極的に管理されていることは考慮されていない。さらに、グループのソルベンシーIIのポジションは、実際の市場の動きが発生した時点で異なる場合がある。例えば、グループの財務リスク管理戦略は、市場変動へのエクスポージャーを管理することを目的としている。

投資市場が様々なトリガーレベルを超えて変化するにつれて、経営行動には、投資の売却、投資ポートフォリオの割当ての変更、保険契約者にクレジットされる配当の調整及びその他の保護行動の実行が含まれる可能性がある。

上記の感応度分析におけるその他の制限には、確実に予測することはできない近い将来の市場の変化の可能性に関するグループの見解を示している潜在的なリスクを示すための仮説的な市場の動きの使用及び全てのパラメーターが同じように動くという仮定が含まれる。

具体的には、

・感応度分析では、全ての期間で金利が平行移動すると仮定している。これらの結果は、平行でない金利の 動きの影響を計算するために使用されるべきではない。

・感応度分析は、全ての市場で同等の仮定の変化を前提としている。つまり、英国と英国以外の利回り曲線が同じ量だけ移動し、世界中の株式市場が同じように上昇又は下落する。

さらに、Aviva が保有する資産によって観察される動きは市場指数と同一ではないため、観察された指数の動きに感応度を適用する際には注意が必要となる。
(3) トピック
Avivaの2024年における主な資本取引等とその概要は、以下の通りであった。

2024年1月5日に、カナダ事業がOptiom O2 Holdings Inc(「Optiom」)を約1億ポンド(約1億7,000万カナダドル)での買収を完了したことを発表した。この買収は2023年11月27日に発表されている。

2024年3月4日に、2億4,200万ポンドの対価でProbitas Holdings (Bermuda) Limited(「Probitas」) を買収し、Lloyd’s市場に参入することを発表した。この取引によるグループのソルベンシーII株主カバー率への影響は、2023年12月31日時点で約3%ポイントの低下と推定されている。なお、7月10日に、この取引は必要な全ての承認を取得した上で、2億4,900万ポンドで完了したと発表された。

2024年3月18日に、Singapore Life Holdings Pte Ltd(「Singlife」)の株式及び2つの債務証券の住友生命への売却を完了し、総額9億3,700万ポンド(16億シンガポールドル)の収益を得たことを発表した。

2024年4月9日に、必要な全ての承認を取得した上で、American International Group, Inc(「AIG」)の上場子会社であるCorebridge Financial, Incから、英国で保障事業を展開するAIG Life Limited(「AIG Life UK」)を4億5,300万ポンドで買収したことを発表した。この買収は2023年9月25日に初めて発表されているが、AIG Life Limitedは、完全な個人及びグループ保障商品の一覧を提供しており、130万人の個人保障顧客と140万人のグループ保障加入員を抱えている。

2024年5月28日に、Telereal Pension Planの管財人(Trustee)による 1 億 3,000 万ポンドの一括購入年金制度の完全買収を完了したことを発表した。これにより、Aviva は、約 500 人の会員の確定給付債務を保険でカバーし、投資及び長生きリスクを排除する。

2024年6月19日に、Sibelco UK Occupational Pension Schemeとの1億6,500万ポンドの一括購入年金制度の完全買収を完了したことを発表した。2024年4月に完了するこの取引により、制度の約1,200人の加入者全員の給付が全額確保される。
 

(2024年09月04日「保険・年金フォーカス」)

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