コラム
2024年06月11日

投資部門別売買動向(24年5月)~事業法人が大幅買い越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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5月の日経平均株価は、米国株高や国内決算発表の株主還元拡充が好感される一方、日銀の金融政策修正への警戒感や米国の利下げ時期先送り観測により、方向感のない展開となった。3日夜の米雇用統計が予想を下回り、米利下げ先送り懸念が後退して米国株が上昇し、日経平均株価は7日に3万8,835円まで上昇した。しかし、翌8日には利益確定の売りが優勢となり、9日には3万8,073円まで下落した。その後は国内企業の今期業績予想が期待されたほど高くなかったこともあり指数は横ばいだったが、15日夜の米CPI発表で米利下げ期待が高まり、17日夜にはNYダウが史上初の4万ドルを突破、日経平均株価も20日に3万9,000円台を回復し、23日には3万9,103円まで上昇した。しかし、月末にかけては再び下落し、3万8,487円で終えた。このように日経平均株価が推移する中、事業法人、海外投資家が買い越す一方で、個人が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2024年5月(4月30日~5月31日)の投資部門別の売買動向をみると、事業法人は現物と先物の合計で9,665億円の買い越しと、5月では最大の買い越し部門であった。
図表2 事業法人は36カ月連続買い越し
また、5月は海外投資家も現物と先物の合計で803億円の買い越しだった。従来の買い越し/売り越し額と比較すると買い越し額は1,000億円未満と小幅であり、週別でも、特に目立った動きは見られなかった。
図表3 海外投資家は小幅買い越しも大きな動きは見られず
一方で、個人は現物と先物の合計で5月に5,534億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。4月は1兆円を超えて買い越したが、5月は月を通して売却に転じた個人が多かったようだ。
図表4 個人は2カ月ぶりに売り越し
図表5は、2024年1月から5月の各投資部門別の現物と先物の売買動向を、週次累積で示したものである。
図表5 事業法人が最大の買い越し部門に
2024年1月から2月にかけて、主に海外投資家が現物と先物の合計で買い越していたが、3月に日経平均株価が4万円を超えて以降は、利益確定売りが見られるようになった。一方で、1月から2月に売り越していた個人は、買い遅れ懸念もあってか、3月から4月は買い越しに転じていた。しかし、5月になると、日米の金融政策に対する不透明感が払拭されず、海外投資家も個人も動きづらい状況となったようだ。
 
そのなかで、自社株買いが中心である事業法人は、36カ月連続で買い越しており、2024年1月から5月の期間で最大の買い越し部門となった。2024年1月から5月までの自社株買い設定金額(TOPIX構成銘柄)は既に9兆円に達しており、特に5月の設定金額は5.8兆円と過去最高を記録した。株主還元や政策保有株の解消への動きが続くなか、自社株買いの実施に伴う事業法人の買い越しは今後も続くと予想される。
 
 

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(2024年06月11日「研究員の眼」)

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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