2024年05月16日

欧州大手保険Gの2023年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

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6|Zurich
(1)全体の状況
2023年の新契約CSMNB CSM13は、2022年に比べて5%増加して、1,037百万ドルとなった。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約CSM/新契約年換算保険料)は、あまり望ましくないビジネスミックスにより、2022年に比べて1.1%ポイント(会社公表数値による)低下して、6.3%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBPは、EMEA、アジア・太平洋、中南米における成長により、2022年に比べて24%(為替や買収や売却の調整を行った「同一ベース」では26%)増加して、16,384百万ドルとなった。
生命保険事業の新契約の状況
 
13 新契約CSMは、外部再保険控除後で非支配持分の影響前の数値(PAA(保険料配分アプローチ)が適用される短期契約やIFRS第9号が適用される投資契約は含まれていない)。
(2) 新契約マージン(対PVNBP)等の地域別状況
PVNBP、新契約CSM及び新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

PVNBPは、EMEA(欧州、中東、アフリカ)において、12%増加(同一ベース、以下同様)した。イタリアとスイスにおける販売量の低下とそれらの地域における割引率の上昇によるマイナスの影響があったものの、ドイツとスペインにおけるユニットリンク商品の販売好調に加えて、Banco Sabadellとのジョイントヴェンチャーによって引き受けられたスペインにおける個人貯蓄商品の販売量の大幅な増加を反映した。北米では、法人契約の低下により、36%減少した。アジア・太平洋では、昨年の低迷からの反転として、日本における保障商品の販売が好調であったこととオーストラリアで法人契約の増加の恩恵を受けたことにより、44%増加した。中南米では、主としてBanco Santanderとのジョイントヴェンチャーによるブラジルでの販売の増加により、61%増加した。

新契約マージンは、2022年に比べて、各地域で低下した。なお、アジア・太平洋では11.1%と引き続き高い水準を維持しているが、北米では▲1.1%、中南米では2.4%と低水準になっている。

新契約CSMは、新契約マージンの低下にも関わらず、好調な販売量により、5%増加した。

なお、PVNBPや新契約CSMには、PAA(保険料配分アプローチ)が適用される短期契約やIFRS第9号が適用される投資契約は含まれていない。短期契約からの保険収益は、主として中南米での保障契約に関連しているが、9%増加した。投資契約の手数料収益は、主としてEMEAからで、2022年がマイナスの市場実績の影響を受けていたこともあり、19%増加した。
新契約マージン(対PVNBP)等の地域別状況/新契約のPVNBP、新契約CSM及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
(参考)Prudential plc14
(1)全体の状況
2023年の新契約利益(New Business ProfitNBPは、2022年に比べて43 %増加(為替固定ベースでは45%増加、以下同様)して、3,125百万ドルとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(対PVNBP(=新契約利益/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2022年に比べて1%ポイント(1%ポイント)上昇して11%となった。また、新契約マージン(対APEは、2022年に比べて3%ポイント上昇(3%ポイント上昇)して、53%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBPは、2022年に比べて28%増加(30%増加)して28,737百万ドルとなり、新契約年換算保険料(APEは、34%増加(37%増加)して、5,876百万ドルとなった。
生命保険事業の新契約の状況
 
14 Prudentialについては、2019年10月に、アジアと米国で保険事業を展開するPrudential plcと欧州で保険事業と投資管理事業を展開するM&G plcに分割され、さらに、Prudential plcは、2021年9月に米国事業であるJackson Financial Inc. をグループから分離した。その意味で、Prudential plcは欧州の保険会社ではないが、アジアにおいて重要な位置付けを有している会社であることから、(参考)として、その数値を掲載している。
(参考)新契約利益とIFRS第17号新契約CSMとの調整
新契約利益は、EEV原則に従って計算され、その年に販売された契約につき、税引後ベースで表示されている。新契約利益とIFRS新契約CSMとの調整については、以下のように説明されている。

1) EEV は、リスク割引率でリスクを考慮した上で保有される実際の資産の期待収益に基づく「リアルワールド」の経済前提を使用して計算される。IFRS第17号では、「リスクニュートラル」の経済前提が適用され、資産は収益を得ることが想定され、キャッシュ・フローはリスクフリー+流動性プレミアム(該当する場合)で割り引かれる。どちらの指標も、現在の金利に基づいて期末ごとにこれらの前提を更新する。

2) EEVでは、既存契約に付随する追加又は新規特約、商品アップグレード及び追加から生じる新契約利益は、当期の新契約利益として報告される。IFRS第17号では、そのような特約の販売やアップグレードによる新契約利益は、既存契約の経験差異として扱うことが求められている。

3) IFRS第17号の新契約 CSMは税引前、EEVの新契約利益は税引後。 したがって、IFRS第17号の新契約CSMにかかる関連税が再度追加される。以下の図表の他の全ての調整項目は、関連税を除いて表示されている。
新契約利益とIFRS新契約CSMとの調整
(2) 新契約年換算保険料(APE)の地域別内訳
Prudentialは、アジアの主要各国・地域において、有意な新契約年換算保険料(APE)を計上してきている。2023年は、APEが為替固定ベースで37%増加して、5,876百万ドルとなり、2019年のパンデミック前の水準である5,161百万ドルを超えた。

Prudentialにとって、新契約利益とEV(エンベディッドバリュー)において、過去において最も重要な市場は香港だったが、2020年の業績が、香港の中国本土の個人への販売が中国本土との国境の閉鎖により大幅に削減されたことから、大きな影響を受けた。地域別の新契約年換算保険料(APE)では、2021年からは中国に抜かれ、2022年において香港はシンガポールに次いで第3位となっていた。ところが、2023年は香港での業績が、パンデミック関連の制限が全て解除されたこと、特に香港との国境が再開されたことを受けて、地域や中国本土からの需要を推進力として、大幅に向上して、再びトップになっている。

なお、各地域における市場シェアやランキングの状況については、前回のレポートで報告している。

2022年との比較では、香港において、多様なチャネルと商品を通じて、2022年の4倍近くの新契約APEとなったほか、台湾でも大幅に進展し、22の市場のうちのインドネシアを含む12の市場で二桁成長した。一方で、中国やベトナムにおいては大幅なマイナス進展となった。

なお、中国本土での事業は、中国国営のリーディング・コングロマリットであるCITICとの50/50のジョイントヴェンチャーであるCPLで行われている。中国の新契約利益は、販売量の低下と不利な経済の影響を受けて、40%減少した。代理店チャネルの成長により一部相殺されたが、銀行窓販チャネルの販売が、チャネルの経費管理に関する規制改革の影響を受けて大きく減少した。
新契約APEの地域別内訳/新契約APEの主要地域別内訳(アジアの主要国)
(3) 新契約マージン等の地域別状況 
新契約利益(NBP)、APE、PVNBP、新契約マージン(対APE)及び新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、次ページの図表の通りである。

NBPでは、香港がトップで、第2位がシンガポール、第3位が中国となっている。2022年に比べて、香港では大幅に増加し、シンガポールでは若干減少したのに対して、中国では前年の6割を下回る水準となっている。

中国での新契約マージン(対APE)は、金利やその他の経済動向の影響を除くと、商品提案のバランスを調整するための取り組みの結果、6%ポイント増加したが、経済的影響を含めると、2%ポイント減少した。

なお、Prudentialは、中国(持株会社CPLを通じて)、香港(マカオ支店を含む)、台湾の中華圏(Greater China region)において、大きなプレゼンスを有しているが、保険料収入が12,859百万ドルでグループ全体26,221百万ドルの49%、NBPが1,870百万ドルでグループ全体3,125百万ドルの60%を占めており、グループ内での中華圏の位置付けが極めて高くなっている。
新契約マージン等の地域別状況

(2024年05月16日「基礎研レポート」)

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