2024年05月09日

2024年4月、グローバル株式市場は反落

金融研究部 准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任 原田 哲志

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1――2024年4月、グローバル株式市場は反落

2024年4月、グローバル株式市場は反落した。米国での利下げ期待の後退などが株式市場の下落要因となった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)のリターンは2024年4月 ▲3.3%(米ドル建グロス配当込み)1、過去1年(2023年5月-2024年4月)では+18.0%となっている(図表1)。

先進国と新興国を比べると、先進国が下落する一方で新興国は小幅に上昇した。先進国(MSCI  World Index)が▲3.7%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+0.4%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が▲3.6%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が▲3.0%とバリュー優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が▲3.2%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が▲3.8%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が▲4.1%と大型株が優位となった (図表4)。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限りリターンは米ドル建グロス配当込みを示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

2024年4月、国別に見ると中国や新興国が上昇する一方で、先進国は下落した国が多かった(図表5)。トルコ(+14.3%)、アルゼンチン(+9.8%)、パキスタン(+7.5%)がリターンが高かった。一方で、エジプト(▲11.8%)、インドネシア(▲8.5%)、イスラエル(▲7.5%) がリターンが低かった。主要国について見ると、米国(▲4.1%)、中国(+6.6%)、ドイツ(▲3.7%) 、日本(▲4.9%)となった。

米国では、利下げ期待の後退からIT・ハイテクなど成長株を中心に下落、日本やドイツなども下落した。一方で、中国は政府の経済支援策への期待などから上昇した。

大幅な下落となったエジプトでは、3月に当局が為替相場を為替相場を市場に委ねる方針に転換して以来株式市場は下落が続いている。

トルコでは3月に中央銀行が政策金利を50%に引き上げ、従来の独自の金融政策からの転換によるインフレの抑制が期待されている。
図表5 各国の株式市場のリターン
業種別に見ると、 家庭用品・パーソナル用品(+1.1%)、公益事業(+1.1%)、エネルギー(+0.1%)がリターンが高かった。一方で、ソフトウェア・サービス(▲7.8%)、運輸(▲6.4%)、ヘルスケア機器・サービス(▲5.5%) がリターンが低かった(図表6)。

米国での利下げ期待の後退からソフトウェア・サービスの成長株が下落した一方で、家庭用品・パーソナル用品や公益事業など安定性が高い業種が上昇した。
図表6 グローバル株式市場の業種別リターン

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価は企業毎にまちまちだった (図表7)。時価総額上位30位の企業では、テンセント(+14.3%) 、アルファベット(+7.9%)、テスラ(+4.3%)のリターンが高かった。一方で、ホーム・デポ(▲12.9%)、メタ(▲11.4%)、オラクル(▲9.1%) のリターンが低かった。テンセントは2023年決算を公表、海外向けゲームやオンライン広告が業績牽引し増収増益となったことが好感された。ホーム・デポは利下げ期待の後退による住宅や住宅資材需要への悪影響が懸念され下落した。
図表7 世界の主要企業の株価動向

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は3月まで上昇が続いていたが、4月は反落したことから今後の展開が注目される。国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しにおいて世界経済の中長期的な成長鈍化のリスクを指摘している2。生産性や成長力の向上には生産性の高い企業への資本と労働力の適切な配分や人工知能の活用が必要だが、地経学的な分断が制約となる。これに加えて高水準の公的債務は、将来の成長が見込まれる産業への政府支出や投資を妨げる可能性があるとしている。また、中国など新興国のGDPが世界に占める割合が増加していることから、世界経済への影響は大きくなり続けていると指摘している。世界経済の構造変化が継続していく中、こうした要因がグローバル株式市場に与える影響に引き続き注視していきたい。
 
2 国際通貨基金, 「中期的成長を回復させるために、世界は生産性の改革を最優先すべきである」, 2024年4月
https://www.imf.org/ja/Blogs/Articles/2024/04/10/world-must-prioritize-productivity-reforms-to-revive-medium-term-growth
 
 

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(2024年05月09日「基礎研レター」)

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金融研究部   准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、ESG

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

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