コラム
2024年04月09日

投資部門別売買動向(24年3月)~海外投資家は売り越し、個人は買い越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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3月の日経平均株価は、月初は4日に4万円を超える好調なスタートも、日銀の金融政策正常化前倒し観測が浮上し、7日に4万円を割り込み、3万9,598円まで下落した。さらに、米ハイテク株の下落や、一時1ドル147円台まで円高が進行したことを嫌気して、13日には3万8,695円まで下落した。中旬以降は、日銀政策決定会合の結果が事前予想の範囲内であったため、安心感から買いが優勢となり、日経平均株価は19日に再び4万円を突破し、米半導体関連株の下落に歯止めがかかったことや、円安が進んだことも手伝って、22日には4万888円まで上昇した。その後は、3月末配当をにらんだ売買や、一時1ドル152円に迫る約34年ぶりの円安を受け為替介入への警戒感が高まったことから、指数は方向感のない展開となり月末は4万369円で終えた。このように日経平均株価が推移するなか、個人、事業法人が買い越す一方で、海外投資家、信託銀行が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2024年3月(3月4日~3月29日)の投資部門別の売買動向をみると、個人が現物と先物の合計で5,264億円の買い越しと、3月最大の買い越し部門であった。図表2は、個人の売買動向を現物と先物に分けて集計したものである。週次では、日経平均株価が下落した第1,2,4週に買い越した。3月の配当取りを狙った動きもあるが、個人は2023年11月以降売り越しが優勢となっていたため、日経平均株価が史上最高値を更新するなか、買い遅れ懸念もあり、3月は指数が下落した局面では買い越しに転じたと考えられる。
図表2 個人は2023年10月以来の買い越し
また、3月は事業法人も現物と先物の合計で1,051億円の買い越しと、2021年6月から34カ月連続で買い越した。
図表3 事業法人は34カ月連続買い越し
一方で、海外投資家は現物と先物の合計で3月に1兆6,121億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。現物は276億円の売り越し、先物は1兆5,845億円の売り越しと、先物の売り越しが大きかったものの、現物も小幅に売り越しとなった。海外投資家は、1~2月に現物を大幅に買い越しており、中長期資金の流入は3月は一旦落ち着いたようである。
図表4 海外投資家は先物を中心に売り越し
また、3月は信託銀行も現物と先物の合計で4,881億円の売り越しとなった。日経平均株価が上昇するなか、利益確定の売りが引き続き優勢となったようだ。ただし、例年、年度末には配当金の再投資などにより買い越す傾向が見られており、今年も第3週(3月18日~22日)および第4週(3月25日~29日)は買いが優勢となった。
図表5 信託銀行は3カ月連続の売り越し
図表6は、2023年2月末を基準値100として、3月の代表的な指数の推移をまとめたものである。TOPIXラージ70、ミッド400といった大型株、中型株がTOPIXをアウトパフォームした。1~2月はTOPIXコア30の超大型株が指数をアウトパフォームしており、海外投資家が大型株を中心に買い越している様子が確認できた。3月も引き続き時価総額の大きい企業の買いが優勢ではあったものの、過去2カ月と比較すると、物色は中型株まで拡がっていたようだ。
図表6 TOPIXコア30の突出した買いは一旦落ち着いたか
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2024年04月09日「研究員の眼」)

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