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複数の国にまたがる年金基金の状況(欧州2022年末)-EIOPAが公表した報告書(2023年11月)の紹介
保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1――はじめに
1 2023 Cross Border IORPs (EIOPA 2023.11.27)
https://www.eiopa.europa.eu/system/files/2023-11/Report%20on%20cross-border%20IORPs%202023.pdf
2――EUにおける、クロスボーダー年金基金の状況
ここでいう、クロスボーダー年金基金は、スポンサー企業と基金加入者や年金受給者との関係において、自国以外の国の社会・労働に関する法律に準拠する必要がある年金基金のことを指す。
EEA(欧州経済領域 脚注2参照)内のクロスボーダー年金基金の数は、2022年末時点に31あり、2021年末と同数である。中身としては、ベルギーの年金基金が1つ減少、ラトビアの年金基金が1つ増加した。
年金基金全体の規模については、加入者・年金受給者あわせて100,000人(2021年末:93,000人)で、106億ユーロの資産(2021年末:130億ユーロ)がある。加入者等は前年に比べて若干増加しているが、資産規模は減少している。
EEAには30か国が加盟しているが、クロスボーダー年金基金の本拠地(以降、本国と呼ぶ)となっている国は8か国(2021年末の7か国から、ラトビア1か国増)で、依然として少数の国に集中して存在している。その受入国は19か国で、あらたにエストニアが(ラトビアからの受入国として、)加わっている。
2 リヒテンシュタインはEU加盟国ではないが、EEA加盟国であり、今回の調査に含まれている。
(参考)現在の欧州の主要な枠組み(外務省HPによる。)
EU加盟国27か国 オーストリア ベルギー ブルガリア クロアチア キプロス チェコ デンマーク エストニア フィンランド フランス ドイツ ギリシャ ハンガリー アイルランド イタリア ラトビア リトアニア ルクセンブルク マルタ オランダ ポーランド ポルトガル ルーマニア スロバキア スロベニア スペイン スウェーデン
EEA(欧州経済領域) 30か国 上記27か国に加え リヒテンシュタイン アイスランド ノルウェー
EFTA(欧州自由貿易連合) 4か国 リヒテンシュタイン アイスランド ノルウェー スイス
取り扱う年金のタイプを大きく分けると、確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)とがある。これについては、2020年の英国のEU離脱以来、EU内の様相は変化している。英国の小規模のDC型年金基金が多く含まれていたからであるが、英国のEU離脱後は、DCは件数に占める割合が小さくなり、特に資産ベースでみるとDBの資産規模が大きいため、逆にDCはわずかだった。
実際、2022年末における状況をみると、基金数ベースで31基金の内訳はDC型13、DB型12、混合型が6であり、資産ベースでみるとDBがまだ85%程度を占めている。そういった意味ではDBが依然として主流であり、近年DCが増加傾向にあるようではあるが、不確定要素も大きいので今後の動向をさらにみていく必要がある。
また、複数の雇用主によるクロスボーダー年金基金が近年増加している。クロスボーダー年金基金のほぼ半数が、複数の雇用主に年金制度を提供している。
こういう状況もあってか、クロスボーダー年金基金のスポンサー企業(その多くをリヒテンシュタインの企業が占めている。)が約8%増加している。(2021年の約40%増に比べると穏やかにはなっているが。)
クロスボーダー年金基金の資産については既に触れた通り106億ユーロ(2021年末:130億ユーロ)であった一方、負債の方は合計で96億ユーロ(2020年末:114億ユーロ)であった。
クロスボーダー年金基金のうちDBにおいては、保有資産が負債(責任準備金)をカバーできているかを常時チェックする必要があるが、DBを有する5つの本国で、その条件は満たされている。
3――おわりに
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03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2024年02月27日「保険・年金フォーカス」)
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