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2024年02月01日
米国・日本・欧州における外資系生命保険会社のプレゼンス-最近の日米欧間の生命保険会社の相互市場参入はどんな状況にあるのか-
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4―欧州における外資系生命保険会社のプレゼンス
1|全体の状況
欧州における外資系生命保険会社のプレゼンスを見る上においては、米国や日本との関係では、欧州あるいはEU全体での外資系あるいはEU域外会社の状況を把握できればよいが、データが限定されていることから、ここでは取得可能なデータに基づいて報告する。
欧州主要国における外資系保険会社のプレゼンスをOECD(経済協力開発機構)のデータから見てみる。ここで、会社数は生命保険会社及び生損保兼営会社のみを対象にしているが、収入保険料は生命保険・損害保険等合算の数値となっている。
各国とも外国及び外資系保険会社の構成比が収入保険料で2割弱~3割強程度あるが、ここでの外資系保険会社は、自国以外の欧州各国からの保険会社が殆どである。北米の大手保険会社等も、欧州各国に子会社を有して生命保険事業を展開してはいるが、各国における上位保険会社のシェア等から判断すると、今のところ生命保険市場においては大きなプレゼンスを有していない。
欧州における外資系生命保険会社のプレゼンスを見る上においては、米国や日本との関係では、欧州あるいはEU全体での外資系あるいはEU域外会社の状況を把握できればよいが、データが限定されていることから、ここでは取得可能なデータに基づいて報告する。
欧州主要国における外資系保険会社のプレゼンスをOECD(経済協力開発機構)のデータから見てみる。ここで、会社数は生命保険会社及び生損保兼営会社のみを対象にしているが、収入保険料は生命保険・損害保険等合算の数値となっている。
各国とも外国及び外資系保険会社の構成比が収入保険料で2割弱~3割強程度あるが、ここでの外資系保険会社は、自国以外の欧州各国からの保険会社が殆どである。北米の大手保険会社等も、欧州各国に子会社を有して生命保険事業を展開してはいるが、各国における上位保険会社のシェア等から判断すると、今のところ生命保険市場においては大きなプレゼンスを有していない。
2|親会社国別の状況
親会社国別の状況については、データの制約上、ドイツの収入保険料ベースのみで見てみる。ここでは、判明ベースの直近である2020年のデータに基づいて報告する。
ドイツでは、他のEU諸国と同様、EU及びスイス資本の生命保険会社が重要な位置付けを占めており、これらの会社の収入保険料は全体の24.9%を占めている。
なお、以下の図表数値はあくまでも、ドイツに設立された保険会社のみを対象とした数値であるが、これ以外に、2021年度ベースで、ドイツで支店を設立している会社が17社(EEA(欧州経済地域)5から16社、それ以外の国から1社)、(EUのサービス提供の自由に基づいて)外部からのサービス提供により、ドイツで保険契約を獲得しているEEAからの保険会社が、生損保合計で700社程度存在している。こうした形での外国保険会社による収入保険料が、(直近公表ベースの)202年の生命保険で、3,997百万ユーロ(収入保険料の4.0%、その内訳:支店設立 2,427百万ユーロ、外部からのサービス提供 1,570百万ユーロ)となっている。
これらを合わせると、外国及び外資系生命保険会社が、収入保険料において3割弱程度のシェアを占めていることになる。
親会社国別の状況については、データの制約上、ドイツの収入保険料ベースのみで見てみる。ここでは、判明ベースの直近である2020年のデータに基づいて報告する。
ドイツでは、他のEU諸国と同様、EU及びスイス資本の生命保険会社が重要な位置付けを占めており、これらの会社の収入保険料は全体の24.9%を占めている。
なお、以下の図表数値はあくまでも、ドイツに設立された保険会社のみを対象とした数値であるが、これ以外に、2021年度ベースで、ドイツで支店を設立している会社が17社(EEA(欧州経済地域)5から16社、それ以外の国から1社)、(EUのサービス提供の自由に基づいて)外部からのサービス提供により、ドイツで保険契約を獲得しているEEAからの保険会社が、生損保合計で700社程度存在している。こうした形での外国保険会社による収入保険料が、(直近公表ベースの)202年の生命保険で、3,997百万ユーロ(収入保険料の4.0%、その内訳:支店設立 2,427百万ユーロ、外部からのサービス提供 1,570百万ユーロ)となっている。
これらを合わせると、外国及び外資系生命保険会社が、収入保険料において3割弱程度のシェアを占めていることになる。
5―まとめ
以上、米国、日本及びドイツを中心とする欧州における外資系生命保険会社のプレゼンスを見てきた。それぞれの国における過去からの経緯等もあり、外資系生命保険会社のプレゼンスの現状は異なっている。ただし、グローバル化の流れの中で、どの国においても外資系生命保険会社のプレゼンスは大きな意味合いを有するものとなってきている。
一方で、米国、日本、欧州という枠組みで考えると、以前から、米国市場では欧州保険グループが、日本市場では米国保険グループが大きなプレゼンスを有する形になってきていたが、日本の生命保険会社・グループは米国、欧州いずれの市場においても有意なプレゼンスを確保できていない状況にあった。ただし、2010年代以降の一連の日本の大手生命保険会社による米国の生命保険会社買収等により、日本の米国市場におけるプレゼンスが一定程度の意味合いのあるものとなってきている。この流れが今後どのようになっていくのかについて、中長期的な動向が気になるところである。
また、海外市場という意味では、今後はアジアや中南米等の市場の拡大が期待されており、これらの市場への対応がグループ全体の成長確保への鍵になるとも考えられている。今後はこうした市場も含めた保険会社の海外展開について注視していくこととしたい。
さらに、このレポートではあくまでも収入保険料や資産等の規模の面からのプレゼンスの状況を見てきたが、より重要なことは、投下した資本等に対応して高い収益を上げているのか否か、ということである。欧州大手保険グループの海外事業展開における収益状況等については、これまでの基礎研レポートで毎年報告してきている。そのレポートの中で報告してきたように、欧州大手保険グループはグルーバルな市場において、積極的に買収等を行いつつも、一方で既存事業の再編や売却も行ってきている。
日米欧の保険グループの海外市場への事業展開については、大変興味深いテーマであることから、今後も定期的に注視していくこととしたい。
一方で、米国、日本、欧州という枠組みで考えると、以前から、米国市場では欧州保険グループが、日本市場では米国保険グループが大きなプレゼンスを有する形になってきていたが、日本の生命保険会社・グループは米国、欧州いずれの市場においても有意なプレゼンスを確保できていない状況にあった。ただし、2010年代以降の一連の日本の大手生命保険会社による米国の生命保険会社買収等により、日本の米国市場におけるプレゼンスが一定程度の意味合いのあるものとなってきている。この流れが今後どのようになっていくのかについて、中長期的な動向が気になるところである。
また、海外市場という意味では、今後はアジアや中南米等の市場の拡大が期待されており、これらの市場への対応がグループ全体の成長確保への鍵になるとも考えられている。今後はこうした市場も含めた保険会社の海外展開について注視していくこととしたい。
さらに、このレポートではあくまでも収入保険料や資産等の規模の面からのプレゼンスの状況を見てきたが、より重要なことは、投下した資本等に対応して高い収益を上げているのか否か、ということである。欧州大手保険グループの海外事業展開における収益状況等については、これまでの基礎研レポートで毎年報告してきている。そのレポートの中で報告してきたように、欧州大手保険グループはグルーバルな市場において、積極的に買収等を行いつつも、一方で既存事業の再編や売却も行ってきている。
日米欧の保険グループの海外市場への事業展開については、大変興味深いテーマであることから、今後も定期的に注視していくこととしたい。
(2024年02月01日「保険・年金フォーカス」)
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