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- 中国経済の見通し-2023年は前年比+5.2%。24年は同+4.6%、25年は同+4.4%と段階的に減速
2023年11月24日
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5.中国経済の見通し

10月までの実績や経済政策を踏まえ、今後の経済成長率については、2023年が前年比+5.2%、24年が同+4.6%、25年が同+4.4%と予想している(図表-17)。
2023年に関しては、内需、外需の改善ペースが一進一退の状況にあるものの、9月までの実績は、想定に比べれば好調であった。当年は、22年中にとられたゼロコロナ政策の影響による反動もあり、不動産市場の急速な悪化といったショックが発生しなければ、上述の通り+5%前後の成長率目標の達成は難しくないと考えられる。
24年以降は、4%台の潜在成長率前後で推移するだろう。24年に関しては、国債増発の効果が期待できる。地方政府財政悪化による下振れ懸念は残るものの、年初から少なくとも年央にかけて、インフラ投資の伸びが持ち直すと予想される。他方、不動産市場に関しては、後述の通り政策対応が徐々に積極化しているが、それでもデベロッパーの資金繰りに対する消費者の不安は一朝一夕には払拭されないとか考えられ、販売の低迷が続く可能性は高い。影響の度合いは23年に比べて弱まると考えられるものの、消費や投資などへの下押しが続くことになるだろう。
25年に入ると、不動産販売が前年比増に転じると予想しているが、デベロッパーの在庫処理圧力が依然残存していることが予想されるため、不動産開発投資は引き続き抑制されるとみている。ただし、24年に国債増発の効果で加速したインフラ投資が減速するだろう。また、デレバレッジの取り組みの軸足が、足元の不動産デベロッパーから地方政府債務へと移っていく可能性がある(詳細は後述)。これに伴い、地方政府融資平台向けの不良債権処理圧力が強まり、経済を下押しすることも考えられる。
2|注目点
主な注目点としては、従来同様、(1)不動産市場の悪化リスクや、(2)地方政府財政の悪化リスクといった国内要因のほか、(3)地政学リスクといった海外要因が挙げられる。
(1)不動産市場を巡っては、23年10月に開催された中央金融工作会議において、金融リスク防止・解消に関する文脈の中で「様々な所有制の不動産企業の合理的な資金需要を満たす」とされた。業績不振が目立つ民間デベロッパーを念頭に、資金繰りをしっかりモニタリングし、必要な支援は行う構えのようだ。その後、地方政府による大手デベロッパーに対する資金繰り支援の動きが出てくるなど、不動産市場安定化の軸足は、需要促進からデベロッパー支援へと移りつつあるようだ。このように、政策対応は徐々に積極化しており、総合的にみればやや改善の方向に向かっているといえるが、個別のデベロッパーに関する動きでしかなく依然予断を許さない。
(2)地方政府財政の悪化に関しては、融資平台が抱える隠れ債務の増加抑制と処理が焦点となる。足元では、地方政府による借換債(特殊再融資債)の発行を通じて、融資平台から地方政府への付け替えが進められているが、上述の中央金融工作会議では、「地方政府債務リスクの防止・解消に関する長期的なメカニズムを構築する」と述べられており、今後、様々な動きが出てくるだろう。人民銀行総裁の発言によれば、引き続き、地方政府への付け替えを進めるほか、リスケやロールオーバーにより時間稼ぎをしながら、徐々に債務の処理を進めていく考えのようだ。「債務負担の重い地方に対しては、必要に応じて流動性支援を行う」とされ、細心の注意を払いながら対策を進めるとみられるが、その一方で「新規の政府投資プロジェクトを厳しくコントロールする」とも述べられている。こうした対応がインフラ投資を過度に抑制して実体経済を下押ししないか、また、債務処理の過程で債券デフォルトの多発などが金融市場の混乱を招かないか等、足元の不動産不況と同様、今後のリスクとして浮上してくる可能性がある。
(3)に関して、2024年は、世界各国・地域で重要な選挙が行われる予定であり、米国におけるトランプ氏再選による対中規制の急激な強化など、外的リスクが立ち現れる可能性がある。また、先進国のデリスキングは、選挙結果にかかわらず強まるとみられるが、新たにどのような規制が設けられるのか等、先行きは不透明だ。デリスキングの影響は、景気へのショックというよりは、長期的な成長力の阻害という面が強いと考えられるが、今後の動向には引き続き注視が必要だ。
主な注目点としては、従来同様、(1)不動産市場の悪化リスクや、(2)地方政府財政の悪化リスクといった国内要因のほか、(3)地政学リスクといった海外要因が挙げられる。
(1)不動産市場を巡っては、23年10月に開催された中央金融工作会議において、金融リスク防止・解消に関する文脈の中で「様々な所有制の不動産企業の合理的な資金需要を満たす」とされた。業績不振が目立つ民間デベロッパーを念頭に、資金繰りをしっかりモニタリングし、必要な支援は行う構えのようだ。その後、地方政府による大手デベロッパーに対する資金繰り支援の動きが出てくるなど、不動産市場安定化の軸足は、需要促進からデベロッパー支援へと移りつつあるようだ。このように、政策対応は徐々に積極化しており、総合的にみればやや改善の方向に向かっているといえるが、個別のデベロッパーに関する動きでしかなく依然予断を許さない。
(2)地方政府財政の悪化に関しては、融資平台が抱える隠れ債務の増加抑制と処理が焦点となる。足元では、地方政府による借換債(特殊再融資債)の発行を通じて、融資平台から地方政府への付け替えが進められているが、上述の中央金融工作会議では、「地方政府債務リスクの防止・解消に関する長期的なメカニズムを構築する」と述べられており、今後、様々な動きが出てくるだろう。人民銀行総裁の発言によれば、引き続き、地方政府への付け替えを進めるほか、リスケやロールオーバーにより時間稼ぎをしながら、徐々に債務の処理を進めていく考えのようだ。「債務負担の重い地方に対しては、必要に応じて流動性支援を行う」とされ、細心の注意を払いながら対策を進めるとみられるが、その一方で「新規の政府投資プロジェクトを厳しくコントロールする」とも述べられている。こうした対応がインフラ投資を過度に抑制して実体経済を下押ししないか、また、債務処理の過程で債券デフォルトの多発などが金融市場の混乱を招かないか等、足元の不動産不況と同様、今後のリスクとして浮上してくる可能性がある。
(3)に関して、2024年は、世界各国・地域で重要な選挙が行われる予定であり、米国におけるトランプ氏再選による対中規制の急激な強化など、外的リスクが立ち現れる可能性がある。また、先進国のデリスキングは、選挙結果にかかわらず強まるとみられるが、新たにどのような規制が設けられるのか等、先行きは不透明だ。デリスキングの影響は、景気へのショックというよりは、長期的な成長力の阻害という面が強いと考えられるが、今後の動向には引き続き注視が必要だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年11月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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三尾 幸吉郎

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