2023年11月02日

11月5日は「津波防災の日」-年にいくつかある防災関係の日

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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1――津波防災の日(11月5日)

1津波防災の日の制定
東日本大震災(2011年3月11日)では、津波や津波からの避難方法を知らないために多くの方が犠牲になったという。それを教訓として「津波対策の推進に関する法律」が2011年6月に施行され、その中で11月5日が「津波防災の日」と定められた。

11月5日は、安政元年11月5日(1854年12月24日)、安政南海地震が起こった日である。これは紀伊半島から四国沖を震源地としたマグニチュード8.4の地震で、西日本を中心に大きな被害をもたらした。この時、和歌山を津波が襲った際に、濱口梧陵なる人物が、収穫したばかりの稲の束に火をつけて、暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に誘導し避難させたという逸話に基づいている。
2世界津波の日の制定
「第3回国連防災世界会議」(2015.3)や「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015.9)のフォローアップとして、2015年12月の国連総会で、日本を始めとする142ヵ国の満場一致により、11月5日を「世界津波の日」(英字表記:World Tsunami Awareness Day)とすることが決まった。さらに2017年3月には、先の「津波対策の推進に関する法律」の中で、あらたにできた「世界津波の日」の記載と、国際協力の推進に資するよう配慮する旨の規定が追加された。また、その趣旨に相応しい行事が実施されるよう努めることといった規定も追加された。
3国・地方公共団体・企業等の取組みなど
11月5日やその前後の期間には、津波防災の意識の向上と、適切な避難行動の定着を目的として、毎年、国や地方公共団体あるいは企業等において様々なイベントや地震・津波防災訓練が行われる。

特に防災を担当する内閣府においては11月5日に講演等のスペシャルイベントが開催される1。また日本各地において、地方自治体とともに防災訓練を実施する。

その他に、国の134の機関でも、シェイクアウト訓練、津波避難訓練、避難所の開設・運営訓練、職員の安否確認訓練、情報伝達訓練、パネル展示等が実施される予定とされている。

さらに地方公共団体(291)においても同様の訓練に加え、災害対策本部運営訓練、ワークショップ、シンポジウムなどが予定されている。
 
この中で「シェイクアウト訓練」というのは、耳慣れない用語かもしれないので補足する。

これは2008年に米国で始まった地震防災訓練であり、名前には「地震をぶっとばせ!」という意味が込められている。あえて日本語で意訳すれば「一斉防災訓練」となるらしい。

内容は、「命を守る3動作」~(1)姿勢を低くする(Drop)。(2)頭・体を守る(Cover)。(3)揺れが収まるまでじっとしている(Hold on)。~を1分間一斉に行うことである。

地震の際にケガをするのは、地震により移動した家具等によることが多く、この3点に気を付けることが重要なことから、ポイントを絞ったものとしている。

訓練は、あらかじめ決められた日時に、事前に参加登録した人たちが、放送塔などからの「訓練開始」を合図に、命を守るこの3動作を1分間行い、「訓練終了」の合図で終わる。誰でもどこでも気軽に簡単に行えるため参加もしやすい。
 
さて、企業等のレベルにおいても、43の企業や業界団体等において、シェイクアウト訓練、津波避難訓練、避難誘導避難、情報伝達訓練、社員の安否確認訓練等の実施が予定されている。

どんな企業等でも災害訓練は欠かせないものではあるが、こうしたイベントを行うのは、研究所、高速道路、鉄道、海運、電力、商工会、放送局などであり、特に人の集まる事象や比較的公共性の高い事業に関わる会社・団体が率先してこうしたイベントを行うことで、啓蒙活動や安心感のアピールになる点から、力を入れているようだ。
 
この機会にあわせて、防災に関してよく取り上げられる、2つの日「9月1日」と「1月17日」を紹介してみよう。
 
1 令和5年度「津波防災の日」・「世界津波の日」に関する取組について(内閣府政策統括官(防災担当) 令和5年10月6日)
https://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/tsunamibousai/pdf/r5_01.pdf

2――9月1日~防災の日と防災週間

2――9月1日~防災の日と防災週間

以前からよく話題に挙がるのは、1923年9月1日の関東大震災にちなむ「防災の日」(1960年創設)とそれを含む「防災週間」(1982年創設)であろう。この防災の日の主旨は、

「政府、地方公共団体等関係諸機関をはじめ、広く国民が台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等の災害についての認識を広めるとともに、これに対処する心構えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資する」

こととされ、防災週間においては

「防災知識の普及のための講演会、展示会等の開催、防災訓練の実施、防災功労者の表彰等の行事を地方公共団体その他関係団体の緊密な協力を得て全国的に実施」
するものとされている。 (以上は、1982年5月閣議了解より)
 
実際、防災週間中には、全国各地で防災訓練や安否確認システムのテストなどが行われる。今年は地震から100年の節目であることから、特に注目を集めた。

また、9月1日あたりは暦上の「二百十日」3(2021年は8月31日、2022、2023年は9月1日)、台風やそうでなくても強風による農作物の被害が多い季節と言われる。そうした中、災害への備えを怠らないようにとの戒めも込められている。
 
2 雑節のひとつで、立春を起算日とした210日目目
3 台風シーズンのため実際の台風あるいは大雨で行事が中止となるケースも多いらしい。

3――1月17日~防災とボランティアの日(週間)

3――1月17日~防災とボランティアの日(週間)

阪神淡路大震災(1995年)の起きた1月17日は「防災とボランティアの日」とされ、それを含む1月15日から1月21日の一週間は「防災・ボランティア週間」(1996年より)とされている。
 
「政府、地方公共団体等防災関係諸機関を始め、広く国民が、災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図ることを目的」

として、

「この週間において、災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動の普及のための講演会、講習会、展示会等の行事を地方公共団体その他関係団体の緊密な協力を得て全国的に実施する」

ものとされている。 (以上は、1995年12月の閣議了解より)
 
阪神・淡路大震災においては、当時の政府や行政の対応の一部の遅れなど、後に反省された部分もあった一方で、災害ボランティアが被災地に駆けつけ、様々な支援活動が行われ、復興のための大きな力となったことが注目され、災害ボランティア活動の重要性が広く認識された最初の機会であったことに因む。

4――おわりに

4――おわりに

わが国は、地震、津波に加え台風、水害、雪害など、1年中自然災害等に見舞われている。火山も多く、噴火による災害も他に比べて頻度は小さいながらありうる。地域としてもどこで起きるかもわからない。そういった意味では、世界の他地域に比べて日頃から防災の備えができている・・・といいたいところだが、現実問題として、各人が四六時中それを思うわけにもいかない。

こうした防災関係の日は、それぞれに少しずつテーマは異なるが同じようなものともいえるが、定期的に(忘れた頃に?)やってくるのをいい機会と捉えて、結果的に、常に防災のための準備を思い出し、確認するよい機会となればよいだろう。
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年11月02日「基礎研レター」)

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