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- 中国経済:景気指標の総点検(2023年夏季号)
1. 中国経済の概況
ただし、経済活動の水準は依然として低い。設備稼働率はほとんどの産業で正常レベルを下回っており、若年労働者(16~24歳)の失業率が高止まりするなど雇用不安が残っている(図表-2)。そして消費意欲は盛り上がりに欠ける。消費者信頼感指数は小幅な改善にとどまり、預金残高も高水準のままである(図表-3)。しかもCOVID-19の変異株(XBB)が猛威を振るい始めており、第2四半期はそれが回復途上にあった人流を妨げるため、本格回復は第3四半期にずれ込みそうである。中国で感染症研究の権威とされる鍾南山氏は6月末がピークとの予測を示している。
他方、インフレ状況を見ると(図表-4)、今年1-5月期の工業生産者出荷価格(PPI)は前年同期比2.6%下落した。消費財は同0.8%上昇したものの生産財が同3.5%下落した。他方、消費者物価(CPI)は前年同期比0.8%上昇と政府目標「3.0%前後」を下回る水準で推移していた。また食品は同2.5%上昇したものの、輸送用燃料が同4.8%下落したため、食品・エネルギーを除くコアは同0.7%上昇となった。なお、人流が持ち直したことを背景に旅行代金が同7.3%上昇した。
2. 供給面の3指標
また、非製造業PMI(非製造業商務活動指数)を見ると(図表-8)、今年1月に54.4%(サービス業54.0%、建築業56.4%)と、昨年12月の41.6%(サービス業39.4%、建築業54.4%)から急回復し、その後も2月が56.3%、3月が58.2%と上昇を続けた。しかし4月には56.4%、5月には54.5%と2ヵ月連続で低下している。但し、製造業PMIとは違って50%を上回る水準を維持しており、予測指数も60.4%(サービス業60.1%、建築業62.1%)と高水準にある。
3. 需要面の3指標
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると、4-5月は平均で前年同期比2.4%増(推定1)と第1四半期(同5.1%増)を下回る伸びにとどまった。内訳を見ると(図表-10)、4-5月期の不動産開発投資は前年同期比9.3%減(推定)と第1四半期の同5.8%減からマイナス幅を拡大させた。分譲住宅の新規着工にも底打ちの兆しは見られず、先行きを楽観できる状況にはない(図表-11)。さらに製造業の投資が前年同期比4.5%増(推定)、インフラ投資が同5.6%増(推定)と、それぞれ第1四半期の同7.0%増、同8.8%増を下回る伸びにとどまっている。
輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-12)、4-5月期は前年同期比0.0%増と第1四半期(同0.5%増)を下回った。なお、輸入は同6.2%減と第1四半期(同7.0%減)からやや持ち直した。
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
4. その他の4指標と景気の総
需要面に焦点を当てると、小売売上高は第1四半期には3ヵ月ともに“○”と加速していたが、第2四半期に入ると2ヵ月ともに“✖”と減速に転じている。一方、固定資産投資と輸出はいずれも“○”と“✖”が交錯する状況にあり、方向感は明確でない。
供給面を見ると、鉱工業生産は第1四半期には3ヵ月ともに“○”と加速していたが、第2四半期に入ると4月は“✖”で5月は“〇”と、方向感は横這いと見られる。製造業PMIは第1四半期には3ヵ月ともに“○”と加速していたが、第2四半期に入ると2ヵ月とも“✖” と減速に転じている。非製造業PMIは4月まで“〇” と加速していたが、5月には“✖”に転じており、現時点で方向感を述べるのは時期尚早と見られる。
その他の指標を見ると、電力消費量は昨年12月以降6ヵ月連続で“○”となっており、景気の加速を示唆する状況が続いている(図表-14)。道路貨物輸送量も今年1月以降5ヵ月連続で“○”となっており、景気の加速を示唆する状況が続いている(図表-15)。工業生産者出荷価格(PPI)は第1四半期には“✖”が多く、第2四半期に入っても“✖”が続いているので、景気の減速を示唆する状況となっている(2ページの図表-4)。通貨供給量(M2)は第1四半期には3ヵ月ともに“○”と景気の加速を示唆していたが、第2四半期に入ると2ヵ月ともに“✖”と、景気の減速を示唆する状況に変化している(図表-16)。
最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、GDP成長率(前年同月比)を推計した「景気インデックス」を確認しておこう。推計結果は4月が前年同月比8.4%増、5月が同6.4%増で、4-5月期は前年同期比7.4%増である(図表-17)。前四半期(1-3月期)のGDP成長率は前年同期比4.5%増だったので、それを大幅に上回っている。したがって、7月17日に公表される4-6月期のGDP成長率(前年同期比)は、6月の景気次第で振れるとは言え、7%台となる可能性が高いだろう。なお、現在の市場コンセンサスは7.6%前後となっている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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