2023年06月07日

FSOC(金融安定監督評議会)がノンバンクSIFI指定に関する解釈ガイダンスの改定等を提案-ノンバンクSIFIの指定復活の動き-

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4―金融安定性リスクの分析フレームワークの提案の概要

FSOCが公表しているファクトシート10等によると、以下の通りとなっている。
1|概要
提案された分析フレームワークは、リスクが活動、個別の企業、又はその他から生じるかどうかに関係なく、評議会が米国の金融安定性に対する潜在的なリスクを特定、評価し、対応する際にとることが期待されるアプローチを記述している。これは、市場参加者、利害関係者、その他の一般の人々が、評議会が特定の任務をどのように遂行することを期待しているかをよりよく理解するのに役立つことを目的としている。

提案された分析フレームワークは、評議会が金融安定性に対する潜在的なリスクをどのように評価するかについて国民に新たな洞察を提供することになる。いかなる主体にも義務を課すものではない。
2|内容のポイント

(1) 潜在的なリスクの特定
評議会は、関連する金融規制当局と協議し、金融市場、事業体、市場の動向を監視し、米国の金融安定性に対する潜在的なリスクを特定する。この提案では、金融安定性に対する潜在的なリスクに対する評議会の監視は、以下のような幅広い資産クラス、機関、活動をカバーする可能性がある。

・負債、ローン、短期資金、株式証券、商品、デジタル資産、デリバティブ、その他の機関や消費者向けの金融商品及びサービスの市場
・中央清算機関(CCP)との支払、清算、及び決済活動
・銀行組織、ブローカーディーラー、資産管理会社、投資会社、保険会社、住宅ローン組成者及びサービサー、及び専門金融会社を含む金融機関
・新しい又は進化する金融商品及び慣行
・サイバーセキュリティや気候関連の金融リスクなど、金融システムのレジリエンスに影響を与える発展

(2) 潜在的なリスクの評価
評議会は関連する金融規制当局と協力して金融安定性に対する潜在的なリスクを評価し、さらなる見直しや措置が必要かどうかを判断する。金融の安定性に対する潜在的なリスクの評価は、非常に事実に特化したものになるが、提案された分析フレームワークは、そのようなリスクに最も一般的に寄与する一定の脆弱性を特定している。

1) 脆弱性
提案された分析フレームワークは、その脆弱性が活動、企業、その他に起因するかどうかに関係なく、金融安定性に対する潜在的なリスクを評価する際に、評議会が考慮することを期待している特定の脆弱性を指定している。特定された脆弱性には、レバレッジ、流動性リスクと満期のミスマッチ、相互接続、オペレーショナルリスク、複雑性又は不透明性、不適切なリスク管理、集中、及び不安定化する活動が含まれる。この提案では、これらの脆弱性のそれぞれについて説明し、これらの脆弱性の評価に役立つ可能性のある具体的な定量的指標を特定している。これらの脆弱性のいずれかが存在すると、リスクが金融市場又は市場参加者に伝播する可能性が高まる。

2) 伝播経路
評議会は、潜在的なリスクの悪影響が金融市場や市場参加者にどのように伝わるのか、また潜在的なリスクが金融システムにどのような影響を与える可能性があるのかを検討する。このようなリスクの伝播は、様々なメカニズム又はチャネルを通じて発生する可能性がある。提案された分析フレームワークでは、金融安定性に対するリスクの悪影響の伝播を促進する可能性が最も高く、評議会が分析に適用する可能性がある4つのチャネル(エクスポージャー、資産流動化、重要な機能又はサービス、伝染)について説明している。

(3) 潜在的なリスクへの対処
金融安定性に対するリスクに対処するために評議会がとる可能性のある措置は、脆弱性の性質によって異なる。例えば、規制当局が既存の適切な権限を持っている特定のセクター又は市場で広く行われている可能性のある活動に起因する脆弱性は、活動ベース又は業界全体の対応を通じて対処できる可能性がある。対照的に、金融システムが少数の事業体の継続的な財務活動に依存しており、そのうちの 1つの事業体の減損が金融の安定性を脅かす可能性がある場合や、特定の金融会社の重大な財務的苦境や活動が金融の安定性に対する脅威がある場合には、事業体ベースの措置が適切である可能性がある。評議会は、状況に応じて、金融の安定性に対する特定のリスクを軽減するために、異なるアプローチを採用したり、複数のツールを使用したりする場合がある。

金融の安定性に対する潜在的なリスクが特定された場合、評議会は米国の金融の安定性に対するリスクに対応するための評議会の権限の効用を検討することがある。これには以下が含まれる。

1) 省庁間の調整と情報共有
提案された分析フレームワークでは、多くの場合、評議会が関連する連邦及び州の金融規制当局と連携して、潜在的なリスクが適切に対処されていることを確実にするために適当な措置を実施することを求めると規定している。既存の規制当局が十分かつタイムリーな方法で金融安定性に対するリスクに対処できる場合、評議会は通常、それらの規制当局にそうするよう奨励する。

2) 政府機関又は議会への勧告
ドッド・フランク・ウォール街改革及び消費者保護法(ドッド・フランク法)の第120 条は、金融活動や慣行に新たな基準や強化された基準や保護措置を適用するように金融規制当局に勧告する権限を評議会に与えている。第120 条に基づく勧告を発行する前に、評議会は関連する主要金融規制機関と協議し、提案された勧告について公衆にコメントする機会を提供する。リスクを引き起こすと評議会が特定した金融活動や慣行を行っている市場や企業に対して主要な金融規制機関が存在しない場合、評議会はそのような活動や慣行が米国の金融の安定性を脅かすことを防止する法案の勧告を議会に報告することを検討することができる。

3) ノンバンク金融会社の決定
場合によっては、評議会はノンバンク金融会社を評価して、その会社をFRBの監督及び健全性基準に指定するかどうかを決定することがある。このような決定は、ノンバンク金融会社の指定に関する評議会の解釈ガイダンス案に記載されているプロセスに従うことになる。このガイダンスは、評議会が本日パブリックコメントのために公開したものでもある。

4) 金融市場ユーティリティの指定
ドッド・フランク法第 VIII 編に基づき、評議会はシステム上重要となる、又は重要になる可能性が高い金融市場ユーティリティを指定する権限を持っている。

5) 支払、清算、決済活動の指定
ドッド・フランク法第 VIII 編に基づき、評議会はシステム上重要となる、又は重要になる可能性が高い支払、清算、及び決済活動を指定する権限を持っている。

5―ノンバンク金融会社の決定に関する解釈ガイダンスの提案

5―ノンバンク金融会社の決定に関する解釈ガイダンスの提案

FSOCが公表しているファクトシート11等によると、内容のポイントは以下の通りとなっている。
 

2019年に評議会が採択したガイダンスとは異なり、提案されたガイダンスはノンバンク金融会社の指定候補を審査する際に評議会が適用する手順のみに焦点を当てている。提案されたガイダンスの下では、評議会は一般に、ノンバンク金融会社がFRBの監督と健全性基準の対象となるべきかどうかを決定する際に、評価と分析の2段階のプロセス(process)に従うことを想定している。

(1) ステージ1
プロセスの第1段階では、審査対象として特定されたノンバンク金融会社は、主に公的情報源及び規制情報源を通じて評議会が入手できる定量的及び定性的情報に基づいて、予備分析の対象となる。ステージ1 では、評議会は企業に審査と許可を通知するが、企業に関連情報の提出を要求するものではなく、必要に応じて企業の主要な金融規制当局と協議する。

(2) ステージ2
ステージ1 に続いて、追加審査対象に選ばれたノンバンク金融会社は、その会社がFRBの監督を受け、健全性基準の対象となること、及び指定の提案が検討されている旨の通知を受け取る。レビューの第2 段階で詳細な評価が行われる。ステージ2 には、ノンバンク金融会社から直接収集した追加情報の評価も含まれる。

(3) 提案及び最終的な指定
ステージ2 の終了時に、評議会はノンバンク金融会社の指定提案を行うかどうかを検討する可能性がある。評議会が指定提案を作成した場合、ノンバンク金融会社はヒアリングを要求してもよい。指定提案を作成し、要求に応じて書面又は口頭での審理を行った後、評議会は最終的な指定を行うために投票することができる。

(4) 以前の指定の年次再評価
提案されたガイダンスでは、評議会が指定した企業に対して、特定されたリスクを軽減するための措置を講じるよう評議会が企業又はその規制当局に奨励することが明記されている。評議会は少なくとも年に一度指定を再評価し、企業が指定の法定基準を満たしていないと評議会が判断した場合は指定を取り消す。評議会の年次再評価中に、企業は評議会の代表者と会い、見直しについて話し合い、情報を提示する機会がある。企業は書面による情報を提出することもある。特定されたリスクに対処するために企業が事業に加える可能性のある変更について説明する場合、評議会の代表者は、変更によって特定されたリスクがどの程度軽減されるかについてフィードバックを提供するよう努める。さらに、評議会が指定を取り消さないことを決議した場合、評議会は分析における重要なファクターを説明する書面による説明を企業に提供する。

上記の指定及び指定の年次再評価に関する評議会の手続きに関して、提案されたガイダンスは、評議会と、指定の可能性を検討中のノンバンク金融会社及びその会社の主要規制当局との間の重要な関与及びコミュニケーションを維持することになる。提案されたガイダンスは、指定の可能性について審査されるノンバンク金融会社に対する厳格な手続き上の保護を維持しながら、評議会が法的権限を適切に活用できるようにすることを目的としている。

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中村 亮一

研究・専門分野

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