2023年05月15日

年金額の少なさや、高齢者の健康保険料の引上げが投稿契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2023年4月)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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4 ―― 単独で投稿されたツイート:Webページやツイートを契機とする投稿と概ね連動

図表6の橙色の線は、単独で投稿された(ツイートやWebページを明示的な投稿契機としていない)年金ツイートの、投稿日別の投稿者数の推移である。

これを見ると、単独で投稿された年金ツイートの投稿者数は、ツイートを投稿契機とした投稿者数と概ね連動している。返信や引用の形式をとらずURLの記載もないものの、話題になっているツイートを見て、それに対するコメントなど(いわゆるエアリプ)が投稿された可能性が考えられる。
図表6 投稿契機区分別に見た年金ツイートの投稿者数

5 ―― 総括

5 ―― 総括:年金額の少なさや高齢者の健康保険料の引上げが投稿契機に

分析対象となった年金ツイートでは、次のような傾向が観察された。
 
  • 2023年4月に投稿された年金ツイートは約14万件で、同月は年金を巡る大きな話題がなかった月と言える6
     
  • ツイートを投稿契機としたものとWebページを投稿契機としたものの双方で、年金額の低さを紹介するツイートや記事が、多くの投稿者の投稿契機となっていた。ただし、ツイートを投稿契機としたものとWebページを投稿契機としたものとで、投稿契機となった記事や時期が異なっていた。
     
  • ツイートを投稿契機とした年金ツイートでは、例月と異なり、他のツイートやWebページのURLを含まないツイートが、多くの投稿者の投稿契機となった。
     
  • Webページを投稿契機とした年金ツイートでは、75歳以上の負担増を含む健康保険の改正案や海外年金基金の議決権方針、4月からの年金額が3年ぶりに引き上げられるものの実質的には目減りになることに関する記事も、多くの投稿者の投稿契機となった。
 
ツイートを投稿契機とした年金ツイートとWebページを投稿契機とした年金ツイートの双方で年金額の少なさという同じ話題が主な投稿契機になった点は、年金改革案が話題になり年金ツイートの投稿数が多かった2022年9月下旬~10月7や公的年金の積立金が投稿契機となった2023年3月8と同じ傾向であった。

しかし、これまでは世代間不公平の観点から現在の高齢者が恵まれていることを指摘するツイートや記事が多くの投稿契機となっていたのに対し、今回は現在の高齢者の年金額の少なさが話題になった点で、これまでとは傾向が異なっていた。この傾向の違いが、他のツイートやWebページのURLを含まないツイートが多くの投稿者の投稿契機となった点にも現れた、と考えられる。

ただし、年金額の低さを紹介するツイートや記事を契機として投稿されたツイートの内容は、多様であった。概観したところ、投稿契機になったツイート等に賛同する意見のほか、制度としてはおかしくないという意見9やiDeCoなどの私的年金で準備すべきなど、様々な意見が見られた。
 
 
6 2022年以降の状況を見ると、年金を巡る大きな話題がなかった月は13万件程度、大きな話題があった月は20万件程度である。
7 拙稿「2020年に公表されていた厚労省の試算が年金ツイートの契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2022年9月下旬~10月)」
8 拙稿「米国銀行の破綻と年金積立金の関係などが年金ツイートの契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2023年3月)
9 現在の国民年金の保険料は月16,520円である。これを40年間納め、基礎年金の満額である月6.6万円の年金を65歳から平均寿命(85歳)まで20年間受取る場合、単純に考えると総受取額が総支払額の約2倍になる。なお、これは、基礎年金額の半分を一般会計予算が負担しているためである。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

(2023年05月15日「基礎研レポート」)

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