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- ビッグマックから「安いニッポン」を考える
2023年05月10日
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※ 本稿は、「ビッグマックから「安いニッポン」を考える」(23年3月、研究員の眼)を再構成したものであり、参考文献を含め、詳細は上記レポートを参照されたい。
「安いニッポン」が生じた直接的な要因は、長期にわたる物価の低迷と為替レートの変化によるものだ。
日本は1990年代後半以降、長らく低い物価上昇に直面してきた。1990年代後半以降、日本の消費者物価指数は概ね横ばいで推移してきた。これは、平均2%程度で上昇してきた米国やユーロ圏などと大きく異なる。2021年以降、世界は物価上昇に見舞われ、日本でも2023年1月には消費者物価上昇率は前年同月比で4%を超えた。しかし、他国に比べれば日本の物価上昇率は大きくない。低物価上昇率が継続したことで、物価は変わらないという強い予想が生まれ、物価の粘着性が高まった。また、日本のビッグマック価格も海外に比べて上がっていない。
日本は1990年代後半以降、長らく低い物価上昇に直面してきた。1990年代後半以降、日本の消費者物価指数は概ね横ばいで推移してきた。これは、平均2%程度で上昇してきた米国やユーロ圏などと大きく異なる。2021年以降、世界は物価上昇に見舞われ、日本でも2023年1月には消費者物価上昇率は前年同月比で4%を超えた。しかし、他国に比べれば日本の物価上昇率は大きくない。低物価上昇率が継続したことで、物価は変わらないという強い予想が生まれ、物価の粘着性が高まった。また、日本のビッグマック価格も海外に比べて上がっていない。
「安いニッポン」自体はそれほど問題ではないかもしれない。同じ製品を日本で安く作れるなら、海外への輸出を増やせるはずだ。物価が安いことには、外国からの旅行者の増加や海外企業の国内誘致を有利にするメリットもある。
しかし、「安いニッポン」が、生産性が低く、競争力を失っているために、生産者が価格を引き上げられず、賃金も上がらない中で生じたものであれば、物価の安さは望ましいとはいえない。ビッグマックの生産コストを考えると、牛肉やレタス、小麦などの海外と貿易される財(貿易財)に加え、店舗の家賃や人件費といった海外と貿易されない財(非貿易財)が含まれる。過去の研究によれば、ビッグマックの内外価格差の約6割は、海外と貿易されない財(非貿易財)の価格で説明されるとする分析もあり、日本でビッグマックが安く買えるのは、賃金が低いからかもしれない。
しかし、「安いニッポン」が、生産性が低く、競争力を失っているために、生産者が価格を引き上げられず、賃金も上がらない中で生じたものであれば、物価の安さは望ましいとはいえない。ビッグマックの生産コストを考えると、牛肉やレタス、小麦などの海外と貿易される財(貿易財)に加え、店舗の家賃や人件費といった海外と貿易されない財(非貿易財)が含まれる。過去の研究によれば、ビッグマックの内外価格差の約6割は、海外と貿易されない財(非貿易財)の価格で説明されるとする分析もあり、日本でビッグマックが安く買えるのは、賃金が低いからかもしれない。
「安いニッポン」現象は、生産性を引き上げられず、所得を増やすことができなかった日本への警鐘ともいえる。
(2023年05月10日「基礎研マンスリー」)
山下 大輔
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