2023年03月14日

就労期間の長期化や公金受取口座、年金支給日等が年金ツイートの契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2023年2月)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1 ―― 本稿の問題意識と分析対象:年金ツイートは、何を契機に投稿されたか?

ツイートとは、Twitterに投稿されるメッセージ(発言)である。文字数が、基本的に全角で140文字(半角で280文字)までと制限されており、「つぶやき」とも呼ばれる。近年はマスコミの報道や国会審議などでも取り上げられているが、ツイートには、熟考の上で投稿されたもの、反射的に投稿されたもの、宣伝や広報、プログラムによって投稿されたものなど、様々なものが混在している。

本稿では、「年金」を含むツイート(以下、年金ツイート)が何を契機に投稿されているかを考察するために、基礎的な投稿状況やツイートに含まれるリンクを分析した。分析対象は、2023年2月に投稿された年金ツイートのうち単純なリツイート等を除いたものであり(図表1)、投稿者自身の何らかの態度が示されているツイートと言えよう。
図表1 本稿が分析対象としたツイート
以下では、投稿状況の指標として、投稿数(ツイート数)と投稿者数を確認する。投稿数は、前述のとおり単純なリツイート等を含んでいない点に注意が必要である。投稿者数は、ユーザー名を集計区分ごとに名寄せした件数であり、同一の集計区分で同一のユーザーが複数のツイートを投稿していても1名と数えている。以下では、同一ユーザーからのプログラムなどを使った複数回投稿の影響を抑えるため、投稿者数を主な指標として見ていく。

2 ―― 投稿契機となったツイート

2 ―― 投稿契機となったツイート:就労期間の長期化や高齢者の負担増などが投稿契機に

図表2は、ツイートを契機として投稿された年金ツイートの、投稿日別の投稿者数の推移である。既存のツイートに対するコメントの投稿(返信ツイートや引用リツイートなど)が、この集計の対象である1。図表2を見ると、最多が2月23日、2番目が2月24日、3番目が2月15日で、これら以外に、2月2日や2月4日、2月16日などでも多くなっている2
図表2 ツイートを契機として投稿された年金ツイートの投稿者数
また、図表3は、年金ツイートの投稿契機となったツイートのうち、そのツイートを契機とした年金ツイートの投稿日別の投稿者数が上位10件に入ったものである。

図表3で最も多くの人の投稿契機となったツイートは、2月16日に投稿された、竹中平蔵氏の「日本人は90歳まで働く時代がくる」などの発言を紹介するツイートだった3

2番目に多くの人の投稿契機となったツイートは、2月4日に投稿された、出産一時金の増額に対応する財源として後期高齢者医療制度の保険料引上げも充てられることを紹介するツイートだった4

3番目に多くの人の投稿契機となったツイートは、2月24日に投稿された世代間不公平に関するひろゆき氏のツイートで、世代間扶養のバランスが いわゆるおみこし型から肩車型へ移っていくことを示す絵が添付されていた。

図表2で投稿者数が最多の2月23日や3番目に多い2月15日の投稿は図表3にないが、別途確認したところ、2月23日は成田悠輔氏の高齢者集団自決発言に関連する複数のツイート5に、2月15日は年金に関連した多様な話題に関する多数のツイートに、投稿契機が分散していた。
図表3 年金ツイートの投稿契機となったツイート (年金ツイートの投稿日別の投稿者数の上位10件)
 
1 あるツイートの返信ツイートや引用リツイートとして投稿された年金ツイートのほか、他のツイートのURLをツイート中のURL1つめとしている年金ツイート(※)も、ツイートを契機として投稿された年金ツイートとみなしている。なお、ツイートを契機として投稿された年金ツイート60,738件のうち、返信ツイートは49,776件、引用リツイートは10,603件、※のタイプの年金ツイートは359件であった。
2 平均+標準偏差よりも多いことを、「多い」の目安にしている。以下同じ。
3 このツイートは、ネット上の話題とコメントを紹介するサイトが自サイトの記事を紹介したもので、元の記事はYahoo!ニュースに掲載されたものだった。本稿執筆時点では当該記事を閲覧できなかったが、みんかぶマガジンのWebサイトに掲載された2月15日付の同氏の署名記事が、ほぼ同様のタイトルとなっている。また、PRESIDENT 2019年10月4日号に掲載された同氏の署名記事も、同様の題名になっている。
4 このツイートは、Yahoo!ニュースが自サイトの記事を紹介したものだった。本稿執筆時点では当該記事を閲覧できなかったが、同日付で読売新聞オンラインに掲載された記事が、ほぼ同様のタイトルとなっている。
5 厳密には、2月23日開設の5ちゃんねる掲示板のスレッドを紹介する複数のWebページがあり、それらのWebページを紹介する複数のツイートが投稿契機となっていた。この5ちゃんねる掲示板のスレッドの1番目の発言は、成田悠輔氏の集団自決発言を紹介する2月14日に投稿されたツイートを、紹介していた。

3 ―― 投稿契機となったWebページ

3 ―― 投稿契機となったWebページ:年金の振込先が公金受取口座になることなどが投稿契機に

図表4は、Webページを契機として投稿された年金ツイート6の、投稿日別の投稿者数の推移である。ニュースサイト等に掲載された記事を見て、記事の脇のアイコンから投稿した場合などが想定される。図表4を見ると、最多が2月10日、2番目が2月1日、3番目が2月3日、となっている。
図表4 Webページを契機として投稿された年金ツイートの投稿者数
図表5は、年金ツイートの投稿契機となったWebページのうち、そのWebページを契機とした年金ツイートの投稿日別の投稿者数が上位10件に入ったものである。

図表5で最も多くの人の投稿契機となったWebページは、政府が今国会に提出するマイナンバー法改正案を紹介する2月10日の読売新聞オンラインの記事を転載した、Yahoo!ニュースの記事だった。転載元である読売新聞のサイトの記事も、3番目に多い投稿者を集めた。同記事は、期限までに不同意の回答がなければ公的年金の振込先口座がマイナンバーにひもづけた公金受取口座となる点を、取り上げていた。

2番目に多くの人の投稿契機となったWebページは、2月12日にYahoo!ニュースへ転載された、企業年金などが縮小見通しだと報じたマネーポストWEBの記事だった。このWebページは、2月12日と13日の2日間にわたって、多くの人の投稿契機となった。

また、投稿日別(図表4)で2番目に多かった2月1日には、同日にYahoo!ニュースへ転載された年金官僚の天下りを指摘する文春オンラインの記事が、多くの人の投稿契機となっていた。この記事は、ひろゆき氏の投稿でも参照され、図表3の1つめにある厚労省OBの働き口に関する同氏の投稿の契機になったと考えられる。

また、投稿日別(図表4)で3番目に多かった2月3日は、同日にYahoo!ニュースのトピックスとして取り上げられた年金積立金の運用成果に関する記事が、多くの人の投稿契機となった。加えて、投稿者数が多かったWebページの上位10件(図表5)には入っていないが、Yahoo!ニュースへ転載された、地域医療機能推進機構7の剰余金の返納先が年金特別会計から国庫に変更されて防衛費増額に充てられることを取り上げた神奈川新聞の記事も、同日に投稿者数が増えた一因となっていた。
図表5 年金ツイートの投稿契機となったWebページ (投稿日別の投稿者数の上位10件)
 
6 ツイート中にURLを含む年金ツイートのうち、前述したツイートを契機として投稿された年金ツイート以外のもの。
7 地域医療機能推進機構は、旧社会保険病院や旧厚生年金病院などを運営する独立行政法人。これらの病院は年金の資金を活用して設立された経緯があるため、剰余金は年金特別会計に納付される形になっている(2023年2月時点)。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【就労期間の長期化や公金受取口座、年金支給日等が年金ツイートの契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2023年2月)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

就労期間の長期化や公金受取口座、年金支給日等が年金ツイートの契機に-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2023年2月)のレポート Topへ