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- 注目が高まる森林投資
2023年03月03日
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欧米の投資家の間で森林への投資に注目が高まっている。近年ではESG投資が世界的に拡大しており、持続可能に木材資源を生産している森林がESG投資の投資先となっていることが背景にある。図表1はGlobal Impact Investing Network(GIIN)が調査した世界のインパクト投資の分野別の残高を示している。これを見ると、エネルギー16%、金融12%に次いで森林への投資が10%を占めていることが分かる。
機関投資家による森林投資は1980年代にTIMO(Timberland Investment Management Organization: 森林投資経営組織)と呼ばれる運用会社が投資ファンドを組成したことが始まりとなっている。1998年には、米国で法改正によりREITが森林を投資対象とすることが可能となった。これにより、個人投資家も森林への投資を行いやすくなり、森林投資の市場は拡大を続けてきた。
世界の木材需要は人口の増加や新興国の発展を背景に増加が続いている。国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)によれば、世界の木材(産業用丸太)の消費量は2010年の17億2,574万立方メートルから2020年には19億8,602万立方メートルまで増加しており、今後も長期的に増加が続くと見込まれている。木材需要の増加は森林投資家に投資機会をもたらしている。また、近年米国などでは営林業者が伐採を延期することで樹木への二酸化炭素の蓄積を行うことに対し、企業が対価を支払う取引が行われており、温室効果ガスの排出量取引の観点からも森林の価値が注目されている。
機関投資家による森林投資は1980年代にTIMO(Timberland Investment Management Organization: 森林投資経営組織)と呼ばれる運用会社が投資ファンドを組成したことが始まりとなっている。1998年には、米国で法改正によりREITが森林を投資対象とすることが可能となった。これにより、個人投資家も森林への投資を行いやすくなり、森林投資の市場は拡大を続けてきた。
世界の木材需要は人口の増加や新興国の発展を背景に増加が続いている。国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)によれば、世界の木材(産業用丸太)の消費量は2010年の17億2,574万立方メートルから2020年には19億8,602万立方メートルまで増加しており、今後も長期的に増加が続くと見込まれている。木材需要の増加は森林投資家に投資機会をもたらしている。また、近年米国などでは営林業者が伐採を延期することで樹木への二酸化炭素の蓄積を行うことに対し、企業が対価を支払う取引が行われており、温室効果ガスの排出量取引の観点からも森林の価値が注目されている。
次に森林投資のパフォーマンスの特徴について見てみたい。図表2は森林投資と伝統的資産の1999年12月末を100とした累積リターンの推移を示している。2022年12月末時点での各資産の累積リターンは森林投資 317、グローバル株式 251、グローバル債券 155、国内株式 165、国内債券 136となっており、森林投資は過去、相対的に安定的な収益を積み上げていることが分かる。
森林投資のリターンはインカムゲインとキャピタルゲインに分解できる。木材の販売から得られる収入などによりインカムゲインが発生する。また、木材価格の変動などによる保有森林の市場価値の変化からキャピタルゲインが発生する。インカムゲインは景気変動の影響を受けにくく安定的な傾向がある。一方でキャピタルゲインは、景気変動の影響を受けやすい。また、森林投資のリターンはインフレ率と正の相関があり、インフレヘッジ機能が期待できる。
一方で、森林投資のリスク要因として(1)異常気象、山火事などの自然災害のリスク、(2)木材価格の変動のリスク、(3)森林保護などに関する法律の改正による森林の運営・売却への影響のリスクが挙げられる。
このように、森林投資は株式や債券といった伝統的資産とは異なる性質を持ち、森林投資のリターンはこれらの資産と低相関となっている。森林投資と伝統的資産とのリターンの相関係数はグローバル株式 0.00、グローバル債券 0.07、国内株式 0.07、国内債券 -0.01となっている(図表3)。
森林投資をポートフォリオへ組み入れることで分散投資効果の向上や運用効率の改善が期待される。森林投資は持続可能性への取り組みを維持しつつ、運用パフォーマンスの改善を行える可能性がある。
森林投資のリターンはインカムゲインとキャピタルゲインに分解できる。木材の販売から得られる収入などによりインカムゲインが発生する。また、木材価格の変動などによる保有森林の市場価値の変化からキャピタルゲインが発生する。インカムゲインは景気変動の影響を受けにくく安定的な傾向がある。一方でキャピタルゲインは、景気変動の影響を受けやすい。また、森林投資のリターンはインフレ率と正の相関があり、インフレヘッジ機能が期待できる。
一方で、森林投資のリスク要因として(1)異常気象、山火事などの自然災害のリスク、(2)木材価格の変動のリスク、(3)森林保護などに関する法律の改正による森林の運営・売却への影響のリスクが挙げられる。
このように、森林投資は株式や債券といった伝統的資産とは異なる性質を持ち、森林投資のリターンはこれらの資産と低相関となっている。森林投資と伝統的資産とのリターンの相関係数はグローバル株式 0.00、グローバル債券 0.07、国内株式 0.07、国内債券 -0.01となっている(図表3)。
森林投資をポートフォリオへ組み入れることで分散投資効果の向上や運用効率の改善が期待される。森林投資は持続可能性への取り組みを維持しつつ、運用パフォーマンスの改善を行える可能性がある。
(2023年03月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
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