2022年12月27日

人口構成からみる社会の変化(2)-性・年齢階層別人口の前後5年間の変化-

生活研究部 井上 智紀

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1――はじめに

前稿では、長期的な観点から日本全体としての人口構成の変化について確認した。このような人口構成の変化は、国内を対象とした様々なビジネスにおける市場環境としての観点からも重要であり、足元の変化については折りに触れつぶさに確認しておくことが肝要であるように思われる。

そこで本稿では引き続き、2015年、2020年の国勢調査の結果および国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」における2025年の推計結果を用いて、2020年を中心とする前後5年間の性・年齢階層別の人口構成の変化について、都道府県別の差異を確認していく。

2――日本全体における人口構成の変化

2――日本全体における人口構成の変化

はじめに、2015年から2020年にかけての変化についてみると、全体では多くの年齢層で減少しており、とりわけ60歳代(-15.1%)、30歳代(-11.6%)の減少幅が大きくなっている。逆に高齢層では、70歳代で14.1%、80歳以上で14.9%と団塊世代を含む70歳代のみならず80歳以上についても大きく増加していることがわかる。また、50歳代も5.6%増加している。この結果を性別にみると、男性では70歳代で15.3%、80歳以上では18.4%の増加とそれぞれ女性(13.1%、13.0%)に比べ増加幅が大きくなっている。

一方、2020年から2025年にかけての変化では、80歳以上が17.6%、50歳代が11.8%、それぞれ増加する一方、団塊ジュニア世代全員が50歳代となることで40歳代は-12.6%と大きく減少するものと見込まれている。性別にみると、80歳以上では男性が19.8%と女性(16.3%)の増加率を3.5ポイント上回っている以外は大きな差異はみられない。
図表1 2015~2020年、2020~2025年の人口の変化(性・年齢階層別)

3――都道府県別の差異

3――都道府県別の差異

12015年から2020年の変化
全体での増加率が高い高齢層について都道府県別にみると、80歳以上の増加率は埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府で2割を超えて高く、特に埼玉県の男性では37.9%と増加率の高さが目立っている。同様に70歳代では栃木県、石川県、滋賀県、香川県で2割を超えて高くなっている。また、50歳代についてみると、一都三県と愛知県、大阪府では10%以上増加しており、特に東京都(18.5%)、神奈川県(17.6%)で大きく増加する一方、北海道、東北、栃木県、新潟県、福井県、和歌山県、広島県を除く中国、四国、福岡県と沖縄県を除く九州では減少しており、特に秋田県、山形県、宮崎県、鹿児島県では全体での減少割合が10%を超えるなど、顕著に減少している。

減少幅が大きい60歳代についてみると、富山県、京都府、大阪府では20%以上の減少と全国平均を大きく上回る一方、岩手県、宮城県、山形県、福島県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県では減少率は10%に満たず、沖縄県では逆に4.3%増加している。全国では減少率が10%に満たない20歳代以下についてみても、青森県、岩手県、秋田県、徳島県ではすべての層で10%以上と減少率が大きくなっている一方、東京都では10歳未満、20歳代で、千葉県、神奈川県、大阪府では20歳代で増加するなど、地域差が生じている様がみてとれる。
22020年から2025年の変化
全体での増加率が高い高齢層について都道府県別にみると、80歳以上の増加率は埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県など、2割以上の増加が見込まれている府県がある一方、岩手県、秋田県、山形県、島根県、鹿児島県では増加率が5%に満たない。同様に全国では増加率が高い、50歳代についても同様に、岩手県、山形県、福島県、山梨県、和歌山県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県では増加率が5%に満たず、青森県、秋田県ではむしろ減少する見込みとなっている。

一方、団塊ジュニア世代が50歳代になることで大きく減少することが見込まれる40歳代についてみると、岩手県、山形県、東京都、鳥取県、徳島県、長崎県を除く九州・沖縄では10%未満の減少率に留まっている。30歳代以下についてみても、東京都と沖縄県では10歳代が増加の見込みとなっているほか、滋賀県、京都府、岡山県、徳島県、香川県では20歳代の増加率が5%を超えて高くなっているなど、今後の5年間においても地域や世代により変化の方向は様々であることがわかる。
 
我が国全体としては人口減少と高齢化が同時に進んでいることから、市場環境を考えるにあたっても高齢者市場を除く多くの市場は今後も縮小が避けられないものとの前提で捉えがちであるように思われる。しかし実際には、人口の変化は出生や死亡といった人口動態以外に社会移動によっても生じることから、地域や世代により増加・減少の方向性や変化の大きさも様々である。また、そうした変化の背景要因もそれぞれに異なっていることは想像に難くない。環境変化への対応を検討していくにあたっては、こうした地域ごとの差異にも目を配っていくことが肝要ではないだろうか。
図表2-1 2015~2020年、2020~2025年の人口の変化(都道府県別)
図表2-2 2015~2020年、2020~2025年の人口の変化(都道府県別)
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