2022年12月23日

どんな人が年賀状を出しているのか?-男女、年齢層、地域別、年賀状を出した人の割合 (2020~2022)

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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1――はじめに

年末年始の日本の恒例行事に年賀状による新年の挨拶があるが、近年は年賀状離れが伝えられている。日本郵便によると、2023年用の年賀ハガキの当初発行枚数は16億4000万枚で、2004年用以降で最も少ないことが報告されている1。ではこうした状況の中で、どういった人が年賀状を出していて、どういった人が年賀状を出さない傾向があるのだろうか。年賀状離れが進んでいるのは、年賀ハガキだけなのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が2020年から2022年まで毎年全国の被用者を対象に行ってきた独自の調査から、男女別、年齢層別、地域別に、年賀状を出した人の割合の変化を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、男女、年齢層、地域を問わず、2020年から2022年の間で年賀状を出した人の割合が減少している傾向が見られた。また、どの年の調査でも年齢が高い人ほど年賀状を出している人の割合が大きい傾向が見られた。さらに、2020年と2021年では、男女別では女性の方が年賀状を出している人、地域別では中部地方や近畿地方在住者の間で年賀状を出した人の割合が大きい傾向が見られた。一方で、2021年と2022年の調査では、九州・沖縄地域の人の間で年賀状を出した人の割合が小さい傾向が見られた。
 
1 JIJI.COM (2022/12/15) https://www.jiji.com/jc/article?k=2022121500148&g=soc (2020/12/15アクセス)

2――調査の概要

2――調査の概要

本分析に用いたデータは、ニッセイ基礎研究所が、全国の15~64歳の被用者2を対象3に、2020年から2022年まで毎年3月頃に実施してきたインターネット調査によって得られたものである4。各年の調査回答は、全国 11 地区の性別、年齢の分布を国勢調査の分布に合わせて収集された。回答数は 2020年調査では6,485 件、2021年調査では5,808件、2022年調査では5,653件である。本稿の分析ではそのうち、一定の基準に基いて不正確と考えられる回答を除いた、2020年調査の5,594件、2021年調査の4,970件、2022年調査の4,735件の回答を用いて分析を行った。各年の調査項目には、年齢や性別、居住地域の他、その年の年賀状を出したかどうか5、という質問が含まれている。
 
2 会社などに雇用されている人、もしくは公務員
3 株式会社クロスマーケティングのモニター会員
4 2020年、2021年、2022年被用者の働き方と健康に関する調査
5 具体的には、「今年の年賀ハガキはいつ投函しましたか(一番早く投函した時期を教えてください)」という質問が含まれている。回答者は、(1)12月25日以前にハガキを投函 (2)12月26日~31日にハガキを投函 (3)1月1日~1月7日にハガキを投函 (4)1月8日以降にハガキを投函 (5)ハガキ以外の方法で出した (6)喪中だった(7)喪中ではないが出していない、のいずれかを選択。(本稿では、(1)~(4)を選択した人を年賀ハガキを出した人としている。)

3――男女別年賀状を出した人の割合の変化

3――男女別年賀状を出した人の割合の変化

まず、回答者全体では、2020年の年賀ハガキを出した人の割合は52%であるのに対し、2021年の年賀ハガキを出した人の割合は50%、2022年の年賀ハガキを出した人の割合は46%と、年賀ハガキを出した人の割合は年々減少傾向であることが分かる。ハガキ以外の方法で出した人の回答者全体での割合は2020年と2021年では5%、2022年では4%とほとんど変化していない一方で、出していない人の割合は、36%から44%に増加している。このことから、年賀ハガキを出した人の割合が減少傾向であるのは、年賀ハガキから他の手段への変更によるものではなく、年賀状自体を出さない人の割合が大きくなってきているためであることが示唆される。

男女別に見ると、2020年から2022年にかけて、男女ともに年賀ハガキを出した人の割合が減少傾向であることが分かる。男女の間での大きな差は見られないが、後の項で紹介するプロビットモデルの推定結果6からは、地域や年齢層といった要因をコントロールすると、2020年と2021年では、統計的有意に女性の方が年賀状を出した傾向が見られた(有意水準1%未満)。
図1. 男女別年賀状を出した人の割合の変化
 
6 プロビットモデルは、被説明変数が0か1の値しかとらないダミー変数の場合の推定に適したモデル。
詳細は以下の書籍参照:山本 勲 (2015)『実証分析のための計量経済学』中央経済社

4――年齢層別年賀状を出した人の割合の変化

4――年齢層別年賀状を出した人の割合の変化

では、年齢層別ではどうだろうか。年齢層別に年賀状を出した人の割合を示したのが図2である。まず、どの年の調査でも、年賀ハガキを出した人の割合は、年齢層が上がるにつれて大きくなっていく傾向が見られる。また、時系列的な変化を見ると、年齢層に関わらず、年賀ハガキを出した人の割合は減少傾向で、年賀状を出さない人の割合は増加傾向である。加えて、どの年齢層でも、ハガキ以外の方法で出した人の割合の大きさに大きな変化は見られない。
図2. 年齢層別年賀状を出した人の割合の変化

5――地域別年賀状を出した人の割合

5――地域別年賀状を出した人の割合

それでは、年賀状を出した人の割合やその変化に、地域別の違いは見られるのだろうか。それを確かめるために、全国7地域別に年賀状を出した人の割合を示したのが図3である。
図3. 地域別年賀状を出した人の割合の変化
地域別で、最も年賀ハガキを出した人の割合が大きかったのは、2020年は中部地方で56%、2021年は近畿地方で55%、2022年は中部地方で49%であった。一方で、最もハガキを出した人の割合が小さかったのは、2020年から2022年まで一貫して、九州・沖縄地方であった。次項で紹介するプロビットモデルの推定結果では、2020年と2021年では、関東地方に比べて中部地方と近畿地方では、年賀ハガキを出した人の割合が統計的に有意に大きい傾向(有意水準5%未満)が見られた。また、2021年と2022年では、関東地方に比べて九州・沖縄地方では年賀ハガキを出した人の割合が統計的に有意に小さい傾向(有意水準5%未満)が見られた。さらに、時系列的に見ると、どの地域でも、2020年から2022年にかけて、年賀ハガキを出した人の割合は減少傾向で、年賀状を出さない人の割合は増加傾向であることが確認できる。

6――プロビットモデルの推定結果

6――プロビットモデルの推定結果

最後に、性別、年齢層、地域の違いと、年賀ハガキを出す行動との間の相関関係を確認するために、年賀ハガキを出した場合に1、それ以外の場合に0を取るダミー変数を被説明変数とし、性別、年齢層、地域を説明変数として、プロビットモデルの推定を行った。喪中の人は除いて推計を行っている。結果は、表1の通りである。

このプロビットモデルの推定結果からは、どの年の調査でも年齢層が高いほど年賀ハガキを出した人の割合が大きい傾向が確認できる。また、2020年と2021年の調査からは、地域や年代の影響を一定にした上では、男性よりも女性の方が年賀ハガキを出した傾向があることが確認された(有意水準1%未満)。また、2020年と2021年の調査からは、性別や年齢の影響を一定にした上でも、関東地方に比べて、中部地方や近畿地方在住者の方が年賀ハガキを出した傾向があることが確認できる(有意水準5%未満)。さらに、2021年と2022年の調査からは、関東地方に比べて、九州・沖縄地方在住者の方が年賀ハガキを出した人の割合が小さい傾向があることが確認できる(有意水準5%未満)。
表1. 年賀ハガキを出したかどうかと性別、年齢、地域の関係

7――おわりに

7――おわりに

本稿で紹介した分析では、2020年から2022年にかけて年賀ハガキを送る人の割合が、性別、年齢層、地域を問わず減少傾向であることが示された。そしてその理由は、年賀ハガキから別の手段への移行ではなく、年賀状を出す人の割合自体が減少していることである可能性が示唆された。また、年賀ハガキの利用状況には、性別や年齢層、地域によって違いがある可能性が示された。これらの要因については今後の検討課題であるが、年齢層ごとの違いは、本調査の対象である被用者の15歳から64歳の間では年代が上がるにつれて社会的なつながりが広がっていく傾向がある可能性に加え、世代による年賀状への意識の違いも考えられるかもしれない。また、地域や男女による違いは、もともとの年賀状文化や社会関係の築き方の傾向の違いなどが考えられるかもしれない。
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

(2022年12月23日「基礎研レポート」)

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