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- 日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント上昇の11と予想、景況感は足踏み状態が継続
2022年09月16日
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9月短観予測:原材料高の重荷により景況感は足踏み状態が続く
(大企業非製造業の景況感は弱含み)
10月3日に公表される日銀短観9月調査では、原材料価格の高騰が引き続き重荷となる一方で、供給制約の緩和や円安の追い風を受け、注目度の高い大企業製造業の業況判断DIが11と前回6月調査から2ポイント上昇すると予想する(表紙図表1)。景況感は4四半期ぶりに改善することになるが、小幅に留まりそうだ。大企業非製造業では、行動制限が避けられ、経済活動再開の流れが続いたことが支援材料となったものの、コロナ感染の再拡大が足枷となったうえ、原材料価格高騰が重荷となったことで、業況判断DIが12と前回調査から1ポイント下落すると見込んでいる。
製造業、非製造業ともに業況判断DIは前回から横ばい圏に留まり、水準としてもコロナ前のピーク1に大きく届かない。
ちなみに、前回の6月調査2では、供給制約の深刻化や原材料価格高騰などが逆風となり、大企業製造業の景況感が悪化する一方、非製造業では、コロナ感染縮小に伴う人出の回復が追い風となり、景況感の改善が見られた(図表2・3)。
10月3日に公表される日銀短観9月調査では、原材料価格の高騰が引き続き重荷となる一方で、供給制約の緩和や円安の追い風を受け、注目度の高い大企業製造業の業況判断DIが11と前回6月調査から2ポイント上昇すると予想する(表紙図表1)。景況感は4四半期ぶりに改善することになるが、小幅に留まりそうだ。大企業非製造業では、行動制限が避けられ、経済活動再開の流れが続いたことが支援材料となったものの、コロナ感染の再拡大が足枷となったうえ、原材料価格高騰が重荷となったことで、業況判断DIが12と前回調査から1ポイント下落すると見込んでいる。
製造業、非製造業ともに業況判断DIは前回から横ばい圏に留まり、水準としてもコロナ前のピーク1に大きく届かない。
ちなみに、前回の6月調査2では、供給制約の深刻化や原材料価格高騰などが逆風となり、大企業製造業の景況感が悪化する一方、非製造業では、コロナ感染縮小に伴う人出の回復が追い風となり、景況感の改善が見られた(図表2・3)。
前回調査以降も、資源価格の高止まりや円安の進行に伴う原材料・エネルギー価格の高騰が続いている。一方、上海の都市封鎖の影響、とりわけ部品不足等の供給制約は都市封鎖の解除により緩和、自動車を中心に生産が回復している。一方、国内では行動制限の再発令が回避され、人出は前年を上回って推移し、サービス需要の回復に寄与したが、7月以降はコロナの感染が再拡大したことが回復の抑制に働いた(図表4~7)。
今回、大企業製造業では、原材料・エネルギー価格の高騰が引き続き景況感の重荷となった一方で、上海の都市封鎖解除に伴う供給制約の緩和が追い風となり、景況感が強含むだろう。また、円安の進行は円建て輸入価格を押し上げることで原材料高に拍車をかけたものの、輸出企業では輸出採算の改善などを通じて景況感の追い風になったと考えられる。
非製造業についても、国内で経済活動の再開が継続されたことが景況感の支えとなった。一方で、原材料・エネルギー価格の高騰が引き続き景況感の重荷となったうえ、夏場のコロナ感染急拡大が人流回復の足枷となったことで、景況感が弱含むと見ている。
中小企業の業況判断DIは、製造業が前回から2ポイント上昇の▲2、非製造業が1ポイント下落の▲2と予想している(表紙図表1)。大企業同様、製造業の景況感が強含む一方、非製造業の景況感は弱含むと見込んでいる。
今回、大企業製造業では、原材料・エネルギー価格の高騰が引き続き景況感の重荷となった一方で、上海の都市封鎖解除に伴う供給制約の緩和が追い風となり、景況感が強含むだろう。また、円安の進行は円建て輸入価格を押し上げることで原材料高に拍車をかけたものの、輸出企業では輸出採算の改善などを通じて景況感の追い風になったと考えられる。
非製造業についても、国内で経済活動の再開が継続されたことが景況感の支えとなった。一方で、原材料・エネルギー価格の高騰が引き続き景況感の重荷となったうえ、夏場のコロナ感染急拡大が人流回復の足枷となったことで、景況感が弱含むと見ている。
中小企業の業況判断DIは、製造業が前回から2ポイント上昇の▲2、非製造業が1ポイント下落の▲2と予想している(表紙図表1)。大企業同様、製造業の景況感が強含む一方、非製造業の景況感は弱含むと見込んでいる。
先行きの景況感は方向感にばらつきが出ると予想している(表紙図表1)。まず、製造業・非製造業ともに、原材料・エネルギー高の継続や値上げによる需要減少に対する懸念が燻る。さらに、製造業では利上げによる欧米の景気後退、中国での都市封鎖再発、国内での冬場の電力不足などへの懸念も加わり、先行きにかけて景況感の悪化が示されそうだ。一方、非製造業ではコロナの感染縮小や水際対策の緩和などに伴う人流のさらなる回復への期待が反映され、先行きにかけて、景況感の小幅な回復が示されると見ている。
なお、非製造業でも、中小企業はもともと先行きを慎重に見る傾向が強く、先行きにかけて景況感の改善が示されることが稀であるだけに、今回も悪化が示されると予想している。
1 ピークの時期はともに2017年12月調査。当時のDIの水準は製造業が26、非製造業が25。
2 前回6月調査の基準日は6月13日、今回9月調査の基準日は9月12日(基準日までに約7割が回答するとされる)。
なお、非製造業でも、中小企業はもともと先行きを慎重に見る傾向が強く、先行きにかけて景況感の改善が示されることが稀であるだけに、今回も悪化が示されると予想している。
1 ピークの時期はともに2017年12月調査。当時のDIの水準は製造業が26、非製造業が25。
2 前回6月調査の基準日は6月13日、今回9月調査の基準日は9月12日(基準日までに約7割が回答するとされる)。
(設備投資計画は堅調を維持する見込み)
2022年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比14.0%増と前回(同14.1%増)からほぼ横ばいとなり、前回同様、大幅に持ち直すとの計画が維持されると予想している(図表8~10)。例年、9月調査では中小企業において計画の具体化に伴って若干上方修正される傾向が強いほか、企業収益の回復を受けた投資余力の回復、昨年度から今年度へ先送りされた計画の存在、脱炭素やDX・省力化に向けた需要の存在がその理由となる。
ただし、欧米の利上げ加速や中国のゼロコロナ政策維持などを受けて世界経済の後退懸念が高まっていることが製造業を中心に投資意欲を削いでいるとみられるため、前回調査からの伸び率の修正幅(▲0.1%ポイント)は例年3をやや下回ると見ている。
2022年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比14.0%増と前回(同14.1%増)からほぼ横ばいとなり、前回同様、大幅に持ち直すとの計画が維持されると予想している(図表8~10)。例年、9月調査では中小企業において計画の具体化に伴って若干上方修正される傾向が強いほか、企業収益の回復を受けた投資余力の回復、昨年度から今年度へ先送りされた計画の存在、脱炭素やDX・省力化に向けた需要の存在がその理由となる。
ただし、欧米の利上げ加速や中国のゼロコロナ政策維持などを受けて世界経済の後退懸念が高まっていることが製造業を中心に投資意欲を削いでいるとみられるため、前回調査からの伸び率の修正幅(▲0.1%ポイント)は例年3をやや下回ると見ている。
3 2012~21年度における9月調査での修正幅は平均で+1.1%ポイント
(注目ポイント:仕入・販売価格判断DI、設備投資計画)
今回の短観で特に注目される項目としては、前回に続き、仕入価格判断DIと販売価格判断DIが挙げられる(図表11)。
今回の短観で特に注目される項目としては、前回に続き、仕入価格判断DIと販売価格判断DIが挙げられる(図表11)。

また、今後の日本経済の行方を占ううえでは、今年度の設備投資計画の重要性も高い。設備投資は個人消費や輸出に比べてコロナ禍からの回復の遅れが目立っているだけに、キャッチアップが求められるためだ。既述の通り、前回調査時点では前年度からの大幅な伸びが示されていた。前回調査以降も、欧米のインフレ加速やそれに伴う利上げ加速、中国のゼロコロナ政策維持、ウクライナ戦争の継続、コロナの再拡大懸念など内外を取り巻く下振れリスクの高い状況が続いている中で、企業の設備投資意欲が保たれて、計画の高い伸びが維持されているかがポイントになる。
(金融政策への影響は限定的)
今回の短観が日銀の金融政策に与える影響は限定的に留まりそうだ。
まず、今回の景況感は足踏み状態が予想されるうえ、今年度設備投資計画が仮に良好な内容であったとしても、その実現性に対する不確実さは残る。日銀に早期の前向きな政策変更を促すには至らない。
また、足元の物価上昇率は日銀の目標水準である2%を超えており、今後も上昇率の拡大が予想されるものの、日銀は資源高等によるコストプッシュ型であるため持続性に欠けるとの認識を維持している。従って、今回、先行きにかけての販売価格のさらなる引き上げ方針が示唆されたとしても、それが日銀の目指す企業収益や賃金・雇用が増加する好循環の中での物価上昇に直結するわけではない。日銀は引き続き現行の金融緩和を堅持しながら、企業による賃上げの動向などを注視していくだろう。
今回の短観が日銀の金融政策に与える影響は限定的に留まりそうだ。
まず、今回の景況感は足踏み状態が予想されるうえ、今年度設備投資計画が仮に良好な内容であったとしても、その実現性に対する不確実さは残る。日銀に早期の前向きな政策変更を促すには至らない。
また、足元の物価上昇率は日銀の目標水準である2%を超えており、今後も上昇率の拡大が予想されるものの、日銀は資源高等によるコストプッシュ型であるため持続性に欠けるとの認識を維持している。従って、今回、先行きにかけての販売価格のさらなる引き上げ方針が示唆されたとしても、それが日銀の目指す企業収益や賃金・雇用が増加する好循環の中での物価上昇に直結するわけではない。日銀は引き続き現行の金融緩和を堅持しながら、企業による賃上げの動向などを注視していくだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年09月16日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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