2022年07月29日

IFRS第17号(保険契約)を巡る動向について-IASB、EFRAG、UKEBの動向等-

中村 亮一

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■要旨

保険契約のための新たな国際的な会計基準である「IFRS第17号(保険契約)」については、IASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)が、2017年5月18日に基準の最終案を公表し、その後2020年6月25日に修正基準を公表して、その基準内容が確定した状況になってから、2年が過ぎた。IFRS第17号は、2023年1月1日からの適用が想定されており、残り半年をきっている。

このテーマに関する前回の保険年金フォーカス「IFRS第17号(保険契約)を巡る動向について-EUがIFRS第17号を承認、英国も協議案を公表-」(2021.12.7)(以下「前回のレポート」)で報告したように、EU(欧州連合)では、EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group:欧州財務報告諮問グループ)が2021年3月31日にIFRS第17号の最終承認勧告を行い、これを受けて欧州委員会のARC(Accounting Regulation Committee:会計規制委員会)が、IFRS第17号の承認に賛成票を投じた結果として、2021年7月22日に3か月の精査期間のために、欧州議会と理事会に規則案が提出された。その後、EUにおいては、欧州議会や理事会による精査期間が終了して、欧州委員会が年次コホートのカーブアウト等を含むIFRS第17号を最終承認して、2021年11月23日にEU官報を公表した。

また、英国においても、UKEB(UK Endorsement Board:英国承認理事会)がIFRS第17号の採択の検討を進めてきたが、2021年11月12日にはIFRS第17号を採択する協議案を公表 した。その後、UKEBは2022年5月17日に、IASBによるIFRS第17号の採択を正式に承認している 。

一方で、IASBのIFRS解釈委員会(IFRS Interpretations Committee)は、IFRS 第17号に関して、年金保険契約の利益認識方法等に関する検討を行ってきたが、2022年7月4日にはこの最終結論が出されている。

今回のレポートでは、IASB及びEUや英国におけるこうした動きを含む前回のレポート以降のIFRS第17号を巡る動向について報告する。

■目次

1―はじめに
2―IASBのIFRS解釈委員会等の動向
  1|IFRS第17号の年金契約グループに基づく保険カバーの移転―問題の所在―
  2|今回の決定
  3|今回の決定を受けての反応等
  4|その他
3―EUにおけるEFRAGの動向
  1|IASBの基準修正に対応した修正
  2|IFRS解釈委員会における年金契約に関する検討を受けての対応
4―英国におけるUKEBの動向
  1|IFRS第17号の採択
  2|IFRS解釈委員会での年金契約に関する検討に対するコメント
5―まとめ
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中村 亮一

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